EQ こころの距離の近づけ方

高山 直著
2005年10月14日 発売
定価 1,760円(税込)
ISBN:9784492555460 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:226


【内容紹介】


 

「人の気持ちがわからない人」と言われないために。生きていくための作法の基本になるのが「こころの距離」の考え方である。「話し方」より「話しかけられ方」が大切なように、人の感情に慣れ、感じる力を鍛えることが、「こころの距離」を近づける。日本におけるEQ(こころの知能指数)理論の第一人者が、ビジネスなどでは欠かせない具体的な「こころの距離」の近づけ方をわかりやすく紹介する。ベストセラー『EQこころの鍛え方』に続く第2弾。



●はじめに


 

 「わたしの会社(組織)に元気がない、どうやったらEQで元気になりますか?」



 最近、経営者の方や管理職の方からよく受ける質問です。そんな時は逆に「みなさんの会社(組織)ではあいさつをしていますか?」「おはよう! ありがとう! の言葉が飛び交っていますか?」と質問させていただきます。この質問にほとんどの方は「えっ!? 何か関係があるんですか……?」と絶句されます。組織を元気にする方法は、世界中のビジネスパーソンが最も知りたいことの1つでしょう。わたしは「元気な組織」のヒントは「こころの距離」にあると思います。



 組織という人の集団を元気にするには、制度や仕組みづくりも大切ですし、その運用が決め手でもあります。しかし、いくら素晴らしい仕組みをつくって徹底的な運用管理を実行しても、必ずしもうまくいくとは限りません。なぜなら、その仕組みを考えるのも、運用するのも「人」であり、その対象も「人」だからです。



 人には感情があります、組織となれば複数の人々の感情があり、それぞれの感情の間には距離が存在します。本書では、その距離を「こころの距離」と表現しています。制度や仕組みが機能するためには、組織を構成する人たちのこころの距離を近くし、お互いのこころが理解しやすく、考えも伝わりやすいこころの距離が大切になってきます。こころの距離が遠い会社や組織では、どんなに素晴らしい制度や仕組みを導入しても元気にはならないものです。



 経営者の方や管理職の方だけでなく、サービス業の皆さまからEQを活用して販売力を向上させたいというご相談があります。そんな時にも「お客様とのこころの距離が鍵です」とお答えすると、「う~ん、なるほど」と納得されます。医療関係の方は「患者さんとのこころの距離が大切です」で納得されます。教育関係の方は「生徒さんとのこころの距離が大切です」で感心をされます。最近では、子育てや家庭内の悩みなど個人の方からのご相談も増えてきました。「お子さんとのこころの距離を近くしましょう」「家族とのこころの距離がすべてです」とお答えしています。「こころの距離」という言葉が、皆さまの課題や悩みの解決のヒントになっているのではないでしょうか。



 ビジネスの場面のみならず、家族、家庭、コミュニティ、学校、仕事や職場、恋愛や結婚など、社会生活のすべてが人とのかかわりで成りたっています。その人と人との間にはこころの距離が存在します。あなたの近くに一緒にいて心地よいなあと感じさせる人はいらっしゃいませんか。そう思わせる方は自分のこころの中に距離を測る物差しがあるのではと思ってしまいます。相手と接する中で自然に物差しを使いながら、絶妙な距離感を保てているのではないでしょうか。



 私は、10年前に「こころの知能指数」といわれるEQ(感情能力=Emotional Intelligent Quotient)に出会い、EQ理論の提唱者のピーター・サロベイ、ジョン・メイヤー両博士の協力を得て、EQ理論と検査システムEQI(Emotional Intelligent Quotient Inventory)の活用で、日本の各企業を対象に企業風土の改革、組織開発や人材育成プログラムの実施などを中心に活動をしてきました。



 最近では企業だけでなく、大学をはじめ学校などの教育関係、病院など医療・介護関係の方々からもたくさんお話をいただいております。また、中央官公庁や自治体の方々に向けての研修や講演の機会も増えてきました。大学生はキャンパスやアルバイト先での人間関係に悩み、主婦の方は夫婦の関係や子育て、お子さんとの接し方などにEQが使えないかと、企業のみならず個人の方々からもお声がかかるようになっています。



 わたしはそういう方々とお会いする中で、EQを活用して社会生活の中で起こっている人間関係などの悩みをわかりやすい形で整理し解決できないかと考え、今回「こころの距離」というテーマでまとめてみました。



 こころの距離を近づけるためには、積極的にEQアプローチ(相手との感情のギャップを近くする行動)をとる人はもちろんですが、そのアプローチを受け止め、それを返す側の協力が重要かつ大切だと思っています。数あるビジネス書では、上司や管理職などアプローチする側に対する上手な誉め方・励まし方・叱り方がテーマになっています。もちろん大切なテーマです。しかし、わたしはこころの距離を語るにはアプローチされる側、誉められた方、励まされた方、叱られた方の受け止め手側の協力なくしては成立しないと思っています。受け止め手の返し方こそがこころの距離を近づける鍵だと思っています。



 たとえば、あいさつをする人とされる人を考えてみましょう。「おはよう!」の言葉に「どうも……」の一言、これではあいさつする側も次からはあいさつをしたくなくなります。「よくやったね!」の誉め言葉に「いま、忙しいので後にしてください」の一言、これでは誉めようという気力はそがれてしまいます。励ましの言葉が「おせっかい」と受け止められたり、叱ったことが「怒られた」と感じられたり……。



 こうしたことを社会生活においてみなさんも経験されていると思いますが、誉めるのも励ますのも勇気とエネルギーがいります。叱るに至っては、我慢と忍耐も加わる大仕事です。その大仕事の結果が逆効果になってしまっては、あまりにも悲しいではありませんか。そう考えれば、受け止め手側の返し方がいかに重要で大切かがおわかりいただけると思います。こころの距離はお互いの協力と共同作業ではじめて実現できるのです。



 わたしは前著『EQ こころの鍛え方──行動を変え、成果を生み出す66の法則』で66の鍛え方をご紹介しましたが、それはまさに、自分の感情を知り、相手の感情を知る力の鍛え方ですが、その目的こそ「こころの距離」を近づけるためのトレーニングそのものではないかと、本書を執筆するにあたって感じました。



 ビジネスのみならず、社会生活を楽しく、幸せな日々を送るにあたって「こころの距離」がいかに大切か、本著で知っていただきたく思います。後半では、具体的なこころの距離の近づけ方も紹介しております。前著同様、日常生活ですぐにできるトレーニングばかりです。明日からと言わず、本書を見ながらすぐに実行してみましょう。



高山 直 


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概要

自分と相手のこころの距離を近づけるにはどうすればよいのか? こころの知能指数といわれるEQを用いて、有意義な対人関係を構築するためのコミュニケーション方法を紹介する。

目次

第1章
「こころの距離」とは何か
第2章
EQ的尺度としての「こころの距離」
第3章
EQと対人コミュニケーション
第4章
「こころの距離」を近くする行動
第5章
あいさつの仕方とされ方
第6章
話しかけ方とかけられ方
第7章
上司と部下の「こころの距離」の近づけ方
第8章
「こころの距離」を近づける技術

著者プロフィール

高山 直
たかやま・なお

EQグローバルアライアンス代表。
1957年広島県生まれ。1997年3月に株式会社イー・キュー・ジャパンを設立。エール大学のピーター・サロベイ博士、ニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士との共同開発で「EQ理論」に基づいた「個人の自立と成長を支援する」プログラムを開発。2010年7月にEQグローバルアライアンスを設立し代表に就任。

著書に『EQこころの鍛え方』(東洋経済新報社)、『EQ入門』(日経文庫)、『EQ相手のこころに届く言葉』(日本実業出版社)などがある。