ダスキンとの提携発表 冷ややかな現場の視線
そして、減り続ける客数に業を煮やし、ついに“禁じ手”を繰り出した。「値引きをしない単品勝負」という創業哲学に反し、昨年4月から今年にかけ3回、単品で50円、セットで100円の値引きクーポン券を初めて導入したのだ。確かに客足は戻った。が、クーポン終了時とともに元の木阿弥。ドカーンと客足は引いた。「クーポンではなく付加価値をつけるキャンペーンをすべき」と前出オーナー。本部も「顧客が予想以上に来て大混乱した」と振り返る。
櫻田社長は「客数増は狙いどおり。だが、うち1割以上がクーポン利用者。むしろ本部やFCの原価を圧迫し、収益が確保しにくい。クーポンはやはりモスに似合わない戦術かもしれない」と、失敗を一部認める。
どこまでも場当たり的な印象をぬぐいきれない本部に対し、現場は売り上げ不振で閉店が増える一方。オーナーの高齢化も著しい。
かつてはそのブランド力で、どこへ出しても月商500万円取れるのはモスだけ、と言われたものだが、今やその影はない。創業者、慧氏に共鳴した個人オーナーがほとんどのため、神通力は急激に色あせている。オーナーの子息たちからもそっぽを向かれている。10年前、神奈川県内に62名いたオーナーは、後継者難で現在は32名ほどに半減。後継ぎのいない店舗の一部はネットワーク維持のため、モス本部が直営店として引き継ぐ。07年度は30店の直営店が増加、約12億円の販管費増となり営業利益を圧迫した。08年度も50店の移行を行う予定だ。
現在は、既存店の底上げ策として、宅配の強化や、看板の増設や配色の変更で店舗を目立たせる作戦を開始した。同時に、最大30%ほど初期投資を抑えた新型店舗の実験も始めている。
08年2月にはダスキンとの資本業務提携を発表し、CMなど共同プロモーションに乗りだした。出足は好調だという。「2社の魅力を掛け算のように高める新業態も出していきたい」(櫻田社長)と話す。ただ、この提携についても、「どうせ買収防衛策の株式持ち合いだろう」などとオーナーの反応は冷たい。
ある若手オーナーがいらだちをぶつける。「本部は借金がほとんどなく好財務で給与も高い。売り上げが下がっても、いつも他人ごと」。営業利益はかつての半分以下、最終損益に至ってはこのまま赤字の沼にはまり込んでいきかねないモス。一刻も早く対策を打たなければ足元の土壌はこのまま崩れ続けるだけだ。
(山本亜由子 撮影:吉野純治、今井康一 =週刊東洋経済)
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