金融史を学べば、レバレッジ逆回転と市場大混乱は予想できた(1) - 08/11/25 | 14:30
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ―――。金融史に通暁する平山賢一・東京海上アセットマネジメント運用戦略部チーフファンドマネージャーに、サブプライム以降の資産運用のあり方を聞いた。第一回目。
――マーケットは今や「リスク回避」、レバレッジを解消する「デレバレッジ」の時代です。この時代の到来を2003年の時点ですでに予想されていました。
「テコ」の原理を使って、本来持っている資産以上に負債を積み上げて、リスク資産を購入し、リターンを得ようとするのが「レバレッジ」の時代であり、逆にリスクを回避しよう、レバレッジを解消しようとするのが「デレバレッジ」の時代といえます。歴史を見ると両者は繰り返していて、数十年単位で振り子のように振れています。
2003年の時点において、すでに米国を中心に負債が経済拡大のスピート以上に膨らんでおり、2000年から3年間の株価下落と負債との関係をどう考えればよいかなどの問題意識を持っていました。そこで20年くらいかけてやってきたレバレッジの動きから、今度はデレバレッジへと潮目が変わるのではないか、80年代、90年代に相当積み上がった株価の上昇に対して、今後10年、20年は、株式インデックスをベースにすると、株式リターンはインフレ率に負けてしまうのではないか、と考えたわけです。
実際にふたを開けてみると、ABSやMBSといった証券化商品によってさらにレバレッジが膨らむ動きが2003年以降も強まりました。ABSやMBSについては、その時点でも指摘していましたが、その影響は予想以上に大きく、レバレッジの動きが2007年の半ばまで加速することになりました。現在はそれが逆回転の動きにあります。時期は正確ではなかったですが、不可避と予想していたデレバレッジの動きが今、まさに起こっています。
――過去の歴史と現在起こっている事象との間には、どのような類似点があるのでしょう。
今回、デレバレッジの時代に入る時期がずれたということから、歴史をよくよく見直してみると、1929年から1932年までの大きな株価の下落の後には、1937年まで56カ月の株価上昇があったのですね。興味深いことに、この間、私募債が大量発行され、証券化がブームとなっていました。そこまで読んで、レバレッジの時代がまだ5年続くと予想すればもっとよかったのですが・・・。
米国株はその後、1937年から1938年にかけて13カ月の間に再び大暴落を演じます。今回の米国株の下落は昨年の10月からですから、ちょうどこの11月で13カ月になります。「歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む」というマーク・トウェインの言葉がありますが、株価のリズムは今回も同じではないかと考えると、すごくフィットする感じがします。過去の歴史では、ここから各国は保護主義化に向かいます。グローバリズムの見直しの動きが起こっている現在は、ちょうど1938年の状況と符合しているような気がします。
――時代の変遷によって、マーケットの性格やプレイヤーの投資姿勢も変わるのでしょうか。
レバレッジの時代が終わると、機関投資家のポートフォリオや運用態度に3つの”革命”が起こると予想していました。1つ目は「逆利回り革命」です。「利回り革命」とはご承知のとおり、株式運用を配当利回りだけでなく、値上がり益まで含めたトータル・リターンで見ていこうとする運用観の変化です。米国であれば82年から99年、2000年までにPERは14倍から28倍まで上昇したわけです。今度は逆にPERが下がっていくような方向に行くのではないか。それはとりもなおさず、昔起こった「利回り革命」とは逆の現象なのではないかと考えたわけです。つまりPERでは投資判断をできない時代がやって来たということです。
2つ目は、インデックスに勝てばよいという「相対主義」の運用姿勢から、絶対リターンでプラスでないといけないという「絶対収益」への変化が起こる、これを「絶対革命」と私は呼んでいます。つまり、機関投資家の資産運用理論が揺らぐのではないかと考えたわけです。
最後に、会計制度については、今までの「時価会計原理主義」への批判が起こる。時価会計原理主義への批判というのは、2003年当時は”時代に竿を差す”ものだったのですが、このデレバレッジの時代になって、時価会計への見直しが入っているのはご承知の通りです。
――時価会計への見直しが起こると考えた背景には何があったのですか。
この発想は至って簡単で、1920年代と1930年代を参考にしただけなのです。会計の歴史を見てみると、面白いことに大恐慌以前は時価会計でした。しかも、その場で清算してみればどれだけの価値があるかという清算価値基準、解散価値基準会計でした。ところが大恐慌の後になると、「時価会計ではその企業の本質的な業績が読めない」という考えから、簿価会計、原価会計という考え方が中心となりました。清算価値基準というのは、「会社が潰れた時に価値がどれだけあるか」といった銀行家、債権者のための会計ですね。これが株価の大暴落を経て、「もっと投資家を保護しないといけない」「投資家にとって有用な情報をベースにした会計にしよう」ということで、損益計算書を中心に据えた会計へと制度の大革命が起こるわけです。
これが今、われわれが簿記を習うときのベースになる、発生主義会計の考え方です。1940年にペイトンとリトルトンという会計学者によって実現主義会計という概念が出て、手堅く利益を読まなければならないという革命が起こったわけです。ですから、株価の大きな下落の後で、それが再び起こるのではないかと考えたわけです。これも歴史を踏まえると、突拍子もない発想ではないということですね。この後、60年代後半から70年代になると、インフレーション会計という発想が出てきて、また時価会計が注目されます。時価会計の動きは、ディスインフレの時代にいったん沈静化するのですが、その後「なぜこれだけ含み益があるのに評価しないのか」と欲が出てきたのか、最近までの時価会計重視の流れにつながってきています。
――マーケットは今や「リスク回避」、レバレッジを解消する「デレバレッジ」の時代です。この時代の到来を2003年の時点ですでに予想されていました。「テコ」の原理を使って、本来持っている資産以上に負債を積み上げて、リスク資産を購入し、リターンを得ようとするのが「レバレッジ」の時代であり、逆にリスクを回避しよう、レバレッジを解消しようとするのが「デレバレッジ」の時代といえます。歴史を見ると両者は繰り返していて、数十年単位で振り子のように振れています。
2003年の時点において、すでに米国を中心に負債が経済拡大のスピート以上に膨らんでおり、2000年から3年間の株価下落と負債との関係をどう考えればよいかなどの問題意識を持っていました。そこで20年くらいかけてやってきたレバレッジの動きから、今度はデレバレッジへと潮目が変わるのではないか、80年代、90年代に相当積み上がった株価の上昇に対して、今後10年、20年は、株式インデックスをベースにすると、株式リターンはインフレ率に負けてしまうのではないか、と考えたわけです。
実際にふたを開けてみると、ABSやMBSといった証券化商品によってさらにレバレッジが膨らむ動きが2003年以降も強まりました。ABSやMBSについては、その時点でも指摘していましたが、その影響は予想以上に大きく、レバレッジの動きが2007年の半ばまで加速することになりました。現在はそれが逆回転の動きにあります。時期は正確ではなかったですが、不可避と予想していたデレバレッジの動きが今、まさに起こっています。
――過去の歴史と現在起こっている事象との間には、どのような類似点があるのでしょう。
今回、デレバレッジの時代に入る時期がずれたということから、歴史をよくよく見直してみると、1929年から1932年までの大きな株価の下落の後には、1937年まで56カ月の株価上昇があったのですね。興味深いことに、この間、私募債が大量発行され、証券化がブームとなっていました。そこまで読んで、レバレッジの時代がまだ5年続くと予想すればもっとよかったのですが・・・。
米国株はその後、1937年から1938年にかけて13カ月の間に再び大暴落を演じます。今回の米国株の下落は昨年の10月からですから、ちょうどこの11月で13カ月になります。「歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む」というマーク・トウェインの言葉がありますが、株価のリズムは今回も同じではないかと考えると、すごくフィットする感じがします。過去の歴史では、ここから各国は保護主義化に向かいます。グローバリズムの見直しの動きが起こっている現在は、ちょうど1938年の状況と符合しているような気がします。
――時代の変遷によって、マーケットの性格やプレイヤーの投資姿勢も変わるのでしょうか。
レバレッジの時代が終わると、機関投資家のポートフォリオや運用態度に3つの”革命”が起こると予想していました。1つ目は「逆利回り革命」です。「利回り革命」とはご承知のとおり、株式運用を配当利回りだけでなく、値上がり益まで含めたトータル・リターンで見ていこうとする運用観の変化です。米国であれば82年から99年、2000年までにPERは14倍から28倍まで上昇したわけです。今度は逆にPERが下がっていくような方向に行くのではないか。それはとりもなおさず、昔起こった「利回り革命」とは逆の現象なのではないかと考えたわけです。つまりPERでは投資判断をできない時代がやって来たということです。
2つ目は、インデックスに勝てばよいという「相対主義」の運用姿勢から、絶対リターンでプラスでないといけないという「絶対収益」への変化が起こる、これを「絶対革命」と私は呼んでいます。つまり、機関投資家の資産運用理論が揺らぐのではないかと考えたわけです。
最後に、会計制度については、今までの「時価会計原理主義」への批判が起こる。時価会計原理主義への批判というのは、2003年当時は”時代に竿を差す”ものだったのですが、このデレバレッジの時代になって、時価会計への見直しが入っているのはご承知の通りです。
――時価会計への見直しが起こると考えた背景には何があったのですか。
この発想は至って簡単で、1920年代と1930年代を参考にしただけなのです。会計の歴史を見てみると、面白いことに大恐慌以前は時価会計でした。しかも、その場で清算してみればどれだけの価値があるかという清算価値基準、解散価値基準会計でした。ところが大恐慌の後になると、「時価会計ではその企業の本質的な業績が読めない」という考えから、簿価会計、原価会計という考え方が中心となりました。清算価値基準というのは、「会社が潰れた時に価値がどれだけあるか」といった銀行家、債権者のための会計ですね。これが株価の大暴落を経て、「もっと投資家を保護しないといけない」「投資家にとって有用な情報をベースにした会計にしよう」ということで、損益計算書を中心に据えた会計へと制度の大革命が起こるわけです。
これが今、われわれが簿記を習うときのベースになる、発生主義会計の考え方です。1940年にペイトンとリトルトンという会計学者によって実現主義会計という概念が出て、手堅く利益を読まなければならないという革命が起こったわけです。ですから、株価の大きな下落の後で、それが再び起こるのではないかと考えたわけです。これも歴史を踏まえると、突拍子もない発想ではないということですね。この後、60年代後半から70年代になると、インフレーション会計という発想が出てきて、また時価会計が注目されます。時価会計の動きは、ディスインフレの時代にいったん沈静化するのですが、その後「なぜこれだけ含み益があるのに評価しないのか」と欲が出てきたのか、最近までの時価会計重視の流れにつながってきています。
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