舞妓はんの言葉――心に「芯」を作る京都花街の教え

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(第2話)舞妓さんのもっとも大切な3つの言葉(3) - 09/01/20 | 09:01

●おたのもうします

 お座敷にでれば、舞妓さんはおもてなしのプロとして見られます。16歳でも17歳でも、京ことばに自信がなくても、芸事の経験が少なくても言い訳はできません。そんな彼女たちにとって、実はこれだけ話せればお座敷が務まるといわれる3つの京言葉があります。それが、先にご紹介した2つの言葉「おおきに」と「すんまへん」、そしてここで紹介する「おたのもうします」です。お礼を言うこと、そして謝ること、それからお願いしますと、相手に対して敬意を払うこと。その場に応じてこの三つの言葉をきちんと使いわけることができれば、プロとして「おもてなし」の第一歩を踏み出せるということです。

 「よろしゅう、おたのもうします」と、舞妓さんたちはよく使います。初めて舞妓さんになった日にも、お祝いにかけつけた周囲の人に「よろしゅう、おたのもうします」と挨拶をします。しっかり見てください、導いてくださいと、扇子をもち、頭を下げる舞妓さんには、プロとしての気品が滲みます。また、自分たちの芸事をお師匠さんやお客に見てもらうときに、言葉として口にすることもあれば、胸の内で「どうぞ、よろしゅう、おたのもうします……」と言葉を反芻しながらお辞儀することもあります。

 プロとして仕事をすることは、責任をもって自分の役割を務めることです。心配をしても自分の能力以上の力を発揮することはできませんし、まして相手がそれに対してどのような評価をしてくださるのかまで差配することはできません。開きなおりではなく、精一杯の技能をお見せするように努力しますので、どうぞよろしくお願いいたしますと、頭を下げるのです。

 いくら立派な技能でも、だれかがその価値を認めてくれてこそ、自分にとって甲斐があるのではないしょうか。舞妓さんたちは「おたのもうします」と言いながら、どのような評価でもそれを自分で受け止め、これから励みますという気構えを自覚するから、凛としてお座敷に立てるのです。
宮川町
京都五花街の1つ、「宮川町」の風景。五花街には、ほかに「祇園甲部」「祇園東」「先斗町(ぽんとちょう)」「上七軒(かみしちけん)」がある。

西尾久美子 西尾久美子(にしお・くみこ)
京都女子大学現代社会学部准教授
京都市下京区で数代続いた米穀商の家に生まれる。京都府立大学女子短期大学部卒業後、大阪ガス株式会社勤務、滋賀大学経済学部を経て、2006年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。同年4月より神戸大学大学院経営学研究科助手、同年10月より神戸大学大学院経営学研究科COE研究員、2008年4月より現職。専門は経営組織論、キャリア論。
著書に『京都花街の経営学』(東洋経済新報社、2007年)がある。

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