環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

講評

 環境報告書賞の水準は毎年着実にアップしており、審査も大変難しくなってきている。今回は、松下電器とアサヒビールが激しく最優秀賞を争った。松下電器の環境報告書は群を抜く網羅性と豊富な情報量で高い評価を集め、一方、アサヒビールは、読み物として工夫されており親しみやすい報告書であることが評価された。

 議論の結果、僅差ではあったが、報告書としての総合力という点で松下電器が最優秀賞となり、アサヒビールは優秀賞となった。もう一つの優秀賞の枠は、トップの姿勢が明確でグローバルな視点も評価されたトヨタ自動車となった。

 優良賞は業種も勘案し13社が選ばれた。その中でもシャープの報告書は高く評価され、最後まで優秀賞の座を争った。シャープの報告書は、環境目標と実績の対比を環境パフォーマンスの説明のところでも明確に示している点が高く評価された。

 電気機器、精密機器の分野では、他に、セイコーエプソン、富士ゼロックス、日本電気、キヤノンが優良賞に選ばれた。セイコーエプソンもシャープと同じく環境目標と実績の関係を明示し丁寧に説明している点が良かった。富士ゼロックスは、目標と実績の関係が明確で、説明が充実していた。
 NECはNPOとの共同作業が一層充実し、質の向上が評価された。キヤノンについては自社の環境問題を丁寧に説明し、環境保全への企業姿勢が伝わる報告書であった。ただし、キヤノンはデータ部分を別冊にしており、この点について委員の評価は分かれた。
 流通業界からは、消費者を意識した構成が評価され、西友が選ばれた。酒類メーカーである宝酒造の報告書も、インターネットとの併用による読みやすい報告書として評価された。この2社に限らず、最終消費者をターゲットとする報告書には、工夫を凝らしたものが多かった。

 エネルギー関係では、大阪ガスと九州電力が選ばれた。大阪ガスの報告書は残土処理の問題を含め環境保全活動の全体状況が詳しく説明されている点が評価された。九州電力については、環境保全活動全般をわかりやすく解説する工夫がみられる報告書として、電力業界からは久しぶりに入賞した。

 自動車業界からは優秀賞のトヨタ自動車に加えて、日産自動車の報告書が特にリサイクルに関する詳細な記述が高く評価されて優良賞となった。建設業界については、マテリアルフローを明確に示し、情報を明瞭に開示している大林組が高く評価された。

 化学工業としては、積水化学工業の報告書が全社編とカンパニー編の編集方針がわかりやすく、質量ともに充実していたため入賞した。オフィス家具メーカーの岡村製作所の報告書は、目標と実績の関係が明確で、グラフも明瞭、説明も十分ということで初の受賞となった。印刷業の環境報告書も高く評価されたが、本業と環境負荷の関係をもう少し明確に説明してほしいという意見があり、僅差で入賞を逃した。

 継続優秀賞としては、日本アイ・ビー・エム、リコー、キリンビールが前年度に続き、その水準を維持していることが評価され、今年度から松下電器とトヨタ自動車が加わることになった。

 サイトレポート賞は、リコー福井事業所が3年連続の受賞となり、富士写真フイルム足柄工場が初受賞となった。どちらもよくまとまっており、全社レベルの報告書と遜色ない質を示している。

 最後に、中小企業賞として、近畿環境興産が、産廃事業の内容を詳しく開示している点が高く評価され、初受賞した。

 グリーンリポーティング・フォーラム代表       
神戸大学大学院経営学研究科教授   國部克彦