環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

審査委員 國部克彦

  今年度の応募総数は363点で、その内訳は環境報告書賞88点、サイトレポート賞51点、公共部門賞40点、サステナビリティ報告書賞184点であった。一次審査で候補企業を63点に絞り、最終審査で受賞企業を選定した。

 環境報告書については、CSR報告書と環境報告書を分冊にして、環境報告に力を入れている企業が目立つ一方で、中堅規模ながら、特徴のある報告書を作成している企業が増加しつつあり、環境報告書の裾野が広がっている印象を受けた。また、サイトレポート賞や公共部門賞の応募が増え、これは地域社会重視の傾向を反映していると思われる。

  サステナビリティ報告書については、年々開示情報が拡充しつつあるが、今年度は、事業活動との関連性を重視する報告書が多く見受けられ、CSRが企業経営の根幹に近づきつつあることが報告書から読み取れるようになってきた。

環境報告書賞:講評

 環境報告書賞 最優秀賞は、2年連続でリコーグループが受賞した。リコーは環境と企業価値を一体化させた経営方針を全面に出し、取引先との協力や海外事業の説明を含め、事業活動全体の情報開示が進んでいると評価された。

 優秀賞はサラヤとパナソニックが受賞した。サラヤはトップのコミットメントが非常に明確であること、サプライチェーン全体をトータルで配慮していることが評価され2年連続の優秀賞となった。パナソニックは、新たな暮らし価値の創造のような顧客を包み込んだ指標を中心に、環境戦略と企業戦略の融合化が報告書の中に明確に書き込まれていることが高い評価を得た。

 優良賞は、味の素グループ、九州電力、大栄環境グループ、東洋製罐、本田技研工業の5社が受賞した。味の素グループは、食の持続可能性を打ち出して上流の農業・漁業までさかのぼって報告している点が、九州電力はエネルギーについて原子力から自然エネルギーまで大変詳しくかつ分かりやすく説明している点が、大栄環境グループは、廃棄物処理業者の位置づけが明確で、取組方針もはっきり示されている点が、東洋製罐は、容器メーカーとしての特殊性をきちんと自覚しており、分かりやすく報告していることが、本田技研工業については、環境影響をグローバルに開示しており、生産から販売に至るまでの領域ごとの経年データを出している点が、それぞれ高く評価されて、受賞となった。

  サイトレポート賞は51点もの多数の応募の中から、シャープ三重工場、東芝横浜事業所、リコー御殿場事業所の3サイトが選ばれた。シャープ三重工場は地域住民の目線に立った、読みやすい報告書である点が、東芝横浜事業所は地域社会とのコミュニケーションに工夫を凝らした編集を行っているところが、リコー御殿場事業所は環境パフォーマンス情報が詳細に開示され、改善事例も豊富に提供されていた点が、それぞれ高く評価された。

 公共部門賞は、独立行政法人や地方公共団体などを対象とする賞で、今年度は千葉大学、東京大学、三重大学の三国立大学法人の受賞となった。千葉大学はマネジメントの進捗状況が具体的で、パフォーマンス情報の開示も分かりやすいことが、東京大学は地球環境問題に対する東京大学の責任とは何かという視点を全面に押し出している点が、三重大学は、環境報告書の作成に学生も参加し、地域社会との意見交換も充実していることが評価されての受賞となった。

サステナビリティ報告書賞:講評

 サステナビリティ報告書賞については、184点の応募の中から、オムロンが最優秀賞となった。オムロンは10年後という明確な目標を設定して、CSRにおけるマテリアリティの視点からの問題の切り分けが成功している点が高く評価されました。

 優秀賞は、帝人グループとデンソーで、帝人グループは、CSRに対する企業方針が明確で、データ開示と本業に関する説明のバランスがうまく取れていること、デンソーは、詳細なデータ開示に加えて、コミュニティとのコミュニケーションやステイクホルダー重視の編集方針が高く評価された。

 優良賞は、伊藤忠商事、大和證券グループ、大和ハウス工業、東芝グループ、凸版印刷、トヨタ自動車、富士フイルムホールディングス、リコーグループの8社が選ばれた。
 伊藤忠商事は、サプライチェーンを重視した商社としての特徴を生かした報告書である点が、大和證券グループはCSR活動の目標と実績の対比が明確であり本業とCSRの関係が十分意識されている点が、大和ハウス工業は見開きページで話題が完結する読み易さとCSRに関するKPIの工夫が、東芝グループはCSRのPDCAサイクルが進化していることとステイクホルダーとの対話を充実させている点が、凸版印刷はCSRに関する幅広い目標を立てると同時に、関係する情報の開示が極めて充実している点が、トヨタ自動車はサステイナブル・モビリティやサステイナブル・プラントなどのコンセプトを明確に打ち出して、事業活動による社会貢献が示されていることが、富士フイルムホールディングスは、100頁近い大部の報告書で、編集方針が明確で情報開示の質と量のバランスが取れていることが、リコーグループは、CSRの実施状況とレンビューと今後の課題が明確で、PDCAサイクルの結果として報告が行われている点が、それぞれ評価されての入賞となった。

 最後に、現在日本企業は経済危機の渦中にあるが、そのような中でどのようにCSRに取り組み、情報を開示するかが、今後の大きな課題になると思われる。