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第7回東洋経済CSRセミナー 就活生をターゲットにしたCSR活動ってアリ?

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2016年5月19日



 2016年1月21日に「第7回東洋経済CSRセミナー 就活生をターゲットにしたCSR活動ってアリ?」を開催した。参加者は82名だった。今回はその模様を報告する。

1.講演
2.パネルディスカッション

■講演
イマドキ就活生の会社の選び方

 就活生の企業選びの有力な情報として近年、注目されているのが「CSR(企業の社会的責任)」です。企業もCSR報告書を会社案内の代わりに配布するケースが増えています。「CSR報告書やCSRサイトの最大の利用者は学生」と公言する企業も少なくありません。
 
 ただ、学生たちがよく見る情報は有給休暇取得率、新卒3年後定着率(離職率)、育児休業取得、女性の活躍、福利厚生制度といった「働きやすさ」に偏っているようです。一方で学生時代に社会活動をがんばってきた学生たちも一定数存在し、企業の社会貢献活動などのCSR活動を就職先の評価軸とする動きも出始めています。

 そこで、今回はステークホルダーのひとつとして学生を対象に、どのようなCSR活動や情報開示をしていけばよいのか、現在の大学生の特徴や就活への取り組み方とあわせて考えました。

 まず、前半の講演では、東洋経済新報社「就職四季報プラスワン」編集長 田宮寛之がイマドキ就活生の会社の選び方というテーマで最近の学生の特徴と最新の就職活動の進め方についてお話しました。

【講演者】
田宮 寛之(東洋経済新報社「就職四季報プラスワン」編集長)
=敬称略、役職は2016年1月21日時点

ゆとり教育と学習指導要領改定が今の学生に大きく影響

 私は毎年80回ほど大学に出向いて就職に関するお話をしています。本日はそうした経験も踏まえてお話したいと思います。

 まずは、現在の大学3年生の学生はどのような人たちなのか、そして彼らが育ってきた社会環境がどうだったのかについてご説明します。

 今年の就活生は1994年(平成6年)生まれが中心です。同世代は122万人います。ちなみに団塊世代(1947~1949年生まれ)は毎年約270万人、団塊ジュニア(1971~1974年生まれ)も約200万人ずつ存在します。これに比べると圧倒的に人数が少なく競争などにもまれていません。

 私が公的資料等から計算したところ、就活生の父親世代はだいたい52歳、母親世代が49.5歳です。彼らの大学入学は2013年、高校入学が2010年、中学入学が2007年、小学校入学が2001年です。この各学校の入学年度もこの世代の特徴に大きく影響しています。

 「大学進学」で見ると父親世代である1981年入学は大学数は451校で進学率が25.7%と全体の4分の1が大学に進学する時代でした。それが現在の就活生が入学した2013年は大学数は782校で進学率は49.9%、短大を入れると60%となります。ほぼ大学全入時代で、競争を好まないという傾向につながっています。

 2002年に開始した「ゆとり教育」が彼らのスタイルに影響しているとよく言われます。ただ、私はそれよりも1989年の「学習指導要領」改定がより大きく影響していると思います。このときに成績が「相対評価」から「絶対評価」になり、評価軸が「知識や技能の獲得」から「学習意欲や態度を重視」に変わりました。

 この後、自分だけではなく周りを大切にするという意識が強くなり、「社会貢献」に興味を持つ学生が増えたように思います。こうした教育方針の変更がこの世代に影響しているのです。

現在の大学3年生は安定が一番

 今の学生は大学の授業への出席率は高いですが、これも「学習指導要領」改定で「学習意欲や態度を重視する」ようになった影響が大きいと思います。
 また、AO入試などの拡大で一般入試を受けない学生も増えています。そのため、特定の日に試験を受ける従来型の受験生が減り、「一発勝負に弱い」または「一発勝負を嫌う学生」が多くなりました。

 そのため、筆記試験や面接試験といった就職活動にも弱いです。今の時代では当たり前の2つ、3つ会社を落ちただけで心が折れてしまう学生もいます。
 不況の中で育った学生が多く、人生を悲観的に見る傾向があり、自分に力をつけて生き残る必要があると考えスキルアップを重視しています。

 家庭内でも私と同じ世代(50代)が若かった頃とはかなり異なり「親と仲良し」という学生が多いです。特に母親と仲がよいようです。あるアンケートによると進路について相談するのは第1位は母親で第2位が友達で、第3位が父親となっています。
 母親と仲がいい男子のことを「ママっ子男子」と言いますが、男女を問わず母親と仲がいいです。他にも祖父母等とも仲良しな子が多いです。

 ただ、「昭和的」な面も持ち合わせています。たとえば、「飲み会」、「社員旅行」、「社内運動会」などへの興味は高いです。しかし、注意も必要です。彼らが入社しても昔のように強制参加はダメで、「帰宅自由」といった束縛感を薄めることでより人気が出ます。

 さて、今の学生は「愛する人と結婚して子供ができ幸せに暮らす」ことがライフスタイルのなかで最大のポイントとなっています。「安定志向」が強いことは間違いなさそうです。

新聞は読んでいないがCSRレポートは読んでいるという就活生も

 続いて現在の就職活動についてお話していきます。文化放送キャリアパートナーズと東洋経済新報社の調査による「大学生が就職したい会社ベスト10」では金融機関が上位に多いです。意外ですが、人気が高いイメージの強い外資系企業などは入っていません。

 このように学生の評価は偏っています。金融機関はもちろん悪い職場ではありませんが、ここ20年間でつぶれた金融関係の会社が多いのも事実です。しかし、そうしたことは学生はあまり意識していないようです。一般的に会社を知らないということも言えるかもしれません。

 世代人口は120万人程度で、そのうち大学生は60万人で就活をするのが42万人程度です。よく新聞などに掲載されている「内定率」はこの42万人がベースになっています。
 
 今年の就職活動は3月が解禁で6月から選考開始です。ここで言う「解禁」は選考開始のための広報解禁を意味します。「ホームページを開設したり説明会を始めてもいいですよ」ということです。「選考」は面接のことを言います。筆記試験は「選考」とは言いませんのでご注意ください。

 実質的にはすでにスタートしています。まずは12月から2月にかけてインターンシップが行われます。最近は「ワンデーインターンシップ」という1日で終わるインターンシップが主流です。会社説明と工場見学などを行い、一次選考を兼ねている場合もあります。

 本格的なスタートは3月から会社説明会を開催し、4月に選考も行うという流れです。ただし、就職協定の関係もあり大手を中心に6月からの選考枠をメインとして用意している企業も多くあります。

 学生が使う就活ツールは、「就職サイト」が中心です。紙媒体では『就職四季報』が使われます。同じ企業情報を掲載している『会社四季報』を使う学生は残念ながらあまりいません。新聞も一般的には読まれていません。

 一方で最近はCSRレポートなどを読む学生が増えています。「CSRレポートを読んでいた先輩から勧められた」、「就活本に書いてあった」などがきっかけのようです。
 ただ、こういう学生はいわゆる上位校の学生が多いです。こういうものを読みこなすには一定以上の学力も必要になると思います。

就職情報誌に載っていないCSR情報が求められる時代に

 しかし、学生がCSRレポートのすみずみまで読んでいるわけではありません。主に読まれるのは働きやすさや雇用関係が中心です。

 CSRレポートではありませんが、弊社の 『CSR企業総覧』では「雇用・人材活用編」の情報を学生はよく見ています。しかし、環境関係などの情報はあまり見られていません。学生の利用は「働きやすさ」の情報に偏っていると思います。

 先日、学生向けセミナーで質問があったのが、「会社全体の平均年齢でなく、年齢別の分布を知りたい」でした。この情報を掲載している『CSR企業総覧』を勧めました。

 他にも「障害者雇用」について質問を受けたこともあります。見た目はまったくわからない女子学生から「私は障害があり、障害者雇用に積極的な会社で働きたい」ということでした。こうした情報は『就職四季報』には掲載していませんのでCSRレポートや『CSR企業総覧』が必須となります。

 就活生がもっとも注目する「3年後離職率」は、『就職四季報』では未回答も多いです。一方で『CSR企業総覧』では掲載されていることもあります。CSRの開示情報としても新卒者の定着率は求められていますので各企業は自主的に開示する必要があるように感じています。

 このようにこれまで開示があまりなかった雇用情報に興味を持っている学生が増えていることは間違いなく、CSRレポートなどへの期待も高まっています。

 最後に就職情報としてのCSR情報ではどういった情報が求められているのかお話します。CSR情報として注目度が高いのは「ボランティア関連情報」だと思います。学生はボランティアに強い興味を持っています。大学でもボランティアサークルが盛んです。企業の情報開示でもボランティア活動に関する開示を充実することをお勧しめます。

 他にも『CSR企業総覧』に掲載している「インセンティブ向上のための諸制度」などにも学生は興味を持っています。こうした情報を各社のWebサイトで出していくとよいでしょう。特に諸制度を使ってスキルアップをしたといった先輩の具体的な事例を充実させると効果的だと思います。

 最近の学生はCSRへの総合的な理解は十分ではありませんが「CSRが進んでいる企業はかっこいい」と思っています。逆にCSRを進めていない企業は「遅れている」というイメージも持ちます。
 私はCSRの専門家ではありませんが、各社が積極的にCSR活動を進めることはイメージ戦略にもつながり、学生の評価も高くなるように感じています。

質疑応答

Q:学生が興味のあるボランティアはどのような内容なのでしょうか?
A:身も蓋もありませんが、「見栄えのよいもの」に興味を持つ学生は多いです。東日本大震災の復興支援や海外に行くような内容を学生は好むようです。

Q:採用ページとCSRページに同じ雇用関連の情報を載せておいた方がよいのでしょうか?
A:意識が高い学生はCSRページにあるから読むというケースもあります。あまり読まれていない情報を中心に見て優越感を持っていることも多いです。このような学生は採用情報を読まないことも多いです。CSRページにも採用情報を掲載するかリンクなどをしておいた方がよいです。

Q:学生はIR情報を見ているのでしょうか?
A:会計情報などはわからない学生も多くあまり読まれていません。ただ単に情報を出しているだけではまず見られません。IR情報を噛み砕いて開示することが大切です。


■パネルディスカッション
「就活生向けのCSR活動・開示情報について考えよう」

 後半は、パネルディスカッションを行い、「就活生向けのCSR活動・開示情報のあり方」などについて議論した。

【パネリスト】
稲葉 哲治「『エシカル男子の会』をつくる会」代表・人事コンサルタント)
武石 博勝コネクシオ株式会社総務部コンプライアンス推進課課長)
●田宮 寛之(東洋経済新報社「就職四季報プラスワン」編集長)

【モデレーター】
●岸本 吉浩(東洋経済新報社『CSR企業総覧』編集長)
=敬称略、社名・役職は2016年1月21日時点

社会貢献意識の高いピュアな学生が多い

 ――最近の学生はどのような傾向がありますか?

■稲葉:

  最近、大学生のボランティアサークルが非常に盛んです。社会貢献を行うことが「かっこいいとか楽しい」という学生が増えています。国際交流や復興支援、地域おこしなどで若者会議の開催といったこともあります。

 今の学生は「ゆとりネイティブ」と言われる世代ですが、優秀な学生も多くいます。私が学生団体などでよく接しているのは、国際交流やCSRに興味があり比較的意識が高い層と言えるかもしれませんが、彼らは全体的にプレゼンテーション技術が高いなど優秀です。また、語学力が高く海外経験も豊富でデジタルネイティブでデジタル情報も使いこなします。

 ただ、海外の情報収集には積極的なのですが、受け身の接触が多いように思います。逆にリアルな接点が比較的少なく「つながりへの飢餓感」があります。全体的にピュアでまじめな若者が多いですが、競争を苦手とするという特徴もあるようです。

 彼らは社会活動に接することが多く、また根がピュアなため巨大企業等を敵視するケースもあります。企業のCSR情報がきちんと伝わっていない可能性も考えられます。企業側からも学生や若い世代に積極的に歩みよっていく必要があるかもしれません。

――コネクシオさんはどのようなCSR活動を進めていますか?

武石
 当社は主にドコモショップなどの携帯電話の販売代理店を運営しています。2014年度の売上高は2,829億円の東証1部上場企業です。「コネクシオ」という社名はラテン語の「絆」を語源としていて、2013年10月に社名変更しました。

 近年、「働き方改善プロジェクト」といった取り組みを進め、残業時間の削減や男性の育児休業取得率向上などで成果が出始めています。こうした点が評価され、厚生労働省主催の「イクメン企業アワード2015」で特別奨励賞をいただきました。
 社会貢献活動としては、当社の事業に関係する活動を行っていきたいと考えています。現在は主に以下の3つの活動を行っています。

 まず初めに「フィルタリングサービス」の提供です。携帯電話を商品として販売するだけではなく、保護者の方を対象として有害サイトへのアクセスを制限する「フィルタリングサービス」のご案内を積極的に進めています。

 2つ目は「電話教室」の開催です。高齢者のお客様の中には「スマートフォンは難しくて使えない」と考えている方が多くいらっしゃいます。私たちは、店舗内での電話教室や地域の公民館等を利用した出張型の電話教室を無償で開催し、スマートフォンをもっと便利に、安心・安全にお使いしていただけるよう、取り組みを推進しています。

 3つ目は小学生の子どもたちを対象にした「職業体験」の実施です。ドコモショップでのショップスタッフの職業体験を通じて、お客様へのご挨拶や、スマートフォン(展示品)拭き、お茶配り、欲しいスマートフォンのお絵かきなどを行っています。参加した子どもたちからは「社会の役に立ち楽しかった」と好評であったため、子どもたちの成長に意義があると考え、これからも継続していく予定です。
 これらの活動はCSR報告書にもまとめています。

 他に従業員が主体的に部署単位でドコモショップや本社・支社の周りを清掃するなどのボランティア活動も行っています。

必要な情報を届けるための工夫が必要

 ――各社の社会貢献活動を大学生へアピールするにはどうすればよいでしょうか?

稲葉
 私が学生や最近社会人になった若者に行ったアンケートでは75%(回答数57人)が「就職活動で社会貢献活動などCSR活動を気にする」と回答しています。

 ただ、母集団は学生団体など社会活動を行っている学生が多いので逆に「20%が気にしていない」というのは若干低いと思いました。企業が行っているCSR活動にピンときていない可能性もあるようです。一方、CSR情報の中で働きやすさのデータを気にするという面は強そうです。

 さて、実際に学生にアピールするにはやり方にも注意が必要です。よくあるのが学生団体に協賛してお金を出すという話ですが、それで「会社への好感度が高くなる」とか「その会社に入社したくなる」かというと微妙です。

 ただし、「アースデー」などのイベントで社員と一緒に活動を行うと会社への好感度が高くなり、興味を持つケースもあります。実際にこうした経験でその会社に入ったという事例も知っています。一方で企業は「社会貢献に興味のある学生」ばかりでは困るという意識も強いと思います。

田宮
 
私もそう思います。企業の目的は利益を出すことなので「社会貢献」ばかり言う学生は、たとえ優秀でも採用となると少し躊躇する可能性が高いです。面接で「ボランティアをやっていた」ことばかり言う学生には面接官は引いてしまいます。

 ボランティアは貴重な経験で悪いことではありませんが、仕事としては実現しにくい面もあります。仕事と社会貢献のバランスの兼ね合いを教えてあげることは社会人にとって大事なことかもしれません。

 企業が学生と一緒に行うということであれば、インターンシップで社会貢献活動を一緒にやってみると学生の性格などを見ることができていいかもしれません。たとえば、子どもと接する教育現場や介護施設などでインターンシップ兼ボランティアなどを行うのはいいのではないかと思います。

■武石:
 当社は学生の就職活動に対しては、CSR活動の情報を掲載した「CSR報告書」を会社説明会で配布しています。
 現在、印刷したCSR報告書の7割強は学生向けに配布しています。全国850の大学・短大のキャリアセンター等にも送っていますが、残念ながら大学からの反応はほとんどないものの、配布している学生からは好評で、ご両親への会社説明にも活用してもらっています。

 当社の事業に関係する活動を学生向けにも提供していきたいのですが、お客様の顧客情報保護などの問題もあり、なかなか実現は難しい状況です。今後、引き続き検討していきたいと思います。

まずは目先の仕事をしっかりこなしてから

――社会貢献やCSRをしたいという学生は会社でどのような活躍ができるでしょうか?

■稲葉:

 新入社員では、「CSRを希望する学生」でもまず本業で経験を積む必要があると思います。もちろん、会社は意識が高い彼らを将来幅広く伸ばしていく必要はあります。 
 しかし、まずは会社にいることの意味をしっかり教えることが大切です。そして、自分がかかわる仕事の意味も考えていかせる。そして数年経ち、会社のことをある程度理解してから、それでもCSR部署等を希望するのであれば、やってもらえばいいと思います。

 私は本業以外の仕事を持つ「パラレルキャリア」とか「ハイブリッドキャリア」ということをよく言っていますが、一般にも徐々に広がりつつあるようです。会社はこういう生き方も尊重することが大切です。個人にとっても能力を高めていくことでスキルアップになります。

■田宮:
 企業は稼ぐことが目的ですので、私個人的にはあまりCSRに興味があるような学生は採用したくないです(笑)。ただ、こういう気持ちを持った社員は社内の多様性を持たせるという意味で重要な存在だと思います。もちろん会社は「社会貢献意識」が高い彼らを活用していくことも考えていくべきでしょう。

 ただ、社会貢献を仕事でやろうとするのではなく、プライベートでやってもいいのではないでしょうか。仕事と社会貢献は人生として両立するということも考えていくといいのかもしれません。

■武石:
 CSR部署を希望するような方はボランティア活動を率先してやってきたような方が多いと思います。社会ニーズを知る能力が高かったり、人としての感度が高かったり、チームワークが良かったりと将来的に幅広く活躍できる可能性は高いと思います。

 しかし、まずはさまざまな職務を担当し、仕事を通じて社会に触れ合い社会からの要請を詳しく知り、そこからどの道に進みたいか考えた方がよいでしょう。

 当社は多くの部署に社会貢献の意識の高い社員がおります。自主的に知的障害者施設でパソコン教室の開催や、塾に行けない子どもたちのために土曜日に学校に出向いて勉強を教えるといった活動をしています。
 こうした活動は当社事業との関係性は低いですが、社会と当社を結びつけるという効果があると思います。

 現在、実際に行っている社員はもともと興味があったかどうかはわかりませんが、周りの先輩から影響を受けるというケースもあるようです。当社は田宮さんがおっしゃるような仕事とプライベートでの社会貢献を両立できる職場と言えるのかもしれません。
 
■稲葉:
 コネクシオさんの活動は就職活動へのアピールになると思います。こういう社外と関係のある社員がリクルーターになれば理解も深まるのではないでしょうか。
 
 学生は仕事をしながら社外で社会貢献を行うという選択肢が意外に頭にありません。社員の取り組みを紹介することで多様なライフスタイル実現へのアピールになると思います。

 外部の変化は早いですから、今の社会の動きを会社の中に取り込むことは今後の企業活動に欠かせません。社会センサーの高い学生の可能性をつぶさずうまく活用することが将来の企業の発展にもつながると思います。

CSR情報の見方を大学のキャリア教育で進めていくべき

――就職向けのCSR情報開示をどのように考えますか?

■武石:
 CSR報告書のメインターゲットは当初はマルチステークホルダーだったのですが、実際は大半が学生向けだと気がつきました。
 
 しかし、CSR報告書を学生向けに提供できていないのが現状です。採用担当者は、当社の働きやすさを懸命にアピールしていますので、労働時間や有給休暇などはきちんと開示するようにしています。

  現在、学生向けに会社案内は配布していないため、CSR報告書のみとなっております。今後は学生向けの情報発信を、充実していきたいと思います。

■稲葉:
 学生の興味という点では、「働きやすさ」などになるのですが、私はそこに偏ることは問題だと思います。環境問題や人権問題も開示して学生もそれを受け止める必要があります。

 学生に行ったアンケートで見るとCSR報告書は細かくは読まれていないようです。レポートを作り込むだけでなく、学生と接触し説明していくことも大切ではないかと思います。

■田宮:
 各社のCSR情報は充実してきました。ただ、この情報をどう見ればいいのかよくわからない学生が多いと思います。
 私は大学のキャリア教育でもっとCSRについて教えていく必要があると思います。

 CSRに関する内容を大学の授業に入れて企業のCSR担当者などが積極的に話していくとよいのではないでしょうか。

――今後、企業は学生とどのように付き合っていくとよいでしょうか?

■稲葉:
 企業には学生からのアプローチも多いと思います。たいへんでしょうが企業側は丁寧に対応していただければと思います。

■武石:
 学生に限りませんがステークホルダーとの関係は丁寧に行っていきたいと思います。学生のニーズを掴み、自社のCSRの取り組みに生かしていくことを目指します。

■田宮:

 多くの学生団体が多くありますが、そうした団体と一緒にやっていくことを少しずつ考えていくとよいのではないかと思います。

――どうもありがとうございました。

今回のセミナーを終えて

 ここ数年、CSR情報を就職活動に利用しようという動きがいわゆる上位校を中心に広がっているように感じます。いくつかの内定先から1つを選ぶ際に最後の判断基準をCSRにするという学生も出てきているという話も聞くようになりました。

 CSRを基準にして会社を選ぶところまではいっていないようですが、学生たちの基準が大きく変わりつつあることは感じます。こうした傾向はソーシャルな意識を持つピュアな若者が増えているという時代の流れが影響しているのかもしれません。

 新しい感性を持った若者が組織に入ることで企業の新陳代謝が進み、よりオープンで誠実な会社に進化していく可能性も高そうです。

※次回の第8回セミナーは2016年5月23日に開催します。
 お申し込みは下記画像をクリックしてください。
CSR seminar 8

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