アールテック・ウエノ
自前で稼ぐ創薬バイオベンチャー医師の目線でニーズをつかむ
欧米を中心に注目される創薬バイオベンチャー。開発に成功すれば利益も大きいが、日本では長期間、赤字を出し続ける高リスクの投資は根付いていない。そこでアールテック・ウエノは、赤字を出さない創薬ベンチャーのビジネスモデルを構築した。創業者の上野隆司博士が開発した緑内障治療薬『レスキュラ』の製造をはじめ、米国で販売されている便秘症治療薬『アミティザ』の受託製造、他社の開発支援などで収益を得て、黒字を堅持しながら、この2年は毎年15億円前後の研究費を投じ、開発を加速している。
20世紀後半、糖尿病などの生活習慣病や感染症など、薬のニーズが高い領域では続々と新薬が開発されてきたが、市場も飽和状態となり、新薬開発は転換点を迎えている。そこで大手製薬メーカーでは、アンメット・メディカル・ニーズ(満足のゆく治療法がない領域)やオーファンドラッグ(希少疾病治療薬)をターゲットとする新薬開発が望まれる中、創薬の初期段階をベンチャーに任せ臨床試験段階まで進んだ薬のライセンスを導入する手法を取り入れている。実際、2006〜08年に発売された新薬19品目をみると、大手が自社内で開発した新薬は、5品目にとどまる。
2005年から創薬事業に本格参入したアールテック・ウエノは薬が限られアンメット・メディカル・ニーズが高い眼科、皮膚科領域に特化した創薬を進めている。慶應義塾大学医学部助教授から転身し、現在も経営の傍ら、眼科医として臨床現場にも立つアールテック・ウエノの真島行彦社長は「患者が何に困っていて、医師がどんな薬を求めているかよくわかる。その医師の目線を経営に活かせることが強み」と話す。
10年程度とされる新薬開発期間の中間にあたる今年は、フェーズ1からフェーズ3まである臨床試験で、レスキュラを緑内障以外の病気にも使えるようにする適応拡大がフェーズ2(患者を対象に有効性、安全性などを確認する)試験中。 また、緑内障治療薬にまつげが濃くなる副作用があることに着目した、男性型脱毛症治療薬もフェーズ2まで進んでいる。さらに、同成分のまつげを濃くする薬の開発も進む。
脱毛症薬の市場は、日本で約500億円、これは主に男性用の脱毛症薬の市場だが、女性用の市場はさらに存在すると考えられる。開発中の新薬候補は、理論的に女性の脱毛への効果も期待できるという。一方、まつげを濃くする効果についても、先行する米国の薬が売上目標に約500億円を掲げる大きな市場がある。真島社長は「フェーズ2の試験で良い結果が出れば、国内外の製薬メーカーにライセンス供与も見えてくる」と、期待する。
『レスキュラ@点眼液』
『レスキュラ@点眼液』は、1994年に発売された世界初のプロスタグランジン製剤の緑内障治療薬。現在、難病の網膜色素変性への適応拡大に向け、治験がフェーズ2まで進んでいる。同社は、別の緑内障治療薬、ラタノプロスト点眼液の後発薬の製造販売も承認申請している。
住所 | 東京都千代田区内幸町1-1-7NBF 日比谷ビル10階 |
電話 | 03-3596-8011 |
設立 | 1989年9月21日 |
事業内容 | 緑内障治療薬を主力に医薬品の研究開発、製造、販売、開発支援、受託製造サービスを行う創薬ベンチャー |
決算ハイライト 単独 | ||||
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10/3 月期 | 11/3 月期 (予想) | 前期比 増減率 (%) | ||
売上高 | (百万円) | 4,162 | 4,508 | 8.3 |
営業利益 | (百万円) | 728 | 1,019 | 40.0 |
当期純利益 | (百万円) | 666 | 670 | 0.6 |
一株純利益 | (円) | 6,773.2 | 6,810.1 | - |
総資産 | (百万円) | 7,043 | - | - |
一株株主資本 | (円) | 62,564.1 | - | - |