制作:東洋経済広告企画制作部

グローバル経営戦略フォーラム クロスボーダーM&Aと買収後経営

協賛企業講演I

M&A ― 傾向と実践

基調講演、特別講演に続き、協賛企業の1社であるタワーズワトソン インターナショナル・コンサルティング・グループのマネージング・ディレクター マルコ・ボスケッティ氏による講演が行われた。
200を超える企業のM&A案件に携わってきた同氏の豊富な経験と知識に基づく講演は、参加者にとって大いに参考になったようだ。

M&Aによって株主価値が増大する時代へ

マルコ・ボスケッティ氏

 「M&Aに関して、欧米諸国での失敗例を教訓に日本で同様の過ちを犯さないために、どう対応すべきかをお話ししたい」と、マルコ・ボスケッティ氏は、初めに語った。

 ショッキングなデータもある。エコノミスト誌(2005年2月5日号)によれば、1998年から2001年にかけて行われた合併では、およそ1340億ドルの株主利益が失われたという。多くのM&Aが失敗に終わっているというわけだ。

 その理由はどこにあるのか。フォーブス500社CFOに対するアンケート調査の「シナジー実現の落とし穴 トップ10」の結果を見ると、大きく三つに分けられるようだ。一つ目は買収金額などに関する財政面の理由、二つ目はリーダーシップおよびマネジメントの理由、三つ目は二社が一つになったときの文化面の理由である。「CFOへの調査にもかかわらず、財政面以外の理由を挙げる人が多いのは興味深い」とボスケッティ氏は話す。

 一方でボスケッティ氏は「当社は年間に数多くのM&Aコンサルティングを行っているが、当社のクライアントの多くは成功している」と説明するとともに、M&Aは現在も失敗が多いのかという疑問を投げかけ、驚くべきデータを提示した。タワーズペリン/CASSビジネススクール・リサーチがM&Aディールの前後6カ月間における当該企業の株価の騰落をグローバルな株価指数の一つであるMSCIワールド・インデックスと比較したものだ。それを見ると、1980年代は市場に対して相対的な価値は損失傾向にある。だが、1990年代にはその差は縮まり、2000年代になると、むしろ価値が増大しているのである。「現在は、M&Aが成長を促し、株主価値を増大させる時代になったのです」(ボスケッティ氏)。

 講演では2010年第3四半期のアジアパシフィックの概況についても報告された。伸びているセクターや国などの違いもさることながら、締結されたディールは、グローバル・インデックスを14.5%も上回り、すべての地域でトップの上昇率であるというのは注目すべきだ。「ただし、日本においてはほとんどのディールで株主価値が損失しているという結果になっており、他の地域に比べて遅れを取っています」(ボスケッティ氏)。