塩田潮
小沢民主党代表秘書に対する検察の処分が明24日に示され、小沢代表が進退問題で一定の答えを出す。
民主党内には政治資金規正法違反容疑だけの起訴なら続投容認という空気が強いらしいが、容疑が悪質と判断した検察が起訴すれば、裁判で争うにしても、小沢氏側の政治的責任は重大である。民主党と小沢氏が国民の厳しい視線を浴びるのは当然だ。
だが、一方で、民主党狙い撃ちでは、と疑問を持った人も多い。西松事件では、自民党側にも、たとえば二階経産相の関係で数千万円の闇献金の疑惑ありという報道もある。なのに、捜査当局の手が伸びている様子はない。狙い撃ち批判に対して、検察の説明責任を問う声もあるが、説明責任はないと明言する識者もいる。この問題では、憲法75条の「国務大臣の訴追」条項と刑訴法248条の起訴便宜主義という規定が関係している。
憲法75条は大臣の訴追に首相の同意が必要と定める。仮に二階経産相の関係で容疑があったとしても、麻生首相の同意取りつけは困難だろうから、訴追は事実上不可能で、訴追が前提の関係者逮捕などもできないことになる。
刑訴法248条は検察が「犯罪の軽重」などで起訴するかどうかを判断してかまわないと規定する。つまり立件の可否を判断できる。検察は悪質性などを考慮して、どの容疑を立件するか、判断する権限を有している。法廷以外で判断の理由をいちいち説明する責任はないというのは、そのとおりだろう。
だが、検察は憲法75条の壁があって現段階で現職大臣に手を着けられないのを初めから承知で小沢氏側だけを問題にした。憲法75条と刑訴法248条があるとはいえ、もしこれで事件が幕引きとなれば、総選挙前のこの事件処理に、国民の間に強い不公平感が残るだろう。それが大臣の訴追に同意権を持つ麻生首相にはね返り、政権側に飛び火する可能性もある。
敵失でほくそ笑んでいる麻生首相と自民党だが、喜んでばかりはいられない。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男―宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究―政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代―「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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