日の丸ジェットエンジン繁盛記〜大盛況でも深まる矛盾(4) - 08/09/30 | 12:29
どこに与するのか 大きな岐路に直面
苦しい選択はそれだけではない。IHI、いや、日本のジェットエンジン業界は、大きな岐路に差しかかっている。焦点は、現在の日本のジェットエンジン業界を作り上げたV2500の後継エンジンである。
ボーイングもエアバスも、B737、A320の後継機を開発する条件として、高効率の新エンジンを求めている。効率競争に火をつけたのがP&Wの「GTF」(ギアード・ターボファン)という新エンジンだ。
やや説明が煩雑になるが、ジェットエンジンは、タービンの回転が速いほど、逆に、エンジン前方のファン(空気を取り入れ、推力を得る)は低速で回るほど効率が高まる。ところが、タービンとファンは同じシャフトでつながっているから、その両立は不可能だった。
GTFはファンとタービンの間に変速ギアを挿入することによって、不可能を可能にした。ゆっくり回るためファンを大きくし、バイパス比(コアの外を流れる空気とコアから排出される空気の比率。バイパス比が高いほど効率が高まる)を高めることができる。燃費は1〜2割改善し、メンテ費用も4割削減できる。
すでにMRJと加ボンバルディアのCシリーズ(120席)がGTFの採用を決めたが、P&WはB737、A320の後継機への搭載も狙っている。焦ったのは、GEだ。
現行の「CFM56」(V2500のライバルエンジン)の改良ではGTFに対抗できない。12億ドル投じながら、20年前にいったん開発を断念した「オープンローター」に再チャレンジしようとしている。
オープンローターは、ファンが覆いの外にむき出しになり、一見、プロペラ機のような外見になる。覆いがないため、バイパス比は無限大、燃費は3割改善する。騒音と複雑なメカニズムが難点だが、ロールスも独自にオープンローターを検討中と伝えられる。
「これほど状況が流動化したことはない。会う相手がみんな勝手なことを言っている」(IHI・満岡氏)。悩ましいのは日本の3社だ。
三菱重工はMRJで採用したGTFの生産に参加する。「V2500の後継は同じ仲間で、と提案しているが、P&Wとロールスがどう出るか」(三菱重工・川井昭陽常務)。P&WとロールスがGTFとオープンローターでたもとを分かてば、三菱重工はP&Wにつくしかないだろう。川重はトレントの延長線上、ロールスにくみするとして、IHIはGEを選ぶのか、ロールスに戻るのか。場合によって、今度は日本勢が3分裂することにもなりかねない。バラバラなら政府助成もなくなり、その分、参加シェアもさらに下がる。
「死に物狂いの飛躍」がもたらした現在の日本のジェットエンジン産業の“大活況”。選択を誤れば、大本の遺産の継承さえ怪しくなる。

(週刊東洋経済)
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