制作する番組の内容についても、「政治に近かった海老沢体制下では、(政治や過去の戦争関連など)踏み込んだものは、作りにくかった。ケチをつけられないように上層部の顔色をうかがいながら制作していた」(元プロデューサーのNHK職員)という。ジャーナリストらしい踏みこんだ内容の番組作りがしづらい環境になっていたのだ。
さらに04年にプロデューサーの番組制作費着服など一連の不祥事が発覚し、NHKに大逆風が吹き荒れる。その後、海老沢氏は辞任。後任で技術局出身の橋本元一前会長は、コンプライアンス強化など進めたが、09年度始動の経営計画の内容をめぐってNHKの最高意思決定機関である経営委員会と対立。昨年1月には、職員によるインサイダー取引も発覚し、辞任を余儀なくされた。NHKに対する風当たりはますます厳しくなっていた。
混乱が続くNHKの抜本改革に向け、当時の経営委員長だった古森重隆氏(富士フイルムホールディングス社長)に請われて会長に就任したのが、アサヒビール相談役だった福地氏だ。会長が外部起用されたのは、三井物産の池田芳蔵氏以来19年ぶり。就任当初、福地会長の手腕は疑問視されることが多かった。池田氏が国会答弁の不手際などで、わずか9カ月で辞任したという過去があるのに加え、「メディアの素人に、NHKの経営はできない」という見方をされたためだ。
ところが、就任から1年余りたった今、前述のように、NHKには好循環が生まれている。それを影で支えているのは、福地会長の経営術のようだ。
(下に続く)

(中島順一郎 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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