環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

はじめに

 第5回の環境報告書賞は242社の応募を得て行われた。応募企業は前回に比べ50社増と着実に増加し、内容面でも前回以上にハイレベルの争いとなった。
  今回は、共催団体の作業部会による一次審査で最優秀・優秀・優良賞候補を33点に絞り、最終審査で最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞14点を選定した。特別賞に関しては一次審査を通過した6点から、サイトレポート賞2点、中小企業賞1点を選出した。
  また通算での受賞実績を基準にする継続優秀賞(エスタブリッシュト・リポーター)は、今回の結果で2社が新たに加わり、合計3社となった。

講評

 応募された環境報告書の水準は全体として非常に向上し、記載される情報内容は質的にも量的にもますます充実してきた。その中でさらにプラスアルファのある報告書が、今回高く評価された。それは、報告書の更なる進化につながる工夫のあるものや、環境報告に対する意気込みや熱意が滲み出ている報告書である。

 最優秀賞は西友、キリンビール、リコーの3社が最後まで争った。西友は環境配慮商品を始めとする詳細なデータと店舗の建設段階まで含めた開示が高く評価された。キリンビールは報告書本体の分かりやすさに加え、過去のデータ一式を含むCDを添付した工夫が評価され、リコーは環境経営に関する多面的な分析と、報告書全体の完成度の高さが評価された。この3社に対する審査委員の評価はほぼ均等に分かれたが、最終的には西友の丹念で誠実な情報開示を評価する声が若干多く、西友が最優秀賞、キリンビールとリコーが優秀賞となった。

  優良賞は応募企業の増加も考慮して14社を選出した。業種別に見て最も多いのは電機・電子関係の4社である。セイコーエプソンは所在地とデータまで明記した地下水浄化に関する記載が特に評価された。NECは環境NPOとの共同企画による編集が高く評価され、松下電器グループはビジョンを明確にした報告と信頼性確保の努力が評価された。ソニーはライフサイクル全体での資源収支から環境負荷を丁寧に説明している点が評価された。

  自動車業界からは2社が選ばれた。トヨタ自動車は環境に関する取り組みを包括的に示した報告書として今年も高く評価された。ダイハツ工業は初の受賞だが、コンセプトを明確にした独自性のある報告書として評価された。

  エネルギー業界からも2社が選ばれた。大阪ガスは読みやすさを重視した表現方法と技術面での分かりやすい説明が評価された。コスモ石油は事業の環境負荷を認識した上で自社の姿勢を明示している点や、油田の開発段階からの記載が評価されての初受賞となった。
食品業界では、インターネット連携版として本体を10ページに抑えた宝酒造が、その独創性と本体の分かりやすさの両面で評価された。また窯業ではINAXが、マテリアルフローの分かりやすい説明とコミュニケーションの努力を評価されての受賞となった。

  初の受賞となる企業が多いのも今回の特徴で、流通業界ではイオンが、消費者に分かりやすい紙面を評価されての初受賞となった。建設業界からは、重点課題とそれへの対応を分かりやすく示した大林組が、素材産業では本業を通じた環境問題への貢献を数字で表した太平洋セメントが、それぞれ初の受賞である。また環境試験装置などのタバイエスペックはそれほど大企業ではなく環境報告書でも後発ながら、ガイドラインとの詳細な対応や、全ての材料を含めたマテリアルバランスの開示などが評価されて初受賞となった。

  特別賞のサイトレポート賞にはリコー福井事業所とソニーイーエムシーエス木更津テックの2社が選出された。両社はともに地域住民が知りたいと思う情報を詳しく開示した、優れた報告書であった。また中小企業賞には環境調査・コンサルティングの環境管理センターが選ばれた。同社の報告書は読者からの意見に基づく改善個所を明示するなど、独自の工夫が評価された。

  昨年度からの継続優秀賞である日本IBMは今回も十分その水準にあると評価された。また今回の受賞結果を加味してキリンビールとリコーが新たに継続優秀賞となった。
特別賞を含めて初受賞が8社あったように、上位企業の差は接近している。今回入賞を逃した企業でも受賞企業と遜色のないものは多い。また審査の過程では、サイト別エネルギー消費などのデータの一層の充実や、事業領域全般にわたる網羅性の確保など、更なる向上を求める声もあった。環境報告書はまだまだ発展しうることを実感した審査であった。

審査委員 水口 剛