続・数学〜その遙かなる風景・日本〜

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(第28回)近世日本人数学者列伝〜小平邦彦〜(前編)(2) - 08/10/07 | 14:19

 さて、その数学者レファーと深い交友関係をもつことになったのがカナダ出身のフィールズだったわけです。ヨーロッパの最先端、一流の数学者を目の当たりにしたフィールズは数学への熱い思いを胸に抱くようになっていきました。第一次世界大戦はヨーロッパの数学界をも二つに分けることになりました。そんな数学界の危機状況の中、1924年の第7回国際数学者会議はヨーロッパを離れてカナダ、トロント大学で開かれることになったのです。そこで尽力したのがフィールズだったのです。この国際数学者会議開催の成功はフィールズの資金集めのおかげでした。果たしてその資金が残ることになりました。
 当時病に苦しんでいたフィールズはこの剰余金で国際数学賞を創設する夢をもつにいたったのです。ついに1932年、チューリッヒで開催された第9 回国際数学者会議でフィールズの提案は彼の友人たちによって提出され、受け入れられたのです。悲しいことにこの決定の数週間前フィールズは亡くなっていたのでした。フィールズはまさか自分が夢見ていた数学賞に自分の名前がつけられることになろうとは思ってもいなかったでしょう。この第9回国際数学者会議で副議長を務めたのが高木貞治(連載第24回で紹介)でした。こうして第1 回のフィールズ賞が1936年オスロでの第10回国際数学者会議でアールフォースとダグラスに贈られることになったのです。高木貞治はこのときフィールズ賞審査委員に選ばれ受賞者選考にあたりました。

第10回 ICMフィールズ賞受賞者
アールフォース ダグラス
アールフォース(1907-1996)
受賞「被覆面の理論」
ダグラス(1897-1965)
受賞「プラトー問題の解決」

第11回 ICMフィールズ賞受賞者
セルバーグ シュワルツ
セルバーグ(1917-2007)
受賞「素数定理の初等的証明」
シュワルツ(1915-2002)
受賞「超関数の理論」

 このように時代の宿命の中で創設されたフィールズ賞はまさに世界中の数学者の協力でつくられました。そこに日本人が関わっていたことは私たちにとって大きな誇りであるといえるでしょう。奇遇にもノーベルもフィールズも一生独身で通し、子孫がいませんでした。しかし、彼らの遺産はその後の人類に受け継がれて、人類の進歩に貢献してきたのです。

●凄いのが来るぞ

 小平邦彦は1935年、東京帝国大学数学科に入学しました。小平が東大に入学したのは数学者彌永昌吉(1906.2006)が東大で教職についたときでした。彌永はまわりから今度東大の数学教室に「小平という凄いやつが来るぞ」と聞かされたといいます。高木貞治の微分積分学の演習で、圧倒的な数学の実力を見せつけていたのが学生の小平邦彦でした。その小平は学生時代に処女論文を書いています。
 数学科を卒業した小平は、東大の物理学科に入りなおしここも卒業しています。その後、東京文理科大学助教授を経て、1944年に東京大学物理学科助教授になり、数学上の業績をあげていきました。1949年、プリンストン高級研究所に招聘され、以降18年間、ジョーンズホプキンス大学、プリンストン大学、ハーバード大学、スタンフォード大学で研究を続けることになり、そして1954年フィールズ賞を受賞することになったのでした。

 フィールズ賞がノーベル賞と異なる点に、人物に対して与えられることがあります。ノーベル賞は研究に対して与えられるので何度も受賞することができますが、フィールズ賞は一生に一度だけしか与えられないのです。はたしてフィールズ賞受賞者は受賞後も第一線で活躍するケースが多いのです。まさにそれを見越して与えられるのがフィールズ賞といえます。小平邦彦も例外ではなく、フィールズ受賞後も日本の数学界をリードしていくことになったのでした。
桜井進 桜井進(さくらい・すすむ)
1968年山形県生。東京工業大学理学部数学科、同大学院卒業。
sakurAi Science Factory主宰、サイエンスナビゲーター。東京工業大学世界文明センターフェロー。

在学中から塾講師として教壇に立ち数学や物理を楽しく追求する。講師をする傍ら、身近なものや数学者の人間ドラマを通して数学の楽しさや美しさを伝える「サイエンスエンター テインメント」活動を展開。2000年よりスタートした講演は日本全国で反響をび、現在も数学のロマンをナビゲートし続けている。テレビ出演、聞・雑誌などに掲載され今話題となっている。

【番組出演・新聞・雑誌掲載など】
読売新聞科学欄「サイエンス」講演活動掲載、『めざましテレビ』(フジテレビ)密着取材、『銀幕会議』(フジテレビ)『博士の愛した数式』映画紹介、文科省主催「サイエンスラウンジ」、「サイエン スキャバレー」に出演、雑誌『ダヴィンチ』7月号・8月号にて一青窈さんと対談、『たけしの誰でもピカソ』(テレビ東京)「数学で美しくなる」に数学の伝道師として出演中、他多数。

【著書】
数学のリアル』(東京書籍)、『雪月花の数学』(祥伝社)、『感動する!数学』(海竜社)、『超インド式桜井計算ドリル』(アスコム)、『インド式計算暗算ドリル』監修(宝島社)、『実況解説!インド式算術』(PHP研究所)、『2112年9月3日、ドラえもんは本当に誕生する!』(ソフトバンククリエイティブ)、『数学で美人になる』(マガジンハウス)、『計算しない数学、計算する数学』(共著、技術評論社)、『オトナのための算数・数学やりなおしドリル 』(宝島社)、『天才たちが愛した美しい数式』(PHP研究所)、『数学で宇宙制覇』(海竜社)、任天堂DS『全脳シリーズvol.02 桜井進先生監修 インド式計算全脳ドリル

【公式Webサイト】
sakurAi Science Factory Web Site http://www.ssfactory.net/

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