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グローバル経営戦略フォーラム クロスボーダーM&Aと買収後経営

協賛企業講演II

M&A力 足し算型M&Aから 「掛け算型M&A」 へ

新興国の台頭による多極化世界の到来で経営環境が激変している。
この変化に打ち勝つには、グローバル・オペレーティング・モデル(GOM ) の強化が必要であり、そのうえでM&Aが重要なケイパビリティとなる。こう語ったアクセンチュア 経営コンサルティング本部 戦略グループのエグゼクティブ・パートナー神馬秀貴氏の講演を紹介する。

M&A市場に現れた質的変化

経営コンサルティング本部 戦略グループエグゼクティブ・パートナー神馬 秀貴

 現在の世界の変化は「多極化」がキーワードだと神馬氏は指摘する。そして多極化した世界では、従来の日米欧の3極世界時代よりも、変化の広がりが大きく、不連続的だという。「多極化世界では、新興国にどう対応するかが問われます。たとえば、これまでの常識では考えられないような低価格にも対応しなければならない。異種格闘技のような戦いが繰り広げられ、従来の価値観では対応しにくい難しい環境です」。

 そうした中で、グローバルハイパフォーマンス企業と日本企業を比較すると、成長率、利益率ともにグローバルハイパフォーマンス企業の方が高いのが実情だ。これらのグローバルハイパフォーマンス企業からは、一歩先を行く成長モデルが見えてくる。それがGOMだ。「グローバルに戦っていくうえでの経営基盤がGOMです。業務や組織を国別・事業別に分けるのではなく、国境やグループを越えて集約化・標準化していくモデルです。そのGOMを構築していくときに重要なケイパビリティになるのがM&A力です」。

 リーマンショック以降、M&Aは金額、案件数ともに減少した。ただ、そこには二つの質的変化がある。一つは、世界のM&Aでは案件数以上に金額の減少が大きいこと。これは小規模・小リスクのM&Aの増加を意味している。それに比して国内M&Aは案件数と金額が同じ動きで、依然として大規模なM&Aが多い。

 もう一つは、新興国の企業を対象にしたM&Aの存在感が高まっていること。10年前まで1割程度だった全体に占める割合は、いまや25%程度にまで膨らんでいる。

 そうしたことを踏まえてM&Aを類型化すると、規模獲得型と能力獲得型に分けられる。神馬氏は前者を“足し算型”、後者を“掛け算型”と表し、これからは掛け算型のM&Aを志向すべきだと強調する。「足し算型は統合度を高めて効率化を追求するモデル。一方、掛け算型は自社の強みと買収先の強みを掛け合わせ、単純な足し算以上の効果を出すモデルです。大規模案件というよりは小規模案件が多く、異業種や異市場の企業がターゲットになる。掛け算型の行き着くところは、事業ポートフォリオの見直しです。二つのモデルは決して相互に排他的ではなく、多くのM&Aは両方の要素が入っている。ただ、どちらを目指すのかを明確にしてシナリオを書いた方がいいでしょう」。