制作*東洋経済広告局企画制作部

将来のインフレリスクに備える
積極運用のススメ

世界的な経済危機は底を抜けたとは言うものの、いまだ先が見えない。年金問題など、 将来への不安は募るばかりだ。しかし、こういうときこそ資産の運用法がカギとなる。 何もしなければ資産は殖えないばかりか、減る一方。不安定時代に賢く殖やす方法はとは――。 本特集では、金融ジャーナリストである鈴木雅光氏にオススメの運用法をご執筆いただいた。
 

物価は上がっても金利が上がらない時代?

  経済の教科書的な見方をすれば、 物価上昇は金利上昇につながる。国内の経済活動が活発になれば、消費や設備投資意欲が高まり、資金調達圧力が高まるからだ。
 しかし、次のような経済環境の下で、果たして金利は上がるだろうか。
 国内経済=低成長
 海外経済=新興国を中心に好調
 国内経済が低成長だと、国内金利は上がりにくくなる。ところが、新興国を中心に、海外経済が好調だと、物価には上昇圧力が加わっていく。特に中国やインドなど、人口の多い新興 国の経済が発展すれば、資源・エネルギー、食糧品をはじめとするさまざまな物資に対する需要が高まり、国際商品価格が上昇する。本来、経済成長が低ければ、物価も上がりにくいとされるが、果たして、このような状況の下で、日本の物価は上がらないと言えるだろうか。
 2008年7月、原油価格が急騰するなか、日本の消費者物価指数は、対前年同月比で2・4%も上昇した。この間、決して国内景気は好調ではなかった。そうであるにも関わらず、消費者物価指数が2・4%も上昇し たのは、BRICKsをはじめとする新興国の経済成長に対する期待感に よって、国際商品価格が押し上げら れたからだ。
 では、消費者物価指数が上昇するなかで、日本の金利はそれに伴って上昇したのだろうか。日本経済は2002年2月〜2007年10月まで、戦後最長といわれる景気拡大局面を経ていたが、金利水準はほとんど上がらなかった。超高齢社会の到来によって、高い経済成長率は期待できない。一方、海外要因で物価は上昇する。実際、昨年7月、消費者物価指数は1年間 で2.4%上昇したが、この間、1年 物定期預金で得られた利息は0.3% 程度。つまり預貯金のみで資産を運用していた人は、実質的に資産価値が 1年間で2.1%も目減りしたことに なる。
 今はデフレ局面なので、預貯金利 息と物価上昇率の逆ザヤは解消され ているが、新興国経済が今後、長期 的に拡大局面に入れば、再び預貯金 ではインフレリスクをヘッジできない状 態になる恐れはある。

「消費者物価指数と1年物定期預金利の推移(1997〜2009年)」グラフ

インフレの原因になるものに投資する

鈴木さんオススメ!積極運用ポートフォリオ  では、このような状況の下で、どの ような資産運用が必要になるのか。 それは、インフレの原因になると思わ れるものに資金を投じることだ。
 新興国経済の発展が、国際商品価 格を押し上げる原因なのだから新興国の株式市場に投資する、あるいは物価水準が上昇するのだから商品そのものに投資するといった方法が、まずは考えられる。新興国が経済発展すれば、当然、これらの国々の株価 は上昇するし、国際商品価格が上昇すれば、金や原油などコモディティ(商品)の価格も上昇する。それによって、インフレリスクを相殺することは十分に可能だ。
 また、外貨投資もインフレリスクのヘッジにつながる。今後、日本の経済成長が落ち込めば、外国為替市場で円が売られることも考えられるから だ。円安が進めば、資源・エネルギーや食料品の大半を海外からの輸入に頼っている日本にとって、輸入物価の上昇要因になる。でも、資産の一部 を外貨建てで保有していれば、為替差益によって、円安による国内物価の上昇分を、ある程度、カバーできる。
 外貨投資といえば、ここ数年、個人投資家の間で注目されているのがF X(外国為替証拠金取引)だ。取引会社に一定の証拠金を預けて、さまざまな通貨の取引を行うもので、取引口座数なども順調に伸びている。FXには、「くりっく365」に代表さ れる取引所取引型と、相対で取引さ れる店頭取引型とに分れるが、たとえばくりっく365の口座数を見る と、取引が始まった2005年7月末 時点はわずかに370口座だったのが、 2009年 10月末時点では 17万5632口座まで増えている(口座数出所・ 東京金融取引所)。
 店頭取引型の場合、全体的に取引コストが安く、取引ツールが充実して いるといったメリットがある一方、取引所取引型は税制メリットが大きい。店頭取引型の場合、FXで得た利益は雑所得として総合課税の対象になるが、取引所取引の場合は20%の申告分離課税になるため、利益が大きくなるほど税率で優位になる。
 これらは、基本的に長期で見たイ ンフレリスクヘッジ手段だが、自分のトレーディング技術に自信がある方は、 短期で値上がり益を積み重ねていく という方法も考えられる。最近は、日経225先物の夜間取引も登場しており、夜、仕事から帰った時間帯でも、シカゴ上場の日経225先物を トレーディングすることが可能だ。
 ただし、これらはいずれもリスク資産なので、保有資産の全額を、この手の資産で運用することはおススメで きない。ある程度、安定資産を持つことも肝心だ。安定資産といえば、預貯金が代表的だが、多少なりとも国内金利が上昇する可能性があるとしたら、 10年物の個人向け国債も選択肢になりうる。いずれにしても、これからの時代は資産運用のスキルを磨 くことが、よりよい生活を送るうえで必要になってくるはずだ。

 
インフレに効く資産運用手段はこれ!
コモディティ
金や原油などの商品先物取引、あるいはコモディティインデックスに連動する投資信託など、コモディティに投資する手段は多種多様だ。商品先物取引は、レバレッジが効くので、どちらかといえば短期の値動きを捉えて利益を積み重ねていく投資スタイルに合う。一方、コモディティインデックスに連動する投資信託などは、先物取引にある「限月」などがないため、長期保有も可能。個人の資産運用のスタイルに応じて、好きな方を選べばよいだろう。
金(GOLD)
金はインフレリスクをヘッジするために適した投資対象の最右翼。金に投資する方法と しては、先物を利用するものと、現物を保有するものとがある。長期でインフレリスクを ヘッジするのであれば、現物の保有が適している。ただし、現物なかでもバーを購入す る場合、500グラム未満だとバーチャージと呼ばれる加工賃がかかり、コスト面で割高にな る。したがって、金の現物に投資する場合は、500グラム以上を購入するか、地金型金貨を 購入するのがオススメ。
FX
円安が進めば、日本の物価は「輸入インフレ」の影響を受けて上昇しやすくなる。これをヘッジするためには、外貨を保有するのが最も適切。外貨投資にもさまざまな方法があ るが、コストの割安さ、売買のしやすさを優先するのであれば、FX(外国為替証拠金取引)がオススメ。短期のトレーディングならレバレッジをある程度高めにして投資する。逆 に、長期的に輸入インフレをヘッジする目的で利用するなら、レバレッジは5倍程度に抑えて投資すること。
CFD
取扱会社に一定額の証拠金を預け、それを元手に国内外の株価指数、個別銘柄、コモディティ、債券先物、ETFなどを売買できる。FXに近い商品性を持つ新しい投資手段が CFD(差金決済取引)。今後、レバレッジ規制が行われる予定だが、現時点では、預けた証拠金に対して最大20倍程度のレバレッジをかけて取引できる(一部業者は200倍)。 FXと同じ証拠金取引なので、少ない元手で取引できるとともに、「買い」だけでなく「売り」から取引を始めることもできる。投資対象の数が多いのも魅力のひとつ。
新興国ファンド 中国やインド、東欧・ロシアなど、これから経済成長が期待される国々の株式を組み入 れて運用される投資信託。経済の成長に伴って、新興国の株価が上昇すれば、新興国 ファンドの運用実績も上昇する可能性が高まる。そこから得られる運用収益で、インフレ リスクをヘッジできる可能性は高い。ただ購入手数料などのコストが割高なので、10年 単位で長期保有することが鉄則。新興国全体に幅広く分散投資するタイプがオススメ。
日本株 短期的な値動きをとらえて利益を積み重ねていくのであれば、レバレッジを効かすことが でき、流動性が高く、夜間も含めて取引できる日経225先物がオススメ。ただ、長期的に インフレリスクをヘッジするため、長期保有を前提に日本株に投資するのであれば、個 別銘柄で、かつ新興国でのビジネスを積極的に展開している企業の株式に投資する。 個別銘柄投資の場合は、企業業績によってパフォーマンスにも差が生じてくるので、銘柄選びは慎重に行う必要がある。
個人向け国債 固定金利型の5年物と、変動金利型の10年物がある。適用利率は、固定金利の0.60% に対し、変動金利は0.53%で固定金利型の方が有利だが、今後、多少なりとも金利が 上昇する可能性があると見るならば、変動金利型がオススメ。仮に国内金利が大きく上 昇する可能性が低いとしても、インフレ懸念が高まれば、多少、国内金利といえども上 昇する余地は生まれる。安定資産部分も、この手のインフレリスクに対応させるのであ れば、変動金利型の個人向け国債をポートフォリオのベースに持つとよい。

鈴木 雅光
鈴木 雅光
Suzuki Masamitsu
金融ジャーナリスト
1967年生まれ。証券会社、公社債新聞社などを経て、2004年JOYntを設立。経済、金融の分野を中心に、雑誌への執筆、 単行本やムックの企画・制作を行う。連載:『オール投資』(東洋経済新報社)「投信ウラ&オモテ」ほか多数。
著書:『金利がわかると経済の動きが読めてくる!』(すばる舎)ほか多数。
積極運用ベストパートナーズ
サンワード貿易株式会社
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