続・数学〜その遙かなる風景・日本〜

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録

(第48回)“1/2”リーマン予想(前編)(2) - 09/11/12 | 18:31

 人類の叡智の最先端が挑んでもなお素数探査には想像を絶する壁が立ちはだかっている。そのスーパーコンピューターの威力を持ってしても素数は手強い。12は2×2×3と素因数分解するのは簡単であるが、12347の素因数分解はもはや暗算ではできない(12347は素数である)。もちろんこれくらいの数であれば普通のコンピューターであっという間に答えはだせる。しかし、これが100桁、1000桁の数の素因数分解ならスーパーコンピューターでも途方もない時間がかかる。かるく人間の一生を越える時間が必要となるのである。

●数の硬さの上に現代社会は成り立つ
 数は硬い。巨大な数を砕くには技量と道具と忍耐そして莫大な費用がかかる。現在その「数の硬さ」を利用した技術が情報セキュリティである。インターネット上での秘密保持のための暗号技術の要こそ「数の硬さ」である。硬い数を砕くための厖大な研究の蓄積の上に巨大素数を使った暗号技術が成り立っている。しかし、それとて暫定的技術にすぎない。もし、明日1000桁の数の素因数分解の画期的方法が発見されたならば、現在のネットワーク社会はその根底から一瞬にして崩壊する。本連載で繰り返し述べてきたことであるが、現在のIT技術の根幹は数学によって支えられている。もちろん当分の間、そのような方法は見つからないと考えられている。数の硬さは素数判定や素因数分解の困難さのことである。素数とは気高い孤高の数であり他を簡単には寄せ付けない。たかだか数千年の文明しかもたない人類など足下にも及ばない存在なのだ。それでも人類は素数に魅せられ立ち向かってきた。そしてここ数十年の間に我々は面白いことにその数学が抱える未解明なところを土台にして高度情報化社会を建設してしまった。


桜井進 桜井進(さくらい・すすむ)
1968年山形県生。東京工業大学理学部数学科、同大学院卒業。
sakurAi Science Factory主宰、サイエンスナビゲーター。東京工業大学世界文明センターフェロー。

在学中から塾講師として教壇に立ち数学や物理を楽しく追求する。講師をする傍ら、身近なものや数学者の人間ドラマを通して数学の楽しさや美しさを伝える「サイエンスエンターテインメント」活動を展開。2000年よりスタートした講演は日本全国で反響をび、現在も数学のロマンをナビゲートし続けている。テレビ出演、聞・雑誌などに掲載され今話題となっている。

【番組出演・新聞・雑誌掲載など】
読売新聞科学欄「サイエンス」講演活動掲載、『めざましテレビ』(フジテレビ)密着取材、『銀幕会議』(フジテレビ)『博士の愛した数式』映画紹介、文科省主催「サイエンスラウンジ」、「サイエンスキャバレー」に出演、雑誌『ダヴィンチ』7月号・8月号にて一青窈さんと対談、『たけしの誰でもピカソ』(テレビ東京)「数学で美しくなる」に数学の伝道師として出演中、他多数。

【著書】
数学のリアル』(東京書籍)、『雪月花の数学』(祥伝社)、『感動する!数学』(海竜社)、『超インド式桜井計算ドリル』(アスコム)、『インド式計算暗算ドリル』監修(宝島社)、『実況解説! インド式算術』(PHP研究所)、『2112年9月3日、ドラえもんは本当に誕生する! 』(ソフトバンククリエイティブ)、『数学で美人になる』(マガジンハウス)、『計算しない数学、計算する数学』(共著、技術評論社)、任天堂DS『全脳シリーズvol.02 インド式計算全脳ドリル』、『オトナのための算数・数学やりなおしドリル 』(宝島社)、『天才たちが愛した美しい数式』(PHP研究所)、『数学で宇宙制覇』(海竜社)、『和算式計算ドリル』(PHP研究所)、『江戸の数学教科書』(集英社)、『感動する!数学(文庫)』(PHP研究所)、『数学セミナー増刊 リーマン予想がわかる』(“高校生からわかる――超入門・リーマン予想”を執筆、日本評論社)

【公式Webサイト】
sakurAi Science Factory Web Site http://www.ssfactory.net/

バックナンバー

ライフ一覧へ



東洋経済オンラインは、東京証券取引所・大阪証券取引所・名古屋証券取引所・野村総合研究所・ダウ・ジョーンズ・ジャパン(株)・クォンツ・リサーチ株式会社によって提供される情報を用いて、センティリオン株式会社で作成および運営を行い、情報提供をしております。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。