環境報告書賞 サステナビリティ報告書賞

 グリーンリポーティングフォーラム代表
審査委員 國部克彦

  今年度の応募総数は413点で、その内訳は環境報告書賞105点、サイトレポート賞47点、公共部門賞42点、サステナビリティ報告書賞219点であった。昨年に比べて、合計で50社も応募企業数が増加し、環境やCSRへの関心の高さが感じられる。

環境報告書賞:講評

 環境報告書賞最優秀賞は、東芝グループが受賞した。東芝グループは2050年のビジョンが明確に書かれており、そのためのアプローチも具体的でデータ開示の質も優れているとして最も高い評価を受けた。

 優秀賞は新日本製鐵と日本製紙グループ本社が受賞した。新日本製鐵はグローバルかつ長期的な視点から積極的にCO2削減のための方法と活動を説明している点が、日本製紙グループ本社は事業活動と環境の関係を軸にして、原料調達にも責任を持つという視点で丁寧に説明している点が、それぞれ高く評価された。

 優良賞は、味の素グループ、九州電力、シャープ、大栄(旧大栄衛生)、成田国際空港、本田技研工業の6社が受賞した。味の素グループは事業活動と深く関連する生態系・生物多様性面での開示が充実している点が、九州電力は各活動についての目標が明確で説明も丁寧であり、社員の活動も巻き込んだ報告書である点が、シャープはWEBとの連携で頁数を減らしにもかかわらず、目標と実績をはじめ重要な情報は明確かつ分かりやすく報告している点が、大栄は中小規模の企業ながら地域に密着したコミュニケーション重視の報告書を作成している点が、成田国際空港は空港の環境負荷と保全活動という一般には馴染みのうすいテーマを分かりやすく開示している点が、本田技研工業はグローバルな取り組みと国内の取り組みの双方が充実していること、職能別に分かりやすく説明している点が、それぞれ高く評価された。

 サイトレポート賞は、三菱樹脂の平塚工場と矢崎部品の栃木工場が受賞した。三菱樹脂平塚工場の報告書は環境保全活動の目標・実績・評価が明確で、リスク管理に重点を置いていることをうまく伝えている点が、矢崎部品栃木工場は環境マネジメントのPDCAを忠実に反映した報告書で、具体的な改善成果を報告している点が、それぞれ評価された。

 公共部門賞は、宇宙航空研究開発機構と名古屋大学が受賞した。宇宙航空研究開発機構は、この組織の活動が環境とどのように関わっているのかが分かりやすく開示されている点が、名古屋大学は環境保全活動全般に対して包括的で丁寧な情報開示をしていることに加えて、自己評価委員会による報告もあわせて実施している点が、それぞれ評価された。

 また今年度から、昨年度の最優秀賞、優秀賞受賞企業は特別賞候補として審査することになったが、その結果、リコーグループが環境情報データの開示において、バランスのとれた加工がほどこされ、活動が分かりやすく報告されているとして、特別賞となった。

サステナビリティ報告書賞:講評

 サステナビリティ報告書賞については、最優秀賞は富士ゼロックスが受賞した。富士ゼロックスはCSRの推進において幅広く定量的な目標を定めて実績を開示している点や中国やフィリピンなどでの海外での貢献についての充実した記述が高く評価された。

 優秀賞は、積水化学工業とセブン&アイ・ホールディングスが受賞した。積水化学工業は経営計画の中にCSR活動が織り込まれ、重要ポイントを絞りこんだ報告を行っている点が、セブン&アイ・ホールディングスは、報告書の作成プロセスを開示していることに加えて、ホールディングスとしての開示のモデルになりうる点が、それぞれ高く評価されて優秀賞の受賞となった。

 優良賞は、旭硝子、NTTグループ、関西電力、住友電気工業、損害保険ジャパン、武田薬品工業、東芝グループ、リヴァックス、リコーグループの9社が受賞した。旭硝子は経営方針の中にCSRが位置づけられ目標→自己評価→次年度の目標が明確な点が、NTTグループはマテリアリティの視点からグループ全体としての重点活動項目の分析と報告が優れている点が、関西電力はCSRキーパーソンというユニークな取り組みやPDCAにもとづく活動総括が優れている点が、住友電気工業は事業を通じた社会への貢献を明確に示し、CSRの活動全般について丁寧な説明を行っている点が、損害保険ジャパンはCSRの4つの重点課題を中心とした報告書の構成やダイバーシティ情報などが充実している点が、武田薬品工業はアニュアルレポートとCSR報告の統合的な開示のひとつのモデルとなりうる点が、東芝グループは報告書の作成方針が明確でKPIの導入により客観性を担保している点が、リヴァックスは規模の小さい企業ながらバランスのとれた報告書で、企業外部とのコミュニケーションにも力を入れている点が、リコーグループはグループ全体でのCSRの考え方が明確で、活動と社会的課題の関係が十分開示されている点が、それぞれ評価されての受賞となった。

  また、サステナビリティ報告書賞の特別賞としては、CSRに対するマネジメント体制の秀逸で、付加価値情報の開示などにも取り組んでいる点が評価されて帝人が受賞した。