乱れ飛ぶ販売奨励金、激安携帯電話復活のウラ側(1) - 08/12/26 | 12:30

「夏の終わりに出たばかりの機種がゼロ円。絶対お得ですよ」。横浜市内のドコモショップ。販売員の女性がNEC製の携帯電話を手にほほ笑む。お得とはいえ、頭金ゼロ円で端末代金を24カ月かけて支払う割賦購入なら別に驚かない。しかし端末価格は一挙に約3万円も下げて、“一括ゼロ円ポッキリ”。11月に年末商戦向けの新機種が出ているとはいえ、発売から約3カ月での大幅値下げは異例だ。
首都圏の家電量販店でも同じNECの端末が1円という超特価で売られていた。ここではKDDIの端末も安く、東芝などの春夏発売機種が1円。ライバルに比べて旧機種の値下げ幅が小さいといわれてきたソフトバンクさえも、都内のある併売店(複数の通信事業者の端末を販売する店舗)で「1台新規契約すれば、2台目はゼロ円。友達とおそろいで持ちませんか」と野菜さながらに投げ売りされていた。シャープや韓国サムスン電子製の2007年夏発売機種が対象で、在庫限りの特別価格というものの、この店では10月ごろから常態化している。
半年で奨励金2・6倍 市場減速で在庫が倍増
携帯市場では今夏の終わりごろから、こうした旧機種の激安販売が復活している。数年前なら、旧機種がゼロ円や1円で売られることは珍しくなかった。通信事業者が販売代理店や量販店に販売実績に応じて奨励金を支払い、低価格で売っても利益が出る水準まで事実上の卸値を下げていたからだ。だが普及が一巡したこともあり、各通信事業者は06年から07年にかけて、新しい料金・価格体系を導入。毎月の通信料を安くする代わりに奨励金を減らしたことで、端末価格は2万〜5万円にハネ上がった。販売台数が急失速したのは言うまでもない。
その端末が再び激安で販売されているのはなぜか。都内にある併売店の関係者は言う。「秋口から店に入る奨励金の額が目に見えて増えてきた」。市場の急失速で積み上がった在庫商品を売りさばくために、奨励金が膨らみ始めているという。
この併売店はドコモから、月ごとの目標台数を売り上げれば支払われる「握り」と呼ばれる奨励金を、端末仕入れ元の代理店経由で受け取っている。ドコモが提示した「握り」の額は、6月に180台売れば1台当たり7500円だった。それが9月に240台で同1万1000円になり、12月には280台で同1万2500円まで膨らんだ。目標達成時の支給総額は6月の135万円から半年で2・6倍になった計算だ。「目標のハードルは高いが、鼻先に奨励金をぶら下げられれば売りさばくことを考える」と関係者の鼻息は荒い。
そうはいっても通信事業者がバラまく奨励金の総額は、以前のゼロ円端末全盛期ほどではない。たとえばKDDIの7〜9月の奨励金1040億円は、ピークだった06年同期より2割少ない。通信事業者は奨励金が減った影響で、市場縮小に相反して業績が改善しているほどだ。「在庫は適正水準の倍と今までになく高い状態。だが(奨励金を使った)値下げだけではなく、評価損を計上してでも在庫処分することを今後は検討していく」(KDDIの小川武志・コンシューマ営業企画部長)。というのも飽和状態を迎える中、通信事業者は既存ユーザーの囲い込み重視に姿勢を転じている。既存層に「同じ端末を高値づかみさせられた」と感じさせる大幅値下げはできるだけ回避したい。販売台数が伸び悩んでも、通信事業者が奨励金を以前の水準に戻すことはなさそうだ。
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