企業価値を向上させる 退職給付制度の運営 浅岡泰史・本部嵩仁・喜多幸之助著 〜リターン重視からリスク重視へパラダイムシフトを説く - 09/06/08 | 08:00


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評者 ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン会長 高橋 誠

 信用危機・世界同時不況の下、退職給付制度の重要な役割を担う企業年金の昨年度のリターンは2年連続のマイナスとなった。その一方で、国際会計基準への統一化は2年後にさし迫ってきている。

 その時期に、年金業務に長い経験と造詣の深い3人のプロによって、DB(確定給付)企業年金について的確に制度運営を促す格好のガイドブックが書かれた。読者はまずこの本の「結びにかえて」を一読してほしい。著者の退職給付制度、中でもDB企業年金に対する熱い思いと確信が手に取るようにわかる。

 DB企業年金には企業自身に財務リスクがあるのでDC(確定拠出)に移行した企業が少なくない。しかし、著者はむしろDBこそ財務戦略の重要な一翼を担うものであり、企業価値の向上に資するうえで退職給付制度の中核を占めるべきだと考えている。企業は運営にあたって取るリスクと排除するリスクを峻別し、不測の事態に対する方策も考慮しつつ、リターン重視の発想からリスク重視の発想へのパラダイムシフトが必要だと説く。

 本書の基幹を貫くのは書名にもあるように、企業価値の向上である。そのために過去の常識に挑戦し、それを打ち破る年金運営の刷新が必要であり、その際には退職給付制度が重要な「事業体」として、母体企業との合意形成をはかったうえで、制度の運営・管理において再検討が必要となる。

 こうした考え方は、グローバルな競争下で人的資本の充実に向け、より戦略的な年金制度の再構築を図るうえで極めて示唆に富む。

 全世界を飲み込んだ信用危機が先行きどうなるかは、定かではない。しかしむしろ、大幅な市場価格の下落が本書の必要性を強く認識させている。

あさおか・やすちか
ラッセル・インベストメント・エクゼクディブアドバイザー。神戸商科大学卒業。野村総合研究所常務、厚生年金基本連合会常務理事などを経る。

ほんべ・たかひと
ラッセル・インベストメント・アソシエイトディレクター。年金数理人/アクチュアリー。東京工業大学卒業。安田信託銀行などを経る。

きた・こうのすけ
ラッセル・インベストメント・エクゼクディブコンサルタント。京都大学卒業。安田信託銀行などを経る。

中央経済社 3465円 317ページ

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