(第48回)“1/2”リーマン予想(前編)(1) - 09/11/12 | 18:31

桜井進

●超難問リーマン予想が提起されて150年目
リーマン
 150年前、リーマン予想は実に控えめに私たちの目の前に現れた。1859年11月、数学者リーマン(Georg Friedrich Bernhard Riemann、1826.9.17 ドイツBreselenz生―1866.7.20イタリアSelasca没)は、8ページの論文「与えられた数より小さい素数の個数について」の中で次のように述べた。
 実際、この領域内にほぼこれと同じくらい多くの実根があって、しかもそれらの根がすべて実根であることはきわめてたしからしいのである。もちろん、このことについての厳密な証明を得ることが望ましい。私は少しばかり粗雑で成果のでなかった試みの後に、差し当たりこの証明には手をつけないでおくことにした。なぜなら、以下の私の研究の目的にはなくてもよいとおもえたからである。(訳:平林幹人訳、『リーマン予想』、日本評論社、p28 より)
 この中でリーマンは「証明には手をつけないでおくことにした」といっているが150年経った今なおそれは完成していない。これこそが数論の未解決難問「リーマン予想」である。この一文に唯一登場する数が1/2である。

 数学にはこれ以外に難問はいくつも存在する。けっして勘違いしてはならないことは、難問だから価値があることではないということである。リーマン予想の価値は、数学の根底、根源にかかわる内容に他ならない点にこそある。それは「数」である。整数、有理数(分数)、無理数、実数、といった数の基本は「自然数」である。ついでに言うならば、自然数以外の数は人間が勝手につくりあげた人工的数である。
神は自然数を創り、その他の数は人間が作った。(クロネッカー)
 その自然数は分解していくと素数にたどりつく。素数(2,3,5,7,11,13,…)とは、1と自分自身以外に約数をもたないこれ以上分解できない数である。この数の素粒子ともいえる素数は、その定義のシンプルさとは裏腹に最も深遠な謎に満ちた存在であることが二千年以上の探求の結果明らかになった。それは自然数全体の中に素数がどのように出現するかという素数分布の問題である。2,3,5,7,11と最初のうちはテンポよく現れるが、次第にそのテンポがゆっくりになるのが観察される。はじめの1から10までに素数は4つあるの対して、9901から10000までの100個の自然数の中には、9901、9907、9923、9929、9931、9941、9949、9967、9973 の9個しかなくなるというぐあいである。したがって、より大きな素数を探査し発見することは困難を極めることになる。素数は無限にあることは二千以上前に証明されているが、人類が目にした素数はその中のほんのわずかにすぎないのである。その様子は地中深くにある石油探査に人類が叡智を注ぎ込むのと似ている。面白いことに現実は似ているどころではない。それはスーパーコンピューターの存在である。現在の石油探査では人工衛星からの各種波長による探査結果をスーパーコンピューターにかけることでターゲットを絞り込んでいく。そのスーパーコンピューターが素数の発見の担い手でもあるのだ。1980年以降、石油探査用スーパーコンピューターを用いた最大素数探査成功の記録が続いた。2008年にようやく一千万桁をこえる素数の発見がGIMPS(分散型コンピューティングによる素数探査プロジェクト)によってなされたところである。

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