制作*東洋経済広告局企画制作部

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高い成果を生むグリーンITとは

温暖化問題に対する取り組みが地球規模で叫ばれる今、「グリーンIT」という言葉を耳にする機会も増えてきた。
処理能力の高いIT機器はそれだけ熱量も高く、これらの省エネ化は当然考えていかねばならない事項だ。
しかし、江崎浩教授は「単にIT機器の電力消費を抑えるグリーンITには限界がある」と語る。
我々はどのようなグリーンITを講じるべきなのか。江崎教授が進める東京大学の「グリーン東大工学部プロジェクト」を例に、高い成果を生むグリーンITについて聞いた。
iDCが実現する経営の効率化とは高い成果を生むグリーンITとは

「グリーン of IT」には限界も 「グリーン by IT」の推進必要

 「グリーンIT」という言葉を耳にする機会が増えているかもしれません。「グリーンIT」とは何かと考える際に、サーバーなどIT機器、さらにはこれらを預かり管理・運用するインターネットデータセンター(iDC)の省電力化だけをイメージする人が多いようです。
 社会の要請などもあり、IT機器などハードの省電力化が急速に進んでいます。さらに最近では、SaaS、ブレードサーバー、コンピュータの仮想化、さらにはクラウドコンピューティング化などの進展にともない、省エネが進んでいます。

 一方、興味深いデータがあります。わが国のエネルギー消費量のうち約50%はオフィスや家庭などの施設で消費されているというのです。さらに約25%が輸送システムであり、工場などモノづくりの現場は約25%です。つまり「グリーンIT」の成果を生むには、コンピュータの省エネ以上に、まずオフィスや家庭での省エネを行わなければならないのです。

「グリーン of IT」および「グリーン by IT」という言葉があります。前者は、IT機器やデータセンターなどの機能を向上させることによって、電力消費を抑えようというものです。それに対して後者は、ITの使い方や活用法を変えることによって問題の解決に取り組むものです。前述したデータを見ても、後者の可能性がきわめて大きいことがわかります。

ICTを用いて「グリーンIT」を実現 東大工学部のプロジェクト

 「グリーン by IT」の一例として、私が勤務する東京大学で行っている「グリーン東大工学部プロジェクト」をご紹介します。
 このプロジェクトは東京大学がIPv6普及・高度化推進協議会と協力して発足させたものです。さらにグリーンIT推進協議会、東京都、民間企業などの産官学連携の共同コンソーシアムを構成し、エネルギー供給・消費データを可視化することにより、グリーンITの実証を目指すものです。

 具体的には、東京大学本郷地区の工学部新2号館(2005年竣工、地上12階)をモデルとして、空調や照明、電力、サーバールームなどのエネルギーの状況を収集・解析し、制御などに活用しています。
 大きな特徴として、従来個別に運用管理されていた施設の設備制御管理システムを接続し、収集されたデータを相互に利用する仕組みがあります。例えば、2号館の教授室には、照明の自動点灯や消灯のためにセンサーを設置しましたが、この情報を入退室システムにも活用しています。このことで、学生は教授の部屋までいかなくても在室・不在がわかります。また、空調設備のリモートコントロールもこの情報に基づいて行っておりムダな冷暖房を防ごうとしています。

 このようなシステムを実現するためには、これまでなら照明や空調のほか、ICカードなどを用いた入退室システムなど、それぞれの機器のセンサーが必要で、収集したデータの活用も含めて、多くのコストがかかりました。「グリーン東大工学部プロジェクト」では、一つのセンサーで得られた情報を複数のシステムで活用しているため、導入コスト、ランニングコストともに非常に低く抑えることができています。
 これを可能にしているのがIPv6の技術です。それぞれの機器のプロトコルを共通化・オープン化することで、施設のファシリティーも効率的に運用することができるのです。

させられる「グリーンIT」からやりたくなる「グリーンIT」へ

 省エネと環境対策はグローバルな課題であることは言うまでもありません。CO2の削減に取り組んでいる企業も少なくないでしょう。ただし、やみくもに「各部門で一律○%削減」と掛け声をかけたところで、実現するものではありません。

 そこで大切なのは経済的な利益を可視化することです。センサーを取り付け、計測するだけでも大きな効果があります。ある企業では、部門ごとに電気使用量をモニターしたところ、12%もの省エネが実現したそうです。ちなみに、東京大学では年間約50億円の電気代を支払っていますが、12%といえば6億円以上になります。企業でこれだけの利益を上げるためには、製品をいくつ売らなければならないでしょうか。私は、させられる「グリーンIT」からやりたくなる「グリーンIT」へと言っていますが、数値で示すだけでも、従業員の方々のモチベーションがきっと上がるはずです。

 企業によっては、シン・クライアントやフリーアドレス、在宅勤務などによって「グリーンIT」に取り組んでいるところもあります。ここでも大切なのは、単にシステムを導入するだけでなく、評価システムなども含めて、従業員の方がやりたくなる仕組みをつくることだと思います。
 そういう意味では、「グリーンIT」は、人々のワークスタイルやライフスタイル、さらには都市のあり方なども視野に入れながら取り組まなければなりません。グローバルな社会におけるわが国の責任も大きいですが、それに応え、世界をリードできるのも日本だと感じています。
東京大学大学院
情報理工学系研究科教授
江崎 浩
九州大学工学部電子工学科修士課程修了後、(株)東芝総合研究所に入社。
米国ベルコア社、コロンビア大学客員研究員、東京大学大型計算機センター助教授、東京大学情報理工学系研究科助教授を経て2005年より現職。
WIDEプロジェクトボードメンバー、MPLS‐JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、JPNIC理事、日本データセンター協会理事などを兼任。
KEYWORD
※1 インターネットデータセンター(iDC)
顧客に対しサーバーを貸し出し(ホスティング)や預かり(ハウジング)を行う事業者。インターネットへの接続回線や保守・運用などのサービス提供を行う事業者もある。

※2 シン・クライアント
ハードディスクや光学ドライブなどのシステム資源を装備しない軽装備のクライアント専用コンピュータ。アプリケーションやデータを管理するサーバーと連携し、データ表示や入力などの簡単な処理を行う。コンピュータそのものでデータを保存しないためセキュリティ面でも注目されている。

※3 スケールアップ
高性能の情報機器を多く持つことを良いとする考え。インターネットの場合、1台のサーバーを機能強化してパフォーマンスを向上させること。CPUやメモリなどの強化によってサーバーの能力を上げ、より高い負荷に耐えられるように拡張する。

※4 スケールアウト
多くのものを一つにまとめていくという考え。インターネットの場合、多くのサーバーを同期化し数を増やすことで、サーバー群全体のパフォーマンスを向上させること。

※5 クラウドコンピューティング
一つひとつのコンピュータで管理・使用していたデータやソフトウエアを、必要に応じてインターネットを通じてサービスとして受け取り、処理することができる概念。
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