同じく量産技術蓄積の重要さを挙げるのは、元ソニーのリチウムイオン電池技術者だった藤原信浩・藤原技術士事務所代表。「数年前の発火問題でわかるように、リチウムイオン電池では、品質を安定させ、かつ大量生産するのが極めて難しい」。
たとえば、リチウムイオン電池の心臓部である「正極板」の製造工程。金属箔の上に化学物質を薄く均一に塗り重ねて作られる。鉛電池の場合、その薄さは1ミリメートル程度だが、現行のリチウムイオン電池の場合はその100分の1、数十ミクロンというレベルが要求される。また、工程内で水分、汚れを一切排除するため、クリーンルームとドライルームで部品製造から組み立てまで完全無人化するが、「均一に塗れない。不純物が少しでも入るとすぐ性能劣化が起こってしまう」と藤原氏は話す。
民生家電用撤退のツケ、材料調達面でも弱み
その一方で、リチウムイオン電池は半導体や液晶と同様に、初期に多大な投資がかかる装置産業だ。この場合、一つの工場で高速かつ大量に生産するほど低コスト化につながるが、反面、精密さゆえに仕損のリスクも上がってしまう。このジレンマを乗り越える生産技術の向上が、民生家電用においては勝ち残りの大きな条件だ。藤原氏は「民生家電用で成功していないメーカーは、EV、HEVの本格成長期に入れば劣後してくる可能性がある」と指摘する。
実はGSユアサには、民生家電用リチウムイオン電池で敗北した苦い過去がある。97年、GSユアサ(当時は前身の日本電池)は6割出資する形で三菱電機と合弁会社を設立。市場が急拡大していた携帯電話などモバイル機器用電池の開拓に打って出た。しかし、そのわずか5年後の02年、合弁会社株の過半を三洋電機に譲渡し、実質的な撤退を余儀なくされた。「あのときは、いかに大量生産設備に巨費を投じて、コストを下げるかという投資競争についていけなかった」(依田社長)。
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