制作:東洋経済広告企画制作部

グローバル経営戦略フォーラム クロスボーダーM&Aと買収後経営

基調講演/特別講演I・II・III

実践的な視点から見たクロスボーダーM&A

ここではフォーラムに先立ち行われた基調講演に加え、事例としてM&A経験企業の特別講演三つを紹介する。
産業ガス大手の大陽日酸、配線器具大手のパナソニック電工、光専門企業ウシオ電機――
どれも具体的なM&Aの案件に基づく課題、解決策そして今後の戦略がテーマとなっただけに来場者の誰もが真剣に耳を傾けた。

「クロスボーダーM&A 日本企業の課題」

慶應義塾大学ビジネス・スクール准教授 井上光太郎氏

 基調講演では、慶應義塾大学ビジネス・スクール准教授の井上光太郎氏からクロスボーダーM&Aに取り組む日本企業に向けて提言があった。

 「円高が進む中、現在は日本企業にとって大きな対外投資の機会。実際、国内M&Aに比較して高収益・高成長企業を割安に買収する機会に恵まれている。だが、ここ10年間のクロスボーダーM&AのM&A全体に対する件数比率では、日本は先進国中最も低く、日本企業はいまだクロスボーダーM&Aに消極的」と井上氏は現状を危惧した

 その理由として挙げたのが、日本企業に根強い企業文化の違いに対する懸念。ただ、実証分析結果の示唆として、法秩序や会計制度が整備された市場であれば文化の違いは契約の強化で克服できると井上氏は強調した。

 しかし、多くの日本企業に見られるように、リスクに過敏になり、部分買収にとどめる選択では、かえって文化差を埋める工夫余地が乏しくなると指摘。「相手企業の経営資源を効率的に生かすためにも、リスクをコントロールしたうえで100%買収に乗り出す企業の増加に期待したい」と語った。

日本企業のM&A への取り組み

大陽日酸 「グローバル企業への挑戦」

大陽日酸 代表取締役会長 松枝寛祐氏

 M&A経験企業として、まずは大陽日酸の代表取締役会長松枝寛祐氏が登壇した。同社は1980年代からアジアと北米を中心にM&Aを展開。国内の産業ガス業界でも1990年代から業界再編が始まり、同社自身も2004年に合併を経験した。

 「M&Aには、明確な長期ビジョンと一貫した戦略が必要です。ターゲット企業の選定も主体的に行い、各国の状況に応じた柔軟な対応をしていくべき」(松枝氏)。同社は北米では全国展開という長期ビジョンの下で100%買収によるM&A戦略を遂行、一方アジアではローカル企業との関係をテコに合弁にて市場参入後、経営主導権を確保してきた。フォーラムでは、その過程での成功事例のみならず、撤退事例も詳しく紹介された。

 「買収後は、(1)ガバナンスの確立(2)統合効果の早期実現(3)買収先の有力人材活用(4)経営の基本方針の浸透に重点をおいている」と語り、将来構想として「グローバル本社」の設置に関しても意欲を見せた。