石橋湛山賞

石橋湛山賞 2012年(第33回)の授賞作

齊藤誠(一橋大学大学院経済学研究科教授)
『原発危機の経済学――社会科学者として考えたこと』
(日本評論社、2011年10月刊)

 2012年度・第33回の「石橋湛山賞」(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社協賛)は、このほど、一橋大学大学院経済学研究科教授・齊藤誠(さいとう・まこと)氏の『原発危機の経済学――社会科学者として考えたこと』(日本評論社、2011年10月刊)に決定いたしました。全国の有識者から推薦いただいた約50編の著作・論文の中から、厳正なる審査を経て選考されました。

 受賞作は、2011年3月11日の東日本大震災によって発生した東京電力福島第一原子力発電所の大事故を対象に、その原因と対応過程、今後へ向けての展望等を、経済学をベースにした社会科学者として調査・分析・評価したものです。どのように「古い原発から撤退し」「残る放射性廃棄物を処理し」「創造的な事業再生につなげるか」を、原発技術と経済学の知見によって丁寧に、かつ綿密・厳格・冷静に考察した貴重な問題提起の書です。

 石橋湛山は1923年の関東大震災に直面して、まず「この経験を科学化せよ」と主張しましたが、本書の姿勢はまさに経験の「科学化」そのものです。一時的な雰囲気や感情に流されず、真の自由主義・民主主義・国際平和主義を、生涯追求し続けた石橋湛山の思想にふさわしいものとして高く評価されました。(石橋湛山記念財団ホームページ