制作*東洋経済広告局企画制作部

データセンターベストパートナーズガイド

iDCが実現する経営の効率化とは

日々進歩するIT技術に合わせ企業が扱う情報も日々膨大化している。
これに伴い、情報の集約・保管場所とされてきたデータセンターに対する考え方も変わってきているという。
「多くの高性能機器を保有しようとするスケールアップの考えから、多くあったものをあたかも一つにまとめるスケールアウトの考え方が大切になる」と語るのは、東京大学大学院情報理工学系研究科教授・江崎浩氏である。
NPO法人日本データセンター協会の理事も務める江崎氏に最新事情を伺った。
iDCが実現する経営の効率化とは高い成果を生むグリーンITとは

企業が外部のデータセンターを活用する傾向が高まる

 かつて、多くの企業は自社の施設内にサーバールームなどを設けることが一般的でした。現在は、インターネットデータセンター(iDC)※1など外部のサービスを利用する企業が増えています。

 その理由はいくつかありますが、まず、企業がポートフォリオを見直して、アセット保有からフローへと資産を減らしていることが挙げられます。高価な電源装置や空調設備を備えた施設を自前で建て保有することは、アセットのポートフォリオの観点でも現実的ではありません。都心に拠点がある企業が、高い賃料を払って自社内にサーバールームを設ける必要があるのかという疑問もあります。家賃だけでなく、人員も自前で確保するとなると、固定費はさらに大きくなります。

 むろん、「自社で保有するほうが安心できる」という考え方もあるでしょう。しかし、災害や情報漏洩などへの備えを自社だけで行うのは容易ではありません。昨今は、消費電力や排熱の問題など、環境面での対策も求められています。企業が取り扱う情報量が年々増加する中で、サーバールームやデータセンターにおける課題はさらに大きくなるでしょう。

 その課題を解決する一つの方法としてiDCが注目されています。iDCを利用すれば、耐震構造の堅固な施設や高いセキュリティ環境を低コストで使うことができます。データ紛失などへの備えについても、「自社でやるよりも安心できる」という企業の声も多いようです。iDCは今や、ナショナルセキュリティと考えることができます。

IT環境をスケールアウトすることで、効率的な運営が可能に

 iDCを活用するメリットについて「リースのようなもの」と考える人がいるかもしれません。あながち間違いではありませんが、最近になってiDCが存在感を高めている背景には、技術の進歩があります。特に回線の安定化と高速化です。
 社会のインフラとしてのネットワークがしっかりしてきたことにより、企業がデータセンターを身近に設けておく必要がなくなりました。米国では砂漠の真ん中にコンテナ型の施設を並べたiDCもあり、日本でも、地価の低いところや電力の安いところに施設を設けているiDCがあります。

 こうした技術を受け、シン・クライアント※2を導入する企業も増えています。高速回線を低価格で使えるので、あたかも目の前のパソコンにアプリケーションやデータがあるかのように快適に利用することができます。パソコンにデータがないため、情報漏洩のリスクも低くなります。
 企業のIT資産のあり方も変わりつつあります。「スケールアップ※3」と「スケールアウト※4」という言葉がありますが、かつて企業がITの機能を高めるためには、個々の拠点でそれぞれ高機能のサーバーなどを買い集めていくのが一般的でした。これを「スケールアップ」と言います。しかし、膨大な量のデータがやりとりされるようになる社会においては、いい機器をいくらたくさん持っていてもすぐに限界がきてしまいます。

 これらの課題に対応するためには、複数のサーバーなど、これまでばらばらに動いていたものをまとめて活用する「スケールアウト」の考え方が大切になります。IT機器を集合させて運用することにより、全体として効率的な運用ができるほか故障時などの対応が容易になり安全性が増します。

iDCを活用することは企業経営のPDCA実践に役立つ

 ニーズの高まりに応えるように、iDCの数も増えています。私はよく、「どのような観点でiDCを選べばよいか」と尋ねられるのですが、それに対して「重要なポイントは導入時だけでなく、移転の容易さ」だと答えています。いざというとき、明日からでもデータやサーバーを移せることができるかどうかは、BCP(Business Continuation Plant)として、企業経営のまさに根幹にかかわることです。最近では、異なるメーカーの製品と互換性を持つことで、容易に入れ替えができるiDCのオープン化の動きもあります。
 ただしその前提として、「何を自社で行い、何をiDCに任せるか」という判断が必要です。自社のコア事業を理解した上で、根幹となる部分だけを自前で行い、それ以外は、iDCなど外部にアウトソーシングすることになるでしょう。

 私は、その成否を決めるのはやはり「人」だと考えています。自社のデータの活用方法やIT資産を把握した上で、どのような管理や運用が適しているのかを提案し、実行してくれる人材です。クラウドコンピューティング※5などをはじめ、スケールアウトが進む中では、特にマネジメント能力を備えた人材が必須になります。アウトソーシング化が進めば進むほど、企業内での人材育成が重要になるでしょう。

 ここで注意しなければならないのは、iDC利用をIT部門に任せきりにしないことです。またIT部門も、iDCを利用しているから大丈夫と安心することなく、常にPDCAサイクルの中で見直しをすることが大切です。そのためには、どのような情報がどれだけ流れているのかしっかりと把握することが必要です。さまざまなデータを把握することで、IT機器のムダだけでなく、業務のムダも見えてきます。その点で、iDCを利用することは、企業経営におけるPDCAの実践にも役立つと言えます。

 シン・クライアントやクラウドコンピューティング化などは、従業員の働き方を変えることになります。また、オフィスのスペース、電力消費量、CO2の削減などは経営に直結するテーマです。ぜひ経営者や経営幹部の方にも、サーバールームやデータセンターの課題に積極的に取り組んでほしいと願っています。
東京大学大学院 情報理工学系研究科教授 江崎浩
東京大学大学院
情報理工学系研究科教授
江崎 浩
九州大学工学部電子工学科修士課程修了後、(株)東芝総合研究所に入社。
米国ベルコア社、コロンビア大学客員研究員、東京大学大型計算機センター助教授、東京大学情報理工学系研究科助教授を経て2005年より現職。
WIDEプロジェクトボードメンバー、MPLS‐JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、JPNIC理事、日本データセンター協会理事などを兼任。
KEYWORD
※1 インターネットデータセンター(iDC)
顧客に対しサーバーを貸し出し(ホスティング)や預かり(ハウジング)を行う事業者。インターネットへの接続回線や保守・運用などのサービス提供を行う事業者もある。

※2 シン・クライアント
ハードディスクや光学ドライブなどのシステム資源を装備しない軽装備のクライアント専用コンピュータ。アプリケーションやデータを管理するサーバーと連携し、データ表示や入力などの簡単な処理を行う。コンピュータそのものでデータを保存しないためセキュリティ面でも注目されている。

※3 スケールアップ
高性能の情報機器を多く持つことを良いとする考え。インターネットの場合、1台のサーバーを機能強化してパフォーマンスを向上させること。CPUやメモリなどの強化によってサーバーの能力を上げ、より高い負荷に耐えられるように拡張する。

※4 スケールアウト
多くのものを一つにまとめていくという考え。インターネットの場合、多くのサーバーを同期化し数を増やすことで、サーバー群全体のパフォーマンスを向上させること。

※5 クラウドコンピューティング
一つひとつのコンピュータで管理・使用していたデータやソフトウエアを、必要に応じてインターネットを通じてサービスとして受け取り、処理することができる概念。
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