制作:東洋経済広告企画制作部

東日本大震災からの教訓 −想定外の危機を乗り越えるための事業継続計画・マネジメント−

基調講演

危機を乗り越える現場力

早稲田大学ビジネススクール教授
株式会社ローランド・ベルガー会長
遠藤 功氏
3月11日以降、さまざまなメディアで「現場力」の3文字が使われている。遠藤功氏が7年前に『現場力を鍛える』を著して以来、すっかりビジネスシーンの隅々にまで浸透した証なのだろう。現在、あらためて現場力の重要性が再認識されている。

あらわになった現場力の格差

早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長 遠藤 功氏
早稲田大学ビジネススクール教授
株式会社ローランド・ベルガー会長
遠藤 功氏

日本の現場はたくましかった。「後ほど登壇いただくヤマト運輸は、あの日からわずか15日間で集配を再開しました。奇跡的な、ありえない速さです」と賞賛する遠藤功氏は「一方で、復旧にスピード感のない企業もあり、現場力の格差があらわになった」と指摘する。そもそも、緊急時に頑張っている姿だけを見て現場力があると勘違いしてはいけない。

「現場力には3つの条件がある」と遠藤氏。
「当事者意識を持ちながら知恵を出して課題に立ち向かう問題解決能力。全員参加で面の力を発揮する組織能力。コストや品質といった競争優位につながる独自性。これらの条件をクリアして初めて現場力があると言えるのです。こうした、自立性や自発性が高く思考回路が磨かれている現場は、同時に日常において非日常への備えも磨いていると言えるでしょう」。

現場力を磨き直すきっかけに

平時の現場力こそが緊急事態への対応を左右すると強調した遠藤氏は、これからのBCMを考える3つの視点に論点をつなぐ。
「まずはプランです。復旧にメドが立たない時の生産手段や調達など、"代替"までを盛り込んだ計画が欠かせません。大局は本部、局所は現場を信じて任せるといった、本部と現場の役割分担を明確にプランする必要もある。
2つめはケイパビリティ、組織能力。被災した現場が、何が起きているのか把握できないといったCaos(混沌)の状態に陥る中では、そこで働く従業員のオーナーシップや知恵こそが現場を救うのです。

計画、統率、組織能力

ドラッカーが『日本の現場にはナレッジワーカーがいる』と看破しましたが、そうした従業員を育てるとともに、日常の仕事の中でイレギュラーな事態への対応能力を鍛錬し続けることでケイパビリティを高めていかなくてはならない」と続ける。

最後は、リーダーシップだ。「過去の情報や経験に基づいて意思決定する判断、未来に向けての意思決定である決断をタイミングよく下せる現場のリーダーが欠かせません。そして、いざという時にも情報がスムーズに流れるように、日頃から現場全体の一体感を醸成する緊密なコミュニケーションも必要でしょう。メンバー間の濃い関係が、実体として機能するチームの基盤になるのです」。

遠藤氏は、BCMへのチャレンジを絶好のチャンスだととらえている。「長期的な視野で日本独自の根本的な競争力である現場力を磨き直す、またとない機会ではないでしょうか」と。