環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

 

目標・実績・展望の明確な開示でシャープ
ステークホルダー対話でイトーヨーカ堂

審査委員 國部克彦

環境報告書賞:講評

  今年は、環境報告書賞へ206社、サステナビリティ報告書賞へ76社の応募があり、環境報告書からサステナビリティ報告書へ移行する企業が多くみられた。

 全体的な傾向としては、環境報告書、サステナビリティ報告書の双方で、ステークホルダーに関する記述が質・量ともに増加傾向にあることが指摘できる。

 環境報告書賞では、シャープが、過年度の目標と実績さらに次年度以降の目標を明確にして開示している点や、世界各地域のデータも開示している点が高く評価され最優秀賞となった。積水化学工業は昨年度の最優秀賞企業であり、環境マネジメントシステムとパフォーマンスに関する詳細で丁寧な情報開示は堅実な報告書として今年も高い評価を集め、優秀賞となった。

 優良賞は9社が受賞した。
 エヌ・ティ・ティ・ドコモ北海道は、ステークホルダーを重視した作成方法や法令遵守状況および環境監査の状況についての開示が評価された。大林組は、建設業界において、情報の質・量ともに抜きんでており、重点課題を明記したメリハリの利いた情報開示が支持された。大阪ガスはエネルギー供給会社としての責任を明確に意識した編集方針と、金額換算した環境経営指標を業績評価に取り込んだ全社的な取り組みが評価された。

 王子製紙は、製紙業における原材料の調達からリサイクルまで、丁寧に分かりやすく開示しており、読者への配慮が感じられる点が評価された。サントリーは環境問題の中心に水資源を置き、会社の方向性を明確に示している点に好感が持たれた。詳細データをWebに掲載していることについては意見が分かれたが、一つの試みとして評価する意見が多かった。積水ハウスは、ハウスメーカーとして環境問題に取り組むべき課題を明確に認識しており、それぞれについてわかりやすく解説している点が評価された。

 ダイキン工業は、全体的にバランスの取れた構成となっており、フロンの問題など重要な環境課題について詳しく解説されている点が支持された。大日本印刷は、経営者の環境保全への姿勢が具体的であり、環境パフォーマンスの目標と結果の対応関係が明確であることに加え、マネジメントシステムの記述も充実ぶりが評価された。富士通は、会社として目指している方向が明確であり、環境保全活動を定量化し、環境会計も活用して、全社的に環境負荷の削減に取り組んでいる姿勢伝わる報告書である点が評価された。

 サイトレポート賞については41社からの応募があり、ソニーイーエムシーエス木更津テックと東芝研究開発センターが受賞し、リコー福井事業所は継続優秀賞となった。ソニーイーエムシーエス木更津テックは、サイトレポートとしては圧巻のボリュームがあり、しかも説明は全般的に丁寧な報告書であった。東芝研究開発センターは、毎年編集方法を工夫するなど独自性があることと、自社の環境負荷に対する分析が丁寧なところが評価された。リコー福井事業所のサイトレポートは、サイトレポートとして一つの形を確立しており、今年より継続優秀賞となった。

 中小企業賞には7社から応募があり、昨年同様、豊田ケミカルエンジニアリングと近畿環境興産が受賞した。両社とも、中小企業でありながら、自社の環境保全活動を詳細に分析し、外部へ積極的に情報開示する姿勢が評価された。

サステナビリティ報告書賞:講評

 サステナビリティ報告書賞については、イトーヨーカ堂、松下電器グループ、キヤノン、富士写真フイルムの4社で最優秀賞が争われた。最終的に、イトーヨーカ堂が、ステークホルダーとの対話を充実させて報告書を進化させている点が高く評価され、昨年度に続いての連続受賞となった。

 松下電器グループとキヤノンは、どちらかというと環境報告にウェートをおいたサステナビリティ報告書であり、環境報告面でのすぐれた情報開示に、重要な社会情報をうまく加味している点が評価され、優秀賞となった。富士写真フイルムは、ステイクホルダーを重視したCSR体制の詳しい説明と、AA1000ASを採用した保証付与などの新しい試みを評価する声が高く、僅差の末、優良賞となった。

 さらに、損害保険ジャパンとリコーグループが優良賞を獲得した。損害保険ジャパンは、早くから環境やCSR活動に取り組んできたことが評価され、社員の気持ちが伝わる報告書であった。リコーグループは、環境経営報告書とは別冊子として、社会的責任経営報告書を発行しており、社会的事項に関する真摯で詳細な情報開示が評価された。