王将はなぜ、独自性にこだわるのか。実は、店舗の独自スタイルを奪って経営難に陥った過去があるのだ。
90年代後半に食材を工場でまとめて加工し、それを店舗へ配送するシステムを導入。「たとえば、ニンジンは機械でスライスされたものがボイルされて送られてきた。現場は袋をハサミで切ったら、それで終わり」と、当時を知る的場強さん(現・巽店店長)は語る。レストランチェーンを模倣した効率性を追求するシステムだったが、一方で、野菜の一本一本まで店頭で刻むことで得られていた料理の手作り感が、しだいに失われていった。
また、店内は客席と調理作業場を分断する「クローズキッチン」に改装した。それまでの王将は調理場が開放されている「オープンキッチン」が売りだった。ダイナミックな調理風景が客席からのぞけ、「チャーハン1丁」など調理人の声も店中に響き渡っていた。それが活気の源であったのだが、改装による違和感が店員の間に次々と伝播し、店舗の活力も消えていった。
店頭から「王将らしさ」がなくなれば、客足が遠のくのは必然。売り上げが伸びず、さらに不動産投資の失敗も重なり、2001年度には大赤字に転落した。
原点回帰の改革を断行 社長は今でも店長感覚
この危機時に就任した大東社長は、営業現場での経験を基に「原点回帰」を宣言。現場改革を断行した。大量に一括で仕入れた食材をそのまま店舗へ送るシステムを導入し、手作り感を重視するスタイルに戻した。店舗もかつてのオープンキッチンに再改装。並行して社員教育を徹底し、チームワークや接客マナー向上の重要性を唱えた。改革は徐々に浸透し、店舗は活気を取り戻していく。売り上げが上昇するのと同時に、大量一括仕入れや店舗での無駄の排除が奏功。今や営業利益率が10%強と、業界でもトップクラスの高さを誇る。
「社長なんて呼ばれたくない。今でも“おっさん”の感覚ですわ」と、大東社長は笑う。地域によって消費者の特性が違うのだから、それに応じて独自の工夫をするのは当然。店舗に大幅に権限委譲するという大東社長が導き出した経営戦略は、王将の強みを「現場目線」でとらえたもの。それだけに、違和感なく浸透したのであろう。
(週刊東洋経済)
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