「豊かな国と貧しい国の間で真の競争激化は見られない」−−ジャグディシュ・バグワティ コロンビア大学教授(1) - 08/04/06 | 19:00
バグワティ教授は国際貿易論の第一人者だ。輸出主導型の産業化を推進している国は、ラテンアメリカに見られるような輸入主導型の国々よりも成長速度が速い、というのが持論だ。アジア諸国の奇跡的な経済発展でバグワティ教授の理論は裏付けられた。今、米国の大統領予備選挙の中で、民主党候補による自由貿易への強硬論が巻き起こっている。グローバリゼーションの進展が先進国の職を奪った、というこの主張に、バグワティ教授は明確に反論を展開する。
――民主党の大統領候補者が選挙運動で、貿易に関して強硬論を唱えていますが……。
ヒラリーの姿勢は、夫のビル・クリントンの大統領時代よりもずっと強硬だ。米国は大きな市場を有する国であるがゆえに、米国市場に参入しようとする他国に対しては、米国の要求を何でも受け入れさせることができる、と主張しているのだ。ここまで強硬な発言は、まるでAFL‐CIO(米国労働総同盟産別会議)の主張と変わらない。
ヒラリーは非公式な場でさまざまな人を相手に、ビルの考え方は間違っている、今や新しい時代が到来し、多種多様な手段を講じなければ、貿易が従来のように利益をもたらすことはない、と繰り返し語っている。
――オバマ上院議員の主張は。
オバマは、ヒラリーのような主張をしたことはない。人は付き合う相手の影響を受けるものだ。ここ10年ほどの間、オバマが経済問題について話し相手としてきたのは、エコノミストのオースティン・グールスビーだ。彼はエール大学でジム・トービン(ノーベル賞受賞者)などに師事し、MITで博士号を取った。MITに保護貿易論者はいない。これとは対照的に、ヒラリーにとっての中心的な経済アドバイザーはジーン・スパーリングだ。彼は好人物だが、法律家だ。
賃金の平準化は歴史の冷酷な現実
――現在は新しい時代に入り、これまで言われてきた自由貿易の利点や、比較優位のルールが当てはまらなくなった、という見方があります。
長年にわたって、米国の労働者の実質賃金は横ばいか、またはほんのわずか上昇しただけだった。問題は、これがグローバル化に起因するかどうかだ。とりわけ、中国の台頭や低賃金国からの輸入の増加といったように、私の師であるポール・サミュエルソンや、私の教え子であるポール・クルーグマンが懸念するような形で、グローバル化に起因するのかどうかだ。
1948年にサミュエルソンは小論文の中で、貿易によって世界各国の賃金が平準化する傾向が生まれてくる、と指摘した。これは、低賃金国では賃金に上昇圧力がかかり、逆に、豊かな国の低スキル・低教育の労働者の賃金には下落圧力がかかるというものだ。しかし、これについてサミュエルソンは、単なる理論上の好奇心だとしていた。実際にそうなるとは考えていなかった。なぜなら、この命題が現実化するのに必要な前提や状況は、実際には、当時存在しなかったからだ。
私が学生だった50年代には、サミュエルソンの「賃金平準化理論」はなぜ有効でないのか、について学んだものだ。ところが今日では、一般的な見方はこの逆だ。今や、賃金の平準化は歴史の冷酷な現実なのだ、というとらえ方がなされている。つまり、グローバル化の時代を迎え、豊かな国の低スキル労働者の賃金は、低賃金国からの輸入の圧力によって抑え込まれるようになる、という見方が一般化しているのだ。
――民主党の大統領候補者が選挙運動で、貿易に関して強硬論を唱えていますが……。
ヒラリーの姿勢は、夫のビル・クリントンの大統領時代よりもずっと強硬だ。米国は大きな市場を有する国であるがゆえに、米国市場に参入しようとする他国に対しては、米国の要求を何でも受け入れさせることができる、と主張しているのだ。ここまで強硬な発言は、まるでAFL‐CIO(米国労働総同盟産別会議)の主張と変わらない。
ヒラリーは非公式な場でさまざまな人を相手に、ビルの考え方は間違っている、今や新しい時代が到来し、多種多様な手段を講じなければ、貿易が従来のように利益をもたらすことはない、と繰り返し語っている。
――オバマ上院議員の主張は。
オバマは、ヒラリーのような主張をしたことはない。人は付き合う相手の影響を受けるものだ。ここ10年ほどの間、オバマが経済問題について話し相手としてきたのは、エコノミストのオースティン・グールスビーだ。彼はエール大学でジム・トービン(ノーベル賞受賞者)などに師事し、MITで博士号を取った。MITに保護貿易論者はいない。これとは対照的に、ヒラリーにとっての中心的な経済アドバイザーはジーン・スパーリングだ。彼は好人物だが、法律家だ。
賃金の平準化は歴史の冷酷な現実
――現在は新しい時代に入り、これまで言われてきた自由貿易の利点や、比較優位のルールが当てはまらなくなった、という見方があります。
長年にわたって、米国の労働者の実質賃金は横ばいか、またはほんのわずか上昇しただけだった。問題は、これがグローバル化に起因するかどうかだ。とりわけ、中国の台頭や低賃金国からの輸入の増加といったように、私の師であるポール・サミュエルソンや、私の教え子であるポール・クルーグマンが懸念するような形で、グローバル化に起因するのかどうかだ。
1948年にサミュエルソンは小論文の中で、貿易によって世界各国の賃金が平準化する傾向が生まれてくる、と指摘した。これは、低賃金国では賃金に上昇圧力がかかり、逆に、豊かな国の低スキル・低教育の労働者の賃金には下落圧力がかかるというものだ。しかし、これについてサミュエルソンは、単なる理論上の好奇心だとしていた。実際にそうなるとは考えていなかった。なぜなら、この命題が現実化するのに必要な前提や状況は、実際には、当時存在しなかったからだ。
私が学生だった50年代には、サミュエルソンの「賃金平準化理論」はなぜ有効でないのか、について学んだものだ。ところが今日では、一般的な見方はこの逆だ。今や、賃金の平準化は歴史の冷酷な現実なのだ、というとらえ方がなされている。つまり、グローバル化の時代を迎え、豊かな国の低スキル労働者の賃金は、低賃金国からの輸入の圧力によって抑え込まれるようになる、という見方が一般化しているのだ。
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