ホンダは過去、2輪車を武器に数々の新興国を攻めてきた。同時に、急激な経済変動や資金ショートも体験してきた。そこから得た教訓が「新興国では絶対借金しない」。金利が年10%、20%の世界では、金利のために商売をするようになるからだ。「商売がゼロになっても、従業員が2年間食いつないでいけるだけのおカネは貯めていこうと。そういう考えがホンダのベースにある」(近藤副社長)。
一部の投資家には「昔のホンダは事業規模を上回る積極投資が魅力だった。今はつまらない」と、より高い成長を求める指摘も受けたが、譲らなかった。「あくまで結果論だが、この慎重さもあって何とか黒字を維持できている」(同)。
ここ数年は1兆円近い営業利益を出す一方で、生産能力不足が顕在化。米インディアナ、寄居(埼玉)、タイ、インドと次々に能力拡大を決め、実行に移し始めていた。
ところが、ここからが振るっている。「生産キャパがどうにもタイトになって決めた投資ではあるが、7000億円近い額を2年も3年も続けるのはホンダの歴史にない。だから、経営メンバーの中では決めていた。“何かあったときはすぐ変えられるようにしておこうね”と。中止もありだと。だから寄居延期等の決断は早かった」(近藤副社長)。
7月13日、東京の本社で“所信表明”の会見に臨んだ伊東孝紳ホンダ新社長は「ホンダらしさを強めていく」と何度も口にした。
自動車メーカーはつまるところ、いい車を作ることでしか己の価値を高めることはできない。利益とはそのための「手段」であり、「目的」ではない。今回の経済危機で、ホンダは改めてその意味をかみしめている。原点に返る必要があるのは、むしろホンダ以外の会社かもしれない。
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(週刊東洋経済)
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