制作・東洋経済広告企画制作部

新しい成長は動くことからしか生まれない

なぜ海外へ出て現地現物に触れなければならないか

― 海外へのフットワークも取り戻さなければいけませんね。

遠藤 当然です。海外に身をさらすことにはさまざまな効用があります。成熟というのは物事を相対化する力が高まることとほぼ同義だと思いますが、それには異質と出会わなければなりません。日本人はやはり島国の住人で放っておくとどんどん同質に向かいがちなので、つねに外に出て異質と出会うことで感度も磨かれるのです。海外に出てあらためて外から客観的に日本を観察してみれば、国内にいたときには気づかなかった日本の良さも再発見するはずです。やはり、日本という国は質が高いことは間違いない。私は中国のビジネススクールでも教えているのですが、日本的経営というテーマにはすこぶる食いつきがいい。たとえば日本人ビジネスマンの企業へのロイヤルティの高さはいまもジャパンマジックなのです。

― 異質であるために、気づきの量が多いわけですね。

遠藤 もちろん、ビジネスチャンスをとらえるためにも、海外へ出ていかなければなりません。世界はいま本当にダイナミックに動いていて、今はチャンスにあふれている時期とも言えるのですが、残念ながら日本のフットワークは良いとは言えません。中国にしても、上海だけにニューヨークを上回る数の日本人が居住している。居心地の良い場所に安住せずに22のすべての省に散らばるべきでしょう。もっともっと好奇心を持って、海外の現地現物に触れなくてはなりません。行けば必ず発見があり、つまりはビジネスチャンスがあるのです。

日本は大国ではなく黄金の国を目指さなければならない

― 日本は世界でいま起こっていることにもっと敏感でなければならないとも、指摘されていますね。

遠藤 そうです。ビジネスの対象としてだけで世界を見ていたのでは、勝負に勝ち目はないということです。

― どういうことでしょう。

遠藤 日本の次の成長曲線の主軸になるビジネスは、利益確保だけが目的のビジネスではないということです。深い教養、リベラルアーツを磨いたビジネスマンだけが進めることのできるビジネスを追求しないと、明日の日本の競争力はありません。日本は大国ではなく、黄金の国を目指さなければならない。体格ではなく、体質を追求するのです。そのためには、もはやMBA的な素養は当たり前。これからは世界の歴史と文化に通暁して、自国の歴史・文化をそこに位置づける力が問われます。少なくとも管理職以上ならば、しっかりとした教養に裏打ちされた自分独自の世界観をもって、外国人のパートナーを相手に、なぜ自分が現在の会社に席を置いて現在の仕事をしているのかを語れなければなりません。ですから、海外へ行っても単にビジネスの対象としてその国を知るのではなく、自らの教養を深めるためにその国を理解しようとする姿勢が極めて重要になるのです。

― そういう日本人になれるでしょうか。

遠藤 十分になれると思いますよ。私はビジネススクールで教えていて日本の学生は捨てたものではないとつくづく思います。言われなくてもボランティアを進んでやるように、自分の価値観に合っていれば実によく動く。自分のためよりも、人のためになることに情熱を燃やします。人間としてのバランスが取れていて、成熟している。これは日本にとってすごいアドバンテージです。黄金の国は彼らのような人間が築くのです。だから、もっともっと人間を磨く環境を整えてあげたい。その意味でも、企業の経営者にはぜひノリを強く意識してほしいと思います。ノリの良い会社を創ることが経営者の責務です。

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