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ファザル・アベドBRAC創設者兼会長――貧困撲滅は市民の義務。政府だけの仕事ではない(2) - 09/02/22 | 21:00


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今後は貧困の基準が変わるかもしれない

――「バングラデシュは2015年までに貧困から脱却する」と発言されています。

 どの国においても、完全に貧困から脱却するということはありえない。たとえばアメリカでも、ごく少数の人ではあるが、やはり貧困ライン以下の生活をしている人はいる。日本でも、やはり少数の人々は十分におカネがなく貧困に苦しんでいるということがあるのではないか。したがって、バングラデシュも貧困から完全に抜け出すということはできないと思っている。

 では、2015年までに何が起きるか。今現在、バングラデシュでは、いわゆる貧困ライン以下の生活をしている人が国民の40%ぐらいいると言われている。われわれは毎年、その率が2〜3%ずつ下がることを目指して活動を行っている。ただ、こうした層がごく少数に限られていくには、あと20年ぐらいはかかるだろう。

 もっとも、貧困の水準の定義は今後変わるはずだ。バングラデシュの現在の貧困ラインというのは、家族が十分に食べられないということ、すなわち遺伝子的なポテンシャルを十分発揮できないというラインを指す。これがやがては、子供たちに中等教育を受けさせられないというラインになっていくかもしれない。

――貧困撲滅という本来なら政府がやるべき仕事を、なぜNGOがやるのですか。

 貧しい国においては、政府は必ずしも必要な支援ができない。ただ政府だけがそのような責任を負っているわけではない。市民にも貧しい人を支援する義務があるはずだ。政府やNGO、そして企業の全員が協調して、国全体として引っ張っていくということが究極的に貧困から脱却させていく道なのだ。

 バングラデシュでは国民の半分が非識字者だ。だからこそ、われわれのような組織が教育という面にもやはり手を染めなければならない。そうすれば、やがては国民全員が国づくりに参加できるようになる。

 政府ならば税金を取って、それだけで資金を集めることができるが、われわれにそんなことは不可能だ。つねに努力をし、正しい行いをすることによって結果を出すしかない。そうでないと、誰も支援してくれない。ドナーも資金を出してくれない。

――日本政府がBRACに対してできることは。

 日本政府にはバングラデシュに相当な無償援助をしてもらっている。そのおかげで国の経済も潤っている。ただ日本政府について一つ言えることは、援助については政府のみを対象としているということだ。われわれのようなNGOに直接供与されることはない。ところが、一部のヨーロッパの国の政府は、開発援助については政府とNGOと両方に供与をしている。開発援助については、どのようなルートを通じたとしても必要な人々に届いていればそれで結構だ、というのがそういった政府の考え方である。BRACは日本政府から直接に寄付金は受けていないが、私は、それには不満を言うつもりはない。日本政府は非常に寛大にバングラデシュを助けてくださっている。政府がそのおカネを効果的に使ってくれるかぎり問題はない。

――日本でも新たな貧困層が増えています。貧富の格差が生じるのは資本主義の宿命なのか、それとも政府の施策の失敗の結果でしょうか。

 資本主義というのは、ある程度規制されるべきだと私は考えている。無規制な資本主義にはいろいろな問題が発生しているからだ。資本主義は富の創出という点ではいいと思うが、同時に、社会目的のためには一定の規制も課さなければならない。そうでないと、さまざまな格差や不均衡を生み出すからだ。各国政府は、資本主義というものをいろいろな形で利用しているが、賢明な政府ほど格差を生まないような施策を打っていると思う。

【アベド氏とBRAC】
 ファザル・アベド氏は1936年バングラデシュ生まれ。ダッカ大学および英グラスゴー大学卒業。シェル石油で経理部長を務めた後、バングラデシュの独立運動に参画。1973年に貧困廃絶、教育向上、医療サービスなどに取り組むBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)を設立した。BRACは世界最大のNGO(非政府組織)として11万人のスタッフを抱え、国内3800カ所に拠点を持つ。6億ドルに及ぶ予算の7割は自主財源であり、BRACが手掛ける事業からの収益で賄っている。現在では活動範囲をアフガニスタン、スリランカ、パキスタン、タンザニア、ウガンダ、スーダン(南部)、リベリア、シエラレオーネに拡大している。

(鈴木雅幸、大坂直樹 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)
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