環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

情報開示とトップの姿勢 企業ビジョンなどに注目

審査委員 國部克彦

環境報告書賞:講評

  今年度の環境報告書賞には152社からの応募があり、審査の過程では、環境パフォーマンスに関する開示に加えて、トップの環境経営に対する姿勢、ステークホルダーとのコミュニケーション、海外活動の環境情報などが注目された。

  最優秀賞はエネルギー業界としては初めて、九州電力が受賞した。同社の報告書は、経営トップの方針が明確であり、環境パフォーマンスの情報開示も詳細かつ丁寧で、従業員の声の取り入れ方や用語解説など細部にも工夫が見られる点が非常に高く評価された。

  優秀賞は、シャープとデンソーが獲得した。シャープは環境経営の長期ビジョンが明確で、目標・実績・計画の連携も取れている報告書として高く評価され、最後まで九州電力と最優秀賞を争った。デンソーは、環境への取組姿勢や自己評価が明確で、ステークホルダーへの意見の対応、海外情報の充実が多数の支持を集めた。

  優良賞は、業種も勘案し、エヌ・ティ・ティ・ドコモ北海道、岡村製作所、コマツ、新日本製鐵、モスフードサービスの5社が選ばれた。

  エヌ・ティ・ティ・ドコモ北海道はステークホルダー・ダイアローグに関する開示が充実しており、地元に対する説明責任を果たしていると評価された。岡村製作所は環境保全を誠実に追求している姿勢が好感を持たれ、環境経営指標の活用も充実している点も評価された。

  コマツの環境報告書は、国内の情報のみならず、海外事業の情報を詳細に開示しており、グローバル企業としての開示姿勢が高い支持を集めた。新日本製鐵は、環境経営の長期ビジョンが明確で、目標・実績の総括および今後の課題を明確に記述しているところが優れた報告書であるとされた。モスフードサービスの環境報告書は、業種や業態の特徴をよく反映した報告書であり、原材料の調達段階にまでさかのぼり、食の安全性を重視した点が評価された。

  サイトレポート賞には35社からの応募があり、東芝研究開発センターと三菱樹脂平塚工場が受賞した。東芝研究開発センターは、毎年編集に工夫が見られるが、今年度は学生が編集に参加している点がユニークと評価された。三菱樹脂平塚工場については、化学工業のサイトレポートとして環境負荷を丁寧に評価しているところが優れた報告書であった。

  中小企業賞については、5社からの応募があり、近畿環境興産が4年連続、豊田ケミカルエンジニアリングが3年連続の受賞となった。近畿環境興産の報告書は産廃処理に関わる環境負荷を詳細に開示しており、サイトデータの開示も評価された。豊田ケミカルエンジニアリングは、環境経営指標を含めて環境データが充実しており、環境監査に関する開示も高い評価を集めた。

  なお、継続優秀賞としては、環境報告書についてはトヨタ自動車、サイトレポートとしてはリコー福井事業所に対して、従前より高く評価されてきた報告書の水準を今年度も維持していると評価され、継続優秀賞の受賞となった。

サステナビリティ報告書賞:講評

  サステナビリティ報告書については、応募が大幅に増加し、今回は143社からの応募があった。サステナビリティ報告書の内容は、従業員情報などの面では企業ごとに開示内容にばらつきが見られるものの、全体としては顕著な充実傾向にある。審査の過程では、CSRに対する企業のビジョン、社会的な活動に関する具体的な目標と実績の開示、ステークホルダーとのダイアローグなどが注目された。

  最優秀賞はイトーヨーカ堂が3年連続の受賞となった。同社の報告書は、ステークホルダーごとの取組みが詳しく開示され、社会的観点からの経済情報の開示を含め、目標や達成状況の説明もきちんとなされている点が高く評価され、昨年よりもさらに進化しているということで異例の3年連続受賞となった。

  優秀賞はサントリーと富士写真フイルムが受賞した。
  サントリーは、水とともに生きるという方針が明確で、報告書にストーリー性があり、会社のメッセージが明確に伝わる点が高く評価された。富士写真フイルムは、CSR活動全般に目標を掲げて活動している点、ステークホルダーとの対話を重視し、保証についても工夫が見られるなどの点が評価された。

  優良賞は、キヤノン、商船三井、積水化学工業、大和證券グループ、東芝グループ、リコーグループの6社が受賞した。

  キヤノンは、戦略とビジョンが明確で、企業理念に基づいてサステナビリティに関する各項目の記述を行っている点が支持された。商船三井は、船舶業が抱える労働問題を明確に捉えて、CSR活動の目標と実績を評価している点が充実していた。

  積水化学工業は、CSR活動に対する企業の地道な対応が読み取れる報告書であることと、会社の中の3つの異なる事業をうまく統合して開示しているところが評価された。大和證券グループは、CSR活動の目標と実績を明確に立てていること、ステークホルダーとのダイアローグも充実しているところが多くの支持を集めた。

  東芝グループは、ステークホルダーに対するコミュニケーションや経済情報の開示に優れており、環境・社会・経済のバランスの取れた報告書として評価された。リコーグループは、環境報告書、CSR報告書、アニュアルリポートの3部作で情報内容が充実しており、CSRに関しては重点施策が明確であることが支持された。