環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

はじめに

 ここでは、第14回環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞の審査方法とその経過を記述する。審査方法とそのプロセスを明らかにすることで、審査の透明性が保たれ、審査結果に対する信頼が得られるものと期待している。なお、各賞の受賞理由については講評を参照されたい。(2月21日以降掲載予定)

審査の流れ

  • 募集
    『週刊東洋経済』10月9日号(2010年10月4日売)誌上、ならびに東洋経済ホームページで告知。募集開始。
    2010年11月15日 募集締め切り。応募総数384点。
  • 作業部会(第一次審査)
    2010年12月22日・23日 作業部会開催。作業部会メンバー49名。
     <環境報告書賞>
     最優秀賞、優秀賞、優良賞候補19点、サイトレポート賞候補5点、公共部門賞6点を選出。
     <サステナビリティ報告書賞>
     最優秀賞、優秀賞、優良賞候補36点を選出。
  • 審査委員会(第二次審査)
    2011年1月25日 審査委員会開催。環境報告書賞審査委員会9名、サステナビリティ報告書賞審査委員会9名
     <環境報告書賞>最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞7点、特別賞1点、サイトレポート賞2点、公共部門賞3点を選出。
     <サステナビリティ報告書賞>最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞9点、特別賞1点を選出。
     <東洋経済新報社創立115周年記念 特別奨励賞> ステークホルダー・ダイアログ部門賞 1点、 生物多様性部門賞 1点を選出。 

評価規準と選考方法

1.評価規準

以下の点に加え、業種、業態、規模も勘案して総合的に審査判定した。

I.環境報告書賞

  • 1.環境経営に対するトップのコミットメント、明確な企業姿勢が読み取れる
  • 2.環境の取り組みに関するステークホルダーとのコミュニケーションツールとして優れている
  • 3.環境パフォーマンス情報の開示について以下の点で充実している
    (1)網羅的に開示されている
    (2)比較可能な形で開示されている
    (3)ライフサイクルの観点と環境への重要度を反映している
  • 4.環境パフォーマンスに対する企業自身の評価や説明が加えられている
  • 5.情報の信頼性を確保する努力を行っている

 サイトレポート賞は、環境報告書賞に準ずる。公共部門賞は、環境報告書賞に準ずる(ただし3.は(1)のみ)

II.サステナビリティ報告書賞

  • 1.CSRについてのビジョン・戦略が明確で、統治構造、マネジメントシステム、組織の基本情報が開示されている
  • 2.環境パフォーマンス情報は、網羅的で比較可能な形で開示されており、ライフサイクルの観点と環境への重要度を反映している
  • 3.社会情報に関して、(1)労働慣行、(2)人権、(3)地域社会と社会貢献、(4)製品責任、その他について適切に開示している
  • 4.CSRに関する経済・財務情報については、指標および開示方法について創意工夫を試みている
  • 5.コミュニケーションツールとして優れており、情報の信頼性を確保する努力を行っている

III. 東洋経済新報社創立115周年記念 特別奨励賞

 東洋経済新報社が昨年11月に創立115周年を迎えたことを記念して特別に「ステークホルダー・ダイアログ」および「生物多様性」の2部門について、奨励賞を設けたもので、以下の選考方法で、東洋経済新報社が審査を行い、2点を選出した。

1.審査対象 
  環境報告書賞、サステナビリティ報告書賞、および公共部門の環境報告書賞に準じる。
  同賞の応募作品すべてを対象

2.審査基準 
  応募作品のなかで、上記テーマについての報告内容が具体性豊かでユニークかつ先進的であるなど特に優れた報告内容が認められる報告書

  • ステークホルダー・ダイアログ部門賞
  • 生物多様性部門賞 

応募作品のなかで、上記テーマについての報告内容が具体性豊かでユニークかつ先進的であるなど特に優れた報告内容が認められる報告書を東洋経済新報社が選定し表彰するもの

2.選考の基本方針

2-1 業種特性に関する考え方
最優秀賞には最も優れた報告書を、優秀賞はそれに準じる報告書を選考する。優良賞は優秀賞に準じる報告書とし、業種・規模を勘案する。また特別賞は特に優れたところのある報告書を選考し、できるだけ多くの企業を顕彰するため、前回の最優秀賞の受賞企業については特別賞の選考対象とした。

2-2 昨年度との比較について
評価は今回応募された報告書を対象とし、昨年度以前との比較は行わない。

2-3 第11回より、中小企業賞と継続優秀賞は廃止した。

3.作業部会における選考の経緯

3-1 作業部会の役割
作業部会の役割は、応募されたすべての報告書を読み込み、審査委員会に提出する候補作品を選定することである。

3-2 作業部会の構成
作業部会はグリーンリポーティングフォーラムのメンバー22人及び東洋経済新報社の27人、計49人で構成された。

3-3 選考の経緯
作業部会では、環境報告書賞部門3グループ、サステナビリティ報告書賞部門6グループ、サイトレポート賞部門1グループ、公共部門賞部門1グループ、計11グループに分けて審査した。各グループの担当冊数はおおむね30から40冊程度、担当者は3人から6人である。各担当者は、事前に担当の応募作品を受け取り、それぞれ読み込んだ。その際、審査基準をブレークダウンした評価規準に基づいて評点を付けた。各担当者は、単に合計点数の大小等による機械的な選考ではなく、評点を参考にして上位数社をノミネートし、作業部会に臨んだ。
作業部会では、まず各グループに分かれて意見交換を行い、グループごとに上位数社の推薦候補を決定した。その際、業種や規模を勘案するという基本方針に添い、業種のばらつきや企業規模の大小に関して一定の配慮を行った。ただしすべての業種から候補を出したわけではなく、業界全体の水準が賞の候補となるレベルに至っていないと判断された場合には、ノミネートしなかった。
次に、各グループでの討議の結果を踏まえて、作業部会全体での意見交換を行い、グループ間での水準の相違、業種・規模に関する配慮などについて総合的に検討した上で、最終的に候補作を決定した。

4.審査委員会における選考の経緯

4-1 審査委員会の役割
審査委員会の役割は、作業部会からの候補作を審査し、<環境報告書賞>最優秀賞、優秀賞、優良賞、特別賞、サイトレポート賞、公共部門賞、<サステナビリティ報告書賞>最優秀賞、優秀賞、優良賞、特別賞を選考することである。

4-2 審査委員会の構成
それぞれの審査委員は各界の識者で構成され、別掲の通りである。

4-3 選考の経緯
作業部会終了後、各審査委員に候補となった環境報告書を各1部ずつ送付した。審査委員は応募要項に示した審査基準を前提に、それぞれの見識に基づいて候補作を評価し、審査委員会当日までに受賞候補を推薦した。審査委員会当日はできる限り議論を通じて合意形成を図るよう努めた。その上で、最後まで意見が分かれた場合には多数決によって最終の決定を行った。最終結果及び理由等については講評を参照されたい。


[参考資料:作業部会における作業用規準]

<環境報告書賞>

審査基準1.環境経営に対するトップのコミットメント、明確な企業の姿勢が読み取れる(ウェート10%)

評価規準

  • トップマネジメント(マネジメントまたは環境担当役員)が環境保全活動に関する企業姿勢を明示していること
  • トップマネジメントが環境情報開示に関する企業姿勢を明示していること

評価方法

  • 5ポイント:上記2点が満たされており、開示方法も適切である
  • 4ポイント:上記2点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 3ポイント:上記2点のうち1点は満たされており、その開示方法は適切である
  • 2ポイント:上記2点のうち1点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 1ポイント:上記の評価基準のいずれも満たされていない

審査基準2.環境の取り組みに関するステークホルダーとのコミュニケーションツールとしてすぐれている(ウェート10%)

評価規準

審査委員がステークホルダーとして、環境報告書を読み、コミュニケーションツールとしてすぐれているか否かを判断する。標準的な方法は規定しないが、環境報告書の構成、文字や写真の配列、文章表現、読者への配慮などが評価ポイントとなる。

評価方法

  • 5ポイント:コミュニケーションツールとして非常にすぐれている
  • 4ポイント:コミュニケーションツールとしてすぐれている
  • 3ポイント:コミュニケーションツールとして標準的である
  • 2ポイント:コミュニケーションツールとしてやや劣っている
  • 1ポイント:コミュニケーションツールとして非常に劣っている

審査基準3.環境パフォーマンス情報について開示が充実している(ウェート15%)

審査基準3-1 環境パフォーマンス情報は網羅的に開示されている

評価規準

  • マネジメントシステムに関する情報が開示されている(ISO14001内部監査の具体的な記述、環境会計情報など)
  • 企業活動に関わる環境負荷についての情報がもれなく記載されている(事故等のネガティブな情報も含む)(注:企業活動に関わる環境負荷がもれなく開示されていることが環境報告書から読み取れることが重要)

評価方法

  • 5ポイント:上記2点が満たされており、開示方法も適切である
  • 4ポイント:上記2点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 3ポイント:上記2点のうち1点は満たされており、その開示方法は適切である
  • 2ポイント:上記2点のうち1点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 1ポイント:上記の評価基準のいずれも満たされていない

審査基準3-2 パフォーマンス情報は比較可能な形で開示されている

評価規準

  • 過去からの推移が数字で把握可能な形で示されており、グラフの表示方法に統一性がある
  • 環境負荷データの測定方法に関する説明がある(測定方法・範囲について変更があった場合の説明や業界での標準的な測定方法に関する説明を含む)

評価方法

  • 5ポイント:上記2点が満たされており、開示方法も適切である
  • 4ポイント:上記2点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 3ポイント:上記2点のうち1点は満たされており、その開示方法は適切である
  • 2ポイント:上記2点のうち1点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 1ポイント:上記の評価基準のいずれも満たされていない

審査基準3-3 パフォーマンス情報はライフサイクルの観点と環境への重要度を反映している

評価規準

  • マテリアルバランス情報などの企業活動へのインプット・アウトプット情報や、製品・サービスのライフサイクルを考慮したパフォーマンス情報が開示されている
  • パフォーマンス情報の相対的な重要度が説明され、重要な環境影響が詳しく説明されている

評価方法

  • 5ポイント:上記2点が満たされており、開示方法も適切である
  • 4ポイント:上記2点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 3ポイント:上記2点のうち1点は満たされており、その開示方法は適切である
  • 2ポイント:上記2点のうち1点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 1ポイント:上記の評価基準のいずれも満たされていない

審査基準4.環境パフォーマンスに対する企業自身の評価や説明が加えられている(ウェート10%)

評価規準

  • 環境パフォーマンスが、どのような活動の結果として達成されたのか具体的説明がなされている
  • パフォーマンスについて、十分な自社の評価が加えられ、今後の課題が示されている(評価とは、会社として、パフォーマンスが良かったか悪かったかを示すと同時に、その理由に言及することを意味する)

評価方法

  • 5ポイント:上記2点が満たされており、開示方法も適切である
  • 4ポイント:上記2点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 3ポイント:上記2点のうち1点は満たされており、その開示方法は適切である
  • 2ポイント:上記2点のうち1点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 1ポイント:上記の評価基準のいずれも満たされていない

審査基準5.情報の信頼性を確保する努力をしている(ウェート5%)

評価規準

  • 報告書に記載されている情報の信頼性を確保するための十分な努力が見られる
  • 読者からの意見をもとに報告書の改善を行おうとする努力がみられる

評価方法

  • 5ポイント:上記2点が満たされており、開示方法も適切である
  • 4ポイント:上記2点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 3ポイント:上記2点のうち1点は満たされており、その開示方法は適切である
  • 2ポイント:上記2点のうち1点は満たされているが、開示方法に何らかの問題がある
  • 1ポイント:上記の評価基準のいずれも満たされていない

 

<サステナビリティ報告書賞>

審査基準1.CSRについてのビジョン・戦略が明確で、統治構造、マネジメントシステム、組織の基本情報が開示されている(ウェート25%)

審査基準2.環境パフォーマンス情報は、網羅的で比較可能な形で開示されており、ライフサイクルの観点と環境への重要度を反映している(ウェート25%)

審査基準3.社会情報に関して、下記の事項について、適切な開示がなされている(ウェートI、II、III、IVを各5%、総合評価を5%)

I.労働慣行

  • 労働力の内訳
  • 雇用・リストラの方針基準と状況の開示
  • 基礎的労働条件、福利厚生
  • ワーク・ライフ・バランス
  • 労働安全衛生
  • 教育研修
  • 多様化と機会均等
  • 従業員満足度

II.人権

  • 従業員の人権尊重
  • 取引先の人権尊重
  • ILOの重点4分野(差別対策、組合結成と団体交渉の自由、児童労働、強制労働)
  • 海外進出の場合の地域住民の権利と人権

III.地域社会と社会貢献

  • 地域社会との関係
  • 政治献金
  • 公正取引
  • 社会貢献

IV.製品責任、その他

  • 顧客の安全衛生と対応
  • プライバシーの尊重
  • 顧客満足度
  • その他の事項(受賞歴、フェアトレード、動物実験、武器製造など)

審査基準4.経済については、指標及び開示方法について創意工夫を試みている(ウェート5%)

審査基準5.コミュニケーションツールとして優れており、信頼性確保に関して努力していること (ウェート10%)

総合評価 (ウェート10%)

<公共部門賞の環境報告書賞>
環境報告書賞に準じる(ただし、審査基準3は(3-1)のみ)