《特集・資産防衛》毎月分配型投信はホントにお得? “国民的”投信グロソブの真実(3) - 08/10/21 | 17:30
証券税制改正で拡大にブレーキも
毎月分配型で人気の高いファンドはグロソブ以外にもある。ここで上位二つのファンドを紹介しよう。
「グローバル・インカム株式ファンド(グロイン)」(ピクテ投信投資顧問)は配当性向の高い、世界の公益株で運用する外国株式型ファンド。外債よりもリスクは高いが、「公益株の安定配当と株式の値上がり益の両方を狙う、まったく新しいスキーム」(岡崎義晴ピクテ投信投資顧問社長)が人気を博した。
投資先は配当利回り3%以上を基準に、現在64社(業種別構成比は下円グラフ)。構成比の高い電力などを中心に原油価格の影響も気になるが、今年度は投資先の約9割が増益、うち約5割が2ケタ増益を予想しているという。
投資先の四半期ごとの配当収入を基本原資に、分配金は月30円。3カ月ごとのボーナス分配もあるが、これは基準価額が1万円以上で、キャピタルゲインがあった場合、というのが基本方針。08年3月のようにボーナス分配がないこともある。
株式ファンドのため直接の比較はできないが、8月の分配実績を基に、グロソブと同じように分配余力を計算すると7・6年(キャピタルゲイン、ボーナス分配はゼロと想定)。外国株式ファンドのグロインは、グロソブ同様、円高でマイナスの影響を受ける。また株式型であるため、一般的に基準価額の変動が大きいことも考慮に入れたい。

グロソブと同様に外債ファンドで人気が高いのが、「ダイワグローバル債券ファンド(グロ債)」(大和証券投資信託委託)だ。グロ債は北米圏・欧州・オセアニアに3分の1ずつ投資するのが特徴。組み入れ比率が一定のため、為替変動の影響を受けやすいが、これまではオセアニア通貨の高金利の恩恵で、グロソブ以上の運用実績を上げてきた。
分配金は月80円と高く、現在の前基準価額当たりの分配金利回りは実に10%を超す。ただ一方で、その分配余力は2・5年にすぎない。高配当の裏にこのようなリスクがあることにも注意が必要だ。

毎月分配型には、ほかにも注意すべき点がある。一つは09年から実施される証券税制改正だ。
09年と10年には株式の配当金や投信の分配金が合計で100万円を超えると、その部分は税率が10%から20%に上がり、確定申告が必要になる。あくまで単純試算だが、グロソブの場合、約1600万円以上保有していれば対象となる可能性がある。気になる投資家は販売会社に問い合わせてみよう。ただいずれにしても、11年以降は分配金に一律20%の税率がかかる。業界関係者の中には、こうした改正によって「毎月分配型の拡大にブレーキがかかる」と見る向きもある。
毎月分配型は本来、資産形成には不利な商品だ。分配金の分だけ元本が目減りするため、複利効果(利息が利息を生み、資産が雪だるま式に膨らむこと)が働きにくいためだ。
そのため、最大のターゲットは退職世代の高齢者。「年金代わりに毎月の現金収入を補完できる」――。これが販売会社の殺し文句だ。ただ、フィデリティ退職・投資教育研究所が今年実施した調査で興味深いデータがある。毎月・隔月など多頻度の分配金を受け取るタイプの投信保有者(60〜65歳の約1000人)に投信購入の理由を聞いたところ、「投資することが楽しい」と答えた人が64・9%と圧倒的に多く、「生活費の足しとして」と答えた投資家はゼロ(!)だった。
本来、このようなニーズならば、複利効果の面で不利な毎月分配型を買う理由はない。たとえば同じグロソブでも、1年決算型もある。
グロソブは販売会社にとって「売りやすい」商品――。投資家はそのことを知っておいてもいい。ある業界関係者はこうつぶやく。「昨年11月の金融商品取引法から、投信が売りにくくなった。その点、グロソブは為替と金利リスクを説明するだけ。われわれも売りやすい」。
グロソブ拡大の背景に、販売会社の残高が増えるほど、取り分が増える信託報酬体系があることはよく知られる。グロソブの信託報酬は税込み毎年1・3%強。「国債に投資対象を絞るなど手間暇がかからないのだから、信託報酬を下げてもいい」との指摘は根強いが、その動きはまだ見られない。
ある投信会社には名前の酷似した三つの毎月分配型ファンドがある。実はそれらのマザーファンドはまったく同じ。違うのは設定日と分配金額、そして販売会社だ。こうした販売会社の都合に合わせて同じファンドを別々に見せかける商品は少なくない。楽天証券経済研究所の山崎元客員研究員は「日本では仲介役にすぎない販売会社が、顧客の購買を実質的に決定している」と指摘する。
グロソブをはじめとした毎月分配型が、これまで日本に根付かなかった金融商品の「長期保有」を広めたことは賞賛に値する。だがその一方で投資家は、もう一度分配金の利用方法を振り返り、自分のニーズに合った商品を選ぶ姿勢が必要だ。
(週刊東洋経済)
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