制作:東洋経済広告企画制作部

グローバル経営戦略フォーラム クロスボーダーM&Aと買収後経営

パネルディスカッション

エキスパートはどう見たか

 3社のプレゼンテーションを受けて、クロスボーダーM&Aをサポートする側のエキスパートからの発言が続く。まず、タワーズワトソンのタレント・リワードセグメントデータ・サーベイ部門リーダーの岡田恵子氏は適切なリーダーの選定が従業員をモチベートしたことを評価するとともに、企業のカルチャーを何らかの負荷がかかったときのトップから一般社員までの思考と行動の集積と定義。企業が目指す方向に合致したあるべきカルチャーを築くために、ディールの後半からマネジメント陣で現状の課題抽出と対策に取り組み、完成後は一気にリーダー層と一般社員に広げていくことの重要性を説いた。

 次に、長島・大野・常松法律事務所弁護士の藤縄憲一氏はリスク分析に関連して、米国では買収会社の社長になる人が一番真剣にデューデリジェンスのレポートを読むことを紹介。また、現地を尊重する3社と異なり、一般的な日本企業は子細な内部規則を適用するため、仮に失敗して整理するとき、法的には株主としての有限責任では済まず、訴訟を起こされるリスクが発生することを指摘した。また、社外取締役の活用を評価しつつ、アドバイザリーボードという別の選択肢の紹介もあった。

 3人めのエキスパートは、アクセンチュア経営コンサルティング本部戦略グループのエグゼクティブ・パートナー神馬秀貴氏。まず、M&Aの意思決定と成果につなげるまでのスピードが速まっているという実感が語られ、さらに成功確率やフレキシビリティを確保するためには、プロセスや規定などのグローバルな経営基盤をどうつくり、本社CEOがどれだけ深くコミットするかが重要になるという指摘があった。

クロスボーダーM&A戦略と買収後経営

日本市場をワンローカルマーケットととらえ世界地図を描いていく

 そこから議論は現地トップマネジメントをどうしていくべきかに向かって、藤縄氏からは被買収企業の問題点を浮かび上がらせるためには社長を代えるのが効果的という指摘があり、岡田氏は買収する企業側とされる企業側がオープンに議論できるチームの存在の有効性を語った。また、神馬氏は一定の統合効果が出始める第1フェーズが終わる段階で次のリーダーを被買収企業から選んでおくことの重要性を示唆した。

 それを受け、西畑氏からグローバル化で後発であることを逆に生かして増えた仲間と共通軸をつくっていくという決意が示され、佐々木氏は良い現地パートナーを選別して協力関係を深めてくことを宣言。中西氏からは、これまで自力で進めていたアジア圏でも今後はM&Aが大きな意味を持つという見解が示された。

 最後に、モデレーターを務めた慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の青野倫一氏が、日本市場をワンローカルマーケットと割り切り自社の世界地図を描いていく重要性を改めて説き、議論を締めくくった。