マルチコンテンツで先行 成功の「黄金パターン」
佐藤社長はこうした展開を、「角川の黄金パターン」と呼ぶ。出版されたものを映像に展開し、雑誌・ネットが支え、ゲームに進出し、海外でも販売する。
実際、黄金パターンのメリットは計り知れない。テレビや映画、DVDなど他のメディアに展開すればするほど、上流の書籍などが相乗効果でまた売れる。文庫の涼宮ハルヒシリーズはこれまで累計580万部を売り上げた。「コンテンツが広がっていくにつれ利益率が高くなる」(佐藤社長)というメリットも大きい。
こうしたマルチコンテンツ化ができるのも、グループ内に専門の会社を抱えているからにほかならない。映像の制作は角川映画が行い、ネット、ケータイへの展開もすべてグループ内で完結できる。
競争論で著名な石倉洋子・一橋大学教授は角川の戦略を次のように見る。「21世紀はスピードとオープン化の時代。角川は自らのコンテンツのユニークさを見極め、業界の垣根にとらわれず、横断的にマーケティングしている」。それはまさに角川が目指す方向だ。
ただ、「黄金パターン」も継続的に“玉”が出なければ、成長はおぼつかない。やはりポイントは、上流の出版の分野だ。単に書籍や雑誌の編集者にとどまるのではなく、映像化やネット化まで含めて横断的に考えられる編集者が必要になる。端的に言えば、映像化できるキャラクターを考え編集作業できる能力だ。そうした編集者を「メディアプロデューサー」と佐藤社長は表現する。
すでに、「次世代角川プロジェクト」というグループ横断型の組織が結成されている。各社の編集者が映像化できるような案件を提案、「ホールディングスがヒト、モノ、カネを集中投下し、変化を促進する役割を担う」と佐藤社長は話す。
冒頭の新撰組・永倉新八は幕末、明治、大正を生き抜き、享年77歳。出版激動の時代を勝ち残るため、変化に素早く対応できる“永倉型”編集者を1人でも多く育て上げ、グループ力の源泉とする取り組みが、勝者・角川ではすでに始まっている。
(田北浩章 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)
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