米国の成功体験が販売戦略の足かせに
販売実績にさらに直結する問題点として、「売り方」も挙げられる。高級車の販売は通常、セールスマンが直接顧客へ売りに出向く。だが、トヨタ側の基本方針として、レクサスはこうした販売を行わない。その分、店作りに巨費を投じ、豪華なラウンジやエスプレッソマシンなどを設置。店舗スタッフには高級ホテル等で研修を施し、来店時の言葉遣いや身のこなしまでを磨き上げる。こうした“徹底的なおもてなし”で顧客の購買動機を刺激する作戦だ。
しかし、日本の高級車販売の現状はあくまで外回りセールスが主流だ。大手のヤナセによれば、他車種と比べ大衆車寄りのベンツAクラスですら、店舗販売は半分程度。上級の車種になると比率はゼロに近いという。「医者や経営者などの富裕層は、基本的にわざわざ店舗に出向いて車を買う習慣がない」(ヤナセ)。
彼らの車購入の決め手は、むしろ同じ富裕層間での口コミや紹介にある。高級外車の営業マンは、開業医や経営者宅に足しげく通い、株やゴルフなど趣味の話に乗ったり、時には家族ぐるみの密接な付き合いもする。信頼を育み、紹介を勝ち取るためだ。「営業マンが結果を出すうえで、富裕層のコミュニティに入り込むことは必須」(ヤナセ)。こうした高級外車の営業のスタイルと比べると、レクサスの「待ち」の姿勢では、どうしても顧客からの信用度に差がつく。
レクサスについての著書もある自動車評論家の金子浩久氏は、レクサス不振の原因を「米国で大成功した経験を、日本上陸の際に判断の根拠にしすぎたから」と指摘する。1989年にレクサスを初投入した米国では、年間33万台(07年)の販売を達成。米高級車カテゴリーで8年連続トップシェアを維持している。その米国で来店応対型の営業がうまく機能していることが、日本でも同様の営業スタイルを導入する大きなきっかけとなった。それに対し金子氏は、「確かに作り込んだ自社店舗で応対したほうが、ブランド浸透のうえでも理想的。でも、やはりそれは日本の高級車マーケティングの現状にそぐわない」と付け加える。
レクサスの苦境を反映してか、ここにきて競合他社が展開する高級車ブランドの日本逆上陸作戦も二の足を踏んでいる。ホンダは「アキュラ」導入を2年延期。日産自動車の「インフィニティ」も検討状態のまま進展していない。
もちろん、レクサスの日本逆上陸を現時点で失敗と判断するのは早計だ。「トヨタはプリウスの成功が示すとおり、最初はつまずいても問題点を改善し勝つまでやり続ける会社」(自動車アナリスト)という声もある。08年末に北米でヒットしたSUVのレクサスRX、09年にはハイブリッド専用車も発売予定だ。
しかし、商品面での個性の追求、顧客の習慣に即した販売手法の再考など、深刻な課題も浮上している。それらにレクサスはどう対応するのか――。次なる一手が急務だ。
(西澤佑介、大野和幸 =週刊東洋経済)
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