環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

はじめに

 第4回目の環境報告書賞の応募企業は前回から倍増し、192社であった。今回もさまざまな業種・規模の企業から応募があり、環境報告書のすそのがますます拡大していることが明らかになった。

 まず、全応募企業の環境報告書を、共催団体による第一次審査で最優秀・優秀・優良賞候補として34点に絞り込み、最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞12点を選定した。さらに、今回から特別賞として設定したサイトレポート賞2点、中小企業賞1点もあわせて選定した。

 なお、環境報告書表彰制度も回を重ねてきたので、今回から、過去から継続的に優秀な成績を収めてきた企業を継続優秀賞(エスタブリッシュト・リポーター)として表彰することにした。今回の受賞も含めてポイント計算した結果、日本IBMが継続優秀賞に該当することになった。

講評

 第4回環境報告書賞では応募企業の急増もさることながら、その質的向上に目を見張るべきものがあった。環境報告書に掲載すべき項目はほぼ標準化され、表示の方法、説明の仕方についても大きな進歩が見られた。

 最優秀賞については、セイコーエプソン、キリンビール、松下電器グループの3社が最後まで激しく争った。セイコーエプソンについては、環境負荷に関する説明が明確かつ詳細で、誠実な報告書であることが高く評価された。

  一方、キリンビールおよび松下電器グループは、本報告書賞でも受賞常連企業であり、環境報告書に掲載されている内容の質および量の双方で高い評価を集めた。

  最終的には、環境パフォーマンスに関する企業自身の説明の質という観点からセイコーエプソンを推す声の方が若干大きく、セイコーエプソンが最優秀賞、キリンビールと松下電器グループが優秀賞という結果になった。

  優良賞には昨年度より応募企業が増加したことも考慮して12社を選定した。紙幅の関係で業種ごとに区分して評価された主なポイントのみを列挙しよう。

  電機・電子関係では、東芝、NEC、日本IBM、富士通、リコーグループの5社の報告書が選ばれた。これらの報告書はいずれもこれまでも高く評価されてきた報告書ばかりである。

  東芝に関しては丁寧な説明と環境会計などで独自の工夫をしていることが評価された。NECに関しては製品の環境配慮に関する詳しい説明が評価された。日本IBMに関してはITと環境に関する踏み込んだ記述が注目された。富士通では環境負荷に関する誠実な説明姿勢が評価された。リコーグループは環境経営システムに関する詳しい開示が高い評価を得た。

  自動車業界からはトヨタ自動車が選ばれた。トヨタ自動車の環境報告書も質・量ともに定評のある報告書で、自動車業界の環境報告書のひとつのベンチマークとなっている点が今年も評価された。

 流通業からは西友が選ばれた。西友に関しては、内部環境監査を含む環境活動に関する詳細な説明が評価され、環境に配慮した製品の記述も注目された。

 公益企業としては、エネルギー業として東京ガス、鉄道としてJR東日本が選定された。東京ガスもJR東日本も自社の全活動がどのように環境に負荷を与えているかについて一覧表にしており、活動規模が広範囲にわたる公益企業の報告書として高く評価された。

 食品業界からは宝酒造が選ばれた。宝酒造は緑字決算という独自の環境報告書をわかりやすくまとめている点が評価された。

 また、今年は窯業および化学業界から初の受賞企業が出た。INAXと東洋インキである。INAXは環境基本理念を指標で表すなど独自性を出そうとしている点が注目され、東洋インキはグラフの出し方が明瞭で説明も十分であることが評価された。

 さらに今回はサイトレポート賞として、東芝研究開発センターとリコー福井事業所が選ばれた。東芝研究開発センターはサイト報告書でありながら、サスティナビリティ報告書を目指そうとしている点が注目され、リコー福井事業所は単独でも優良賞に迫るほどの質・量ともに充実した報告書であった。

 また規模を勘案して、中小企業賞としてピックルスコーポレーションを選定した。同社は大規模事業者ではないが、環境に対する真摯な取り組みが伝わる報告書であることが評価された。

 環境報告書の質は急速に向上しており、今回惜しくも入賞を逃した企業の中には、受賞企業とほとんど遜色ない報告書が大変多かったことを最後に付け加えておきたい。

グリーンリポーティング・フォーラム共同コーディネーター
神戸大学大学院経営学研究科教授
國部克彦