環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

 グリーンリポーティングフォーラム代表
審査委員 國部克彦

  今回の応募企業数は、環境報告書賞が78社、サイトレポート賞が37社、公共部門賞が45社、サステナビリティ報告書賞が197社あり、合計で357社であった。環境報告書からサステナビリティ報告書への移行が一層進んでいることが示された。

環境報告書賞:講評

 環境報告書賞では、リコーグループ「最優秀賞」となった。リコーグループは、環境経営への会社のビジョンが明確であり、長期的視点が示されていること、環境経営の目標と結果の管理および指標化が進んでいること、サプライチェーン重視などの新しい方向性にも力を入れていることなどが評価され、2009年(第12回)に続いての4度目の最優秀賞受賞となった。

 「優秀賞」日本製紙グループ本社で、森林調達が避けられない企業として本業を通して環境に取り組んでいることがよくわかる報告書であること、情報量も充実しており、ライフサイクルの思考が取り入れられていることなどが評価された。

  「優良賞」は、味の素グループ小松製作所生活協同組合コープながの日本興亜損害保険本田技研工業の5社が受賞した。味の素グループは目標を改訂して新しい方向性が打ち出されていることや本業を通して世界の問題に取り組もうとする姿勢が、 小松製作所はコンパクトに必要な要件がまとまっており誠実さが感じられる報告書である点が、生活協同組合コープながのは生協らしさがよく出ていて、ともに取り組もうというメッセージ性に富んでいる点が、日本興亜損害保険はCO2の見える化を進めておりバリューチェーンを意識している点が、本田技研工業は全体に良くまとまっており、製品ごとのCO2低減目標や海外を重視した報告姿勢が、それぞれ高く評価されての受賞となった。

  「サイトレポート賞」三菱樹脂平塚工場ルネサス山形セミコンダクタが受賞した。三菱樹脂平塚工場はマイナス情報も開示している点や地域社会とのコミュニケーション事例が記述されている点が、ルネサス山形セミコンダクタは全体として丁寧な報告書で外部とのコミュニケーション活動や環境教育などの開示内容が評価されての受賞となった。

 「公共部門賞」千葉大学三重大学が受賞した。千葉大学は学生が主体的に参加している活動がわかりやすく開示されており、質量ともに優れていること、三重大学はカーボンフリー大学などの環境保全への大学の姿勢が明確であること、企業との意見交換に基づく指摘事項を反映していることなどが評価されての受賞となった。

サステナビリティ報告書賞:講評

 サステナビリティ報告書賞では、富士ゼロックス「最優秀賞」となった。富士ゼロックスは、CSR経営のフレームワークが確立されておりCSRと経営の統合度が高いこと、冊子とウェブのバランスがとれていて読みやすく、網羅性と透明性の点でも高い評価を受け、2010年(第13回)に続いて2度目の最優秀賞受賞となった。「優秀賞」には住友金属鉱山東芝が選ばれた。住友金属鉱山は人権や労働関係に関する情報開示に優れており、従業員が参加する形での報告書作りも高く評価された。東芝はISO26000をベースにしながら自社のKPIを確立してCSRマネジメントを運営し、体系的な情報開示を行っていることが高く評価された。

 「優良賞」には、大阪ガス大林組セブン&アイ・ホールディングス第一三共帝人日立製作所三井物産リヴァックスが選ばれた。大阪ガスは報告書で重視しているところが明確になっており経営指標化されていることが、大林組はCSRの4つの重点課題についてPDCAに沿った情報開示をしていることが、セブン&アイ・ホールディングスはCSRマネジメントの体制がしっかり構築されており目標と実績の管理も明確であることが、第一三共は重点項目を絞って開示していることや社会貢献の情報開示が充実していことが、それぞれ評価されての受賞となった。帝人は目標と実績の関係を詳細に開示していることと、ステイクホルダーダイアローグの情報開示内容が充実していることが、日立製作所はCSR戦略・ビジョンが明確であることとCSR指標に関するデータが充実していることが、三井物産は人権・環境・コミュニティ参画・消費者課題の3つの視点から事業分野別に重点課題を識別して報告していることが、リヴァックスは廃棄物処理事業者としての目指すべきCSRを打ち出した積極的な情報開示を行っていることが、それぞれ評価されての優良賞の受賞となった。最後に、武田薬品工業は、前年の統合レポーティングのフレームワークをさらに進展させた優れた報告書として「特別賞」の受賞となった。

 今回の報告書では東日本大震災関連、原子力発電所事故関連の情報開示も注目された。多くの企業が東日本大震災の被害や支援状況に対して積極的な情報開示を行っていたことは評価された。その一方で、原子力関係や放射能汚染については十分な開示が行われていないのではないかという指摘もあった。このような問題こそ、ステイクホルダーと積極的に意見交換を行って情報開示を行うことが、サステナビリティ情報開示にとって、本質的に重要であると考える。

 また今回の報告書は、ISO26000の影響が前年よりも強くみられることも特徴であった。ISO26000を一つの指針として活用し、重点分野を特定して、CSR経営と情報開示を行う企業が増加しており、これは経営戦略としてCSR活動を行う場合の重要な方向性であると思われる。ただし、CSRの目標や実績については、KPI化されている事例はまだ少数で、このあたりが統合レポーティングへの展開とあわせて今後の課題と考えられる。

第15回記念 東洋経済新報社特別奨励賞:講評

                                                                 審査委員 野津滋

 本賞が15回目を迎えたことを記念して特設した特別奨励賞の「新エネルギー政策部門賞」には、「エコ・ポジティブ・カンパニー」としての企業理念を掲げ、太陽光発電をはじめ再生可能エネルギーへの取り組みをコア事業と位置づけているシャープが、同じく「省エネ推進部門賞」には生産工程において重層的省エネに取り組み、製品においても住宅用や事務所・工場用にそれぞれ省エネ機能を強化したガラスに重点を置いている旭硝子がそれぞれ受賞した。