一方、ある程度まとまった林地を保有している企業にとっても、本格的な活用は頭の痛い問題だ。共通する悩みは、林道・作業道が整備されていないこと。伐採のための重機を入れることも、材木搬出も困難な状態にあり、切りっぱなしで放置している企業もある。
アスファルトなどの舗装をしない林道の敷設コストは150メートルで30万円程度。だが、それに見合うエリアの年間伐採量はせいぜい50立方メートル。売却価格は5万円程度にしかならない。これでは企業も積極的な資源活用に動けない。目先の経済性だけを重視してエリア全体を伐採するとゼロから植林という形になり、再生に50年かかる。「持続可能な森林経営」にならない。
零細な所有者については、エリアごとに自治体などが借り上げる、あるいは利用権を株式化して収益が上がれば配当する、というアイデアを持つ関係者もいるが、なかなか実現に結びつかないという。
流通網の未整備も大きな問題だ。大口需要家と直接契約しないかぎり、販売するには地元の原木市場を通すが、どこにどんな木材があるのか、といった情報は外部から取ることができない。ネットワークがないからだ。野ざらしのまま劣化してしまえば低質材として燃料などにするしかない。売れれば売れたでスギ1本8500円に対し1500円程度の手数料がかかる。買い手は原木を積み直して輸送し製材所に持ち込むが、この輸送コストもバカにならない。たとえば切り出した木材を100キロメートル圏から集めて1カ所で製材し、そこから流通網に乗せる、といった、ネットワークの抜本的改革も必要だ。
こういった近代的な経営手法を取り入れた仕組み作りは、市町村単位の手に負える話ではない。国家行政の仕事だろう。インフラが整い収益化の可能性が見えてくれば、民間資本の参入も期待できる。
もちろん森林には、資源としての役割のほか、地球温暖化対策や治山治水といった役割がある。また生態系の保護の問題もあり、やみくもな開発を求めるわけにはいかない。
林道の敷設も、何も最初からふもとから山頂まで一気通貫する必要はない。利用しやすく資源量も豊富な緩斜面エリアから、必要に応じて延伸していけばいい。補助金の一部でもインフラ投資に振り向け、育成林の20%を活性化するだけで、国産材の利用率は倍増する。ただし林道の整備には、生活道や観光道路などへの転用を制限し、純粋に林業の発展に資する、という厳しい条件も必要だろう。
(小長洋子 =週刊東洋経済)
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