書評

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マネーの進化史 ニーアル・ファーガソン著/仙名紀訳 〜考えあぐねる全体史と個々の事件、ケースとの関係 - 10/03/01 | 08:00


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評者 奥村宏 会社学研究家

 今回のサブプライム恐慌のようなことは金融の歴史に無知だったために起こったのだ、と著者はいう。
 スコットランド生まれで、現在ハーバード・ビジネススクールの金融史の教授である著者はまだ40歳代なのだが、これまでたくさんの本を書いており、アメリカのマスコミでも有名なタレントとして知られている。

 この本はイタリアやイギリスの古くからの金融財閥の歴史を興味深く書いているだけでなく、大恐慌や、さらに最近の米LTCMやエンロンの破綻などについても書かれており、これらの歴史を理解することが現在のサブプライム恐慌を理解する手助けになることは確かだ。

 この本が書かれたのはリーマン・ブラザーズが倒産する前だが、ペーパーバック版は2009年に書かれており、その後の状況を反映して書き足している。

 ただ、金融の歴史と経済全体の歴史をどう絡めて理解するのか、これは難しい問題で、著者も考えあぐねているようだ。

 この本では高利貸しから銀行、保険、債券、株式、不動産会社、さらにヘッジファンドなどさまざまな金融業の分野について興味尽きない事件やケースを取り上げている。それが全体として、金融の歴史にどうつながっているのか、さらに他の産業や国家との関係はどうなのか、ということを理解するのは難しい。

 惜しむらくは、事実と異なる表記がいくつかあることだ。たとえば、「JPモルガンとカントリーワイドが、バンク・オブ・アメリカに買収された」という間違いをしている。JPモルガンは、危機に陥ったベアー・スターンズを買収したが、バンカメに買収されてはいない。

 原書はペーパーバック版で安く手に入るので、それを片手に読むことを勧める。

Niall Ferguson
歴史学者。オックスフォード大学ジーザス・カレッジ教授、ハーバード・ビジネススクール教授、スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェロー。1964年スコットランド、グラスゴー生まれ。オックスフォード大学マグダレン・カレッジを卒業後、ドイツ留学、ケンブリッジ大とオックスフォード大での講師を経る。

早川書房 2835円 480ページ

  

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