環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

 グリーンリポーティングフォーラム代表
審査委員 國部克彦

  今年度の応募総数は384点。その内訳は、環境報告書賞応募92点、サイトレポート賞応募38点、公共部門賞応募41点、サステナビリティ報告書賞応募213点であった。開示情報は質量ともに年を追って充実し、持続可能な社会を目指す企業のステークホルダーとの対話が、広範な領域へと着実に広がっていることがうかがえる。

環境報告書賞:講評

 環境報告書賞の最優秀賞に輝いた住友林業の報告書は、事業の中心的な資源である木材について、ライフサイクルにわたる詳細な説明とステークホルダーの声を十分に反映した報告書であることが評価されての受賞となった。

 優秀賞にはパナソニック本田技研工業が選ばれた。パナソニックは、環境経営のビジョン・戦略が明確であることと、グローバルな視点からの情報開示が高く評価された。本田技研工業は、目標と実績の関係が明確に開示されていること、取り組み事例集を別冊開示している試みなどが高く評価された。

 優良賞には、味の素グループ神戸製鋼所東洋インキ製造日本興亜損害保険リコーグループリマテックレンゴーの7社が選ばれた。

 味の素グループは食材の調達について詳しく開示され読者をひきつける工夫が優れている点、神戸製鋼所はCO2削減への技術的貢献についての説明とカンパニーごとの情報開示がすぐれている点、東洋インキ製造は目標と実績の関係が分かりやすく開示されていることと説明が丁寧な点が、日本興亜損害保険はテーマ→活動→実績→自己評価のサイクルを明確にして開示している点が、リコーグループは開示スタイルを継続して維持し環境経営全般について体系的で詳細な開示がなされている点が、リマテックはミッションを明確にして報告書全体に一貫性があり企業規模に比して十分な開示がなされている点が、レンゴーはダンボール事業者として「軽薄炭少」というスローガンのもとで事業活動と環境活動を連携させている点が、それぞれ評価されて、優良賞の受賞となった。

 サイトレポート賞には、埼玉日本電気リコー電子デバイスカンパニー(池田事業所・やしろ工場)が選ばれた。2つの報告書はともに、サイトレポートとして、環境マネジメントの活動とパフォーマンスを詳しく開示しているところが評価された。

 公共部門賞には、島根大学三重大学東京都水道局が選ばれた。島根大学はほぼすべての取り組みについてPDCAの観点から明確に開示している点が、三重大学は「世界一の環境先進大学」を目指すというスローガンのもとで意欲的な取り組みが随所に見られる報告書である点が、東京都水道局は水道事業に関して必要な環境情報を網羅的かつ分かりやすく開示している点が、それぞれ評価されて受賞となった。

 特別賞には昨年度の最優秀賞である東芝グループが積極的な環境活動に関する情報開示が評価されて選定された。

 なお、今回の最優秀賞の住友林業優秀賞のパナソニックは冊子媒体ではなく、WEBだけでの応募であった。WEB中心の開示は時代の流れであるが、冊子媒体とは読者層が違うはずなので、このあたりも今後は考慮が必要になってくるであろう。

サステナビリティ報告書賞:講評

 サステナビリティ報告書賞の最優秀賞に輝いた武田薬品工業の報告書は、アニュアルレポートの中にCSR情報をうまく組み込んでおり、企業経営と一体となったCSR報告のひとつの優れたモデルとして高く評価された。

 優秀賞帝人富士フイルムホールディングスが受賞した。帝人は質的な情報開示のレベルの高さや付加価値情報の開示が高く評価され、富士フイルムホールディングスは経営計画と連動させたCSR活動と労働・安全などの詳細な情報開示が高く評価されての受賞となった。

 優良賞には、曙ブレーキ工業アサヒビール住友金属鉱山住友信託銀行積水化学工業損害保険ジャパンデンソー東北電力ブリヂストンの9社が選ばれた。

 曙ブレーキ工業は事業活動とCSRが密接に関連していることと雇用に関して誠実な開示が行われている点が、アサヒビールは冊子版とWEB媒体の棲み分けが明確でWEBで詳細な情報が開示されている点が、住友金属鉱山は労働の全体像が良く分かることと海外を含めて詳細な情報が開示されている点が、住友信託銀行は金融機関が推進すべきCSRがうまく整理されて活動と報告に結びつけている点が、積水化学工業は企業戦略にCSRをうまく取り込んでいることとデータ編を別冊として開示の工夫をしている点が、損害保険ジャパンは取り組みのフェーズを明確にして、計画と成果・進捗状況が分かりやすく開示されている点が、デンソーは中国で果たすべき企業の社会的責任について踏み込んだ議論が展開されている点が、東北電力は経営方針とCSRの関係が明確で、戦略的CSRとしての位置づけが優れている点が、ブリヂストンはCSRの進捗状況が明確に示されておりステークホルダー・ダイアログにも積極的に取り組んでいる点が、それぞれ評価されて受賞となった。

 特別賞は、主要なCSR指標による進捗状況の開示などが優れているとして昨年度最優秀賞の富士ゼロックスが選定された。