環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

第6回 環境報告書賞:審査過程について

はじめに

 ここでは、第6回環境報告書賞(グリーンリポーティング・アウォード)の審査方法とその経過を記述する。審査方法とそのプロセスを明らかにすることで、審査の透明性が保たれ、審査結果に対する信頼が得られるものと期待している。なお、各賞の受賞理由については講評を参照されたい。

審査の流れ

  • 募集
    2002年11月25日 『週刊東洋経済』11月30日号誌上で告知。募集開始。
    2003年1月31日 募集〆切。応募総数281点。
  • 作業部会(第一次審査)
    2003年3月28日・29日 作業部会(第一次審査)開催。作業部会メンバー36名。最優秀賞、優秀賞、優良賞候補36点、中小企業賞候補4点、サイトレポート賞候補4点を選出。
  • 審査委員会(第二次審査)
    2003年5月9日 審査委員会開催。審査委員11名。最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞13点、中小企業賞1点、サイトレポート賞2点、継続優秀賞5点を選出。

評価規準と選考方法

1.評価規準
  評価の規準は、募集の際に示した以下の5点である。

  • 環境情報開示および環境保全活動に関する企業姿勢が明示されていること
  • 環境報告書としての構成が体系的で、かつ各項目間の関係および重要度が明確であること
  • 環境パフォーマンス情報を、本業との関わりにおいて包括的かつ明瞭な形で開示していること
  • 環境パフォーマンスに対する企業自身の評価や説明が加えられていること
  • 情報の信頼性およびコミュニケーション確保のために努力していること

2.選考の基本方針

2-1 業種特性に関する考え方
  最優秀賞には最も優れた報告書を、優秀賞はそれに準じる報告書を選考する。優良賞は優秀賞に準じる報告書とし、業種・規模を勘案する。

2-2 昨年度との比較について
  評価は今回応募された報告書を対象とし、昨年度以前との比較は行わない。

2-3 特別賞について
  特別賞は、特別に優れた内容があった場合に選考する。ただし最優秀賞、優秀賞、優良賞との重複しての受賞はしない。なお第4回から特別賞として中小企業賞とサイトレポート賞を設置している。

2-4 継続優秀賞について
  継続優秀賞制度は、継続的な受賞企業を評価するもので、これまでの受賞歴を最優秀賞3点、優秀賞2点、優良賞1点で評点し、累計点数が7点に達した企業を継続優秀賞とする。昨年度までに日本アイ・ビー・エム、キリンビール、リコーの3社が継続優秀賞となった。
 継続優秀賞となった企業は、翌年以降に応募した場合、最優秀賞の候補とはなるが、優秀賞・優良賞の対象とはしない。すなわち最優秀賞となるか、あるいは継続優秀賞にふさわしい水準を維持しているかどうかについて審査委員会で審査し、質が維持されていると判断されれば引き続き継続優秀賞として顕彰する。継続優秀賞の企業が応募した場合、第一次審査をへずに最終審査の対象となる。今回、上記の3社から応募があった。

3.作業部会における選考の経緯

3-1 作業部会の役割
  作業部会の役割は、応募されたすべての環境報告書を読み込み、審査委員会に提出する候補作品を選定することである。

3-2 作業部会の構成
  作業部会はグリーンリポーティング・フォーラムのメンバー24人及び東洋経済新報社の12人、計36人で構成された。

3-3 選考の経緯
  作業部会では、応募作品を(1)電気機器(2)化学(3)機械・輸送用機器(4)食料品・精密機器(5繊維製品・紙・パルプ・医薬品等(6)鉄鋼・非鉄金属・ガラス・土石等(7)建設・電力・ガス等(8)流通等(9)不動産・運輸・通信・サービス・金融等(10)中小企業・サイトレポートの10のグループに分けて、読み込んだ。各グループの担当冊数はおおむね30冊程度、担当者は3人から5人である。各担当者は、事前に担当の応募作品を受け取り、それぞれ読み込んだ。その際、審査基準をブレークダウンした作業用規準(下記資料参照)に基づいて審査基準ごとに5段階で評点を付けた。各担当者は、単に合計点数の大小等による機械的な選考ではなく、評点を参考にして、担当グループでの上位数社をノミネートし、作業部会に臨んだ。
 作業部会では、まず各グループに分かれて意見交換を行い、グループごとに上位数社の推薦候補を決定した。その際、業種や規模を勘案するという基本方針に添い、業種のばらつきや企業規模の大小に関して一定の配慮を行った。ただしすべての業種から候補を出したわけではなく、業界全体の水準が賞の候補となるレベルに至っていないと判断された場合には、ノミネートしなかった。
 次に、各グループでの討議の結果を踏まえて、作業部会全体での意見交換を行い、グループ間での水準の相違、業種・規模に関する配慮などについて総合的に検討した上で、最終的に候補作を決定した。また、今年度は中小企業・サイトレポート以外で特別賞候補はなかった。

4.審査委員会における選考の経緯

4-1 審査委員会の役割
  審査委員会の役割は、作業部会からの候補作及び継続優秀賞の応募作を審査し、最優秀賞1点を選考すること、作業部会からの候補作から優秀賞2点、優良賞10点程度及び特別賞を選考すること、継続優秀賞の応募作について水準が維持されているかどうかを審査することである。

4-2 審査委員会の構成
  審査委員会は別掲の通り、各界の識者11名で構成されている。

4-3 選考の経緯
  作業部会終了後、各審査委員に候補となった環境報告書を各1部ずつ送付した。審査委員は応募要項に示した5つの審査基準を前提に、それぞれの見識に基づいて候補作を評価し、審査委員会当日までに受賞候補を推薦した。審査委員会当日はできる限り議論を通じて合意形成を図るよう努めた。その上で、最後まで意見が分かれた場合には多数決によって最終の決定を行った。最終結果及び理由等については講評を参照されたい。
(文責:水口剛/高崎経済大学助教授・グリーンリポーティング・フォーラム副代表)

[参考資料:作業部会における作業用規準]

(1)審査基準1.環境情報開示および環境保全活動に関する企業姿勢が明示されていること

評価規準

  • CEOが環境保全活動に関する企業姿勢を明示していること
  • CEOが環境情報開示に関する企業姿勢を明示していること

評価方法

  • 5ポイント:上記が2点満たされており、自社のコミットメントが明確である
  • 4ポイント:上記が2点満たされているが、CEOの姿勢が抽象的である
  • 3ポイント:上記が1点満たされている
  • 2ポイント:CEOが明言していないが、環境方針などで明らかにされている
  • 1ポイント:いずれも開示していない

(2)審査基準2.環境報告書としての構成が体系的で、かつ各項目間の関係および重要度が明確であること

評価規準

  • 構成が体系的である
  • 各項目の関係がはっきりしている
  • マネジメント情報を含み、開示されている情報のプライオリティがわかる

評価方法

  • 5ポイント:上記が3点とも満たされている
  • 4ポイント:上記が3点とも満たされているが、十分ではない
  • 3ポイント:上記が2点満たされている
  • 2ポイント:上記が1点満たされている
  • 1ポイント:上記が満たされていない

(3)審査基準3A.環境マネジメント・パフォーマンス情報を、本業とのかかわりにおいて包括的かつ明瞭な形で開示していること

評価規準

  • 責任と権限が明確な形で示されている
  • 環境マネジメントシステム(ISO14001含む)についての記述がある
  • 内部監査の具体的な記述がある

評価方法

  • 5ポイント:上記が3点とも満たされている
  • 4ポイント:上記が3点とも満たされているが、十分ではない
  • 3ポイント:上記が2点満たされている
  • 2ポイント:上記が1点満たされている
  • 1ポイント:上記が満たされていない

(4)審査基準3B.環境操業パフォーマンス情報を、本業との関わりにおいて包括的かつ明瞭な形で明示していること

評価規準

  • パフォーマンス情報の包括性がある:過去からの推移および目標とすべき基準が示されている(経年的な比較ができる)
  • 本業との関係で重要なパフォーマンス情報が項目として網羅されている
  • 明瞭である:単位が統一されている(例:絶対量、原単位などがばらばらになっていない)。グラフ、表などの表示方法に統一性がある

評価方法

  • 5ポイント:上記が3点とも満たされている
  • 4ポイント:上記が3点とも満たされているが、十分ではない
  • 3ポイント:上記が2点満たされている
  • 2ポイント:上記が1点満たされている
  • 1ポイント:上記が満たされていない

(5)審査基準4.環境パフォーマンスに対する企業自身の説明や評価が加えられていること

評価規準

  • パフォーマンスについて、説明が施されている
  • パフォーマンスについて、自社の評価が加えられている

評価方法

  • 5ポイント:読み手が理解できる具体的な記述がある。自社の環境パフォーマンスに対してどのように評価し、今後のアクションにどのように結びつけるかについて記述している。(結果の言及だけでは不適)
  • 4ポイント:実績の説明やそれをどのように評価して今後のアクションにどのように結びつけているかの説明があるが、具体的ではない
  • 3ポイント:事実の説明に対してなんらかの説明がある
  • 2ポイント:事実の説明に対してなんらかの説明があるが、十分ではない
  • 1ポイント:説明がない(努力します、めざします、良くなった、悪くなったは説明していないのと同じ)

(6)審査基準5.情報の信頼性およびコミュニケーション確保のために努力していること

評価規準

  • 報告書に記載されている情報の信頼性を上げるための努力が見られる
  • 読者とのコミュニケーションをとる努力が見られる

評価方法

  • 5ポイント:信頼性の確保と読者との相互コミュニケーションの工夫について努力していることがわかる
  • 4ポイント:双方とも努力しているが、十分ではない
  • 3ポイント:どちらかについて努力していることがわかる
  • 2ポイント:どちらかについて努力していることがわかるが、十分ではない
  • 1ポイント:双方とも努力していない