PER(株価収益率)の使い方のポイント

PER(株価収益率=Price Earnings Ratio)はピーイーアールやパーと呼ばれます。「株価÷1株当たり利益」で計算し、単位は倍です。

計算式が示すとおり、PERは株価が1株当たり当期純利益の何倍まで買われているのかを表す指標であり、株価の割安、割高を判断する代表的な尺度です。PERの値が低いほど、利益に比べて株価が割安であることを示しています。ここでは、四季報300社の中から今期予想利益を基準としたPERの低い順に上位200社のランキングを掲載しています。

では、PERの値が高い会社は、企業分析の観点からは、評価に値しない、魅力がない会社なのでしょうか。実は、将来の利益成長に期待の大きい会社や、急成長ではなくても毎期安定的に着実に利益を積み上げてきたような会社は、PERが高くなる傾向があります。つまり、PERが高い会社の中には、株価に対して利益が小さい会社だけでなく、株式市場の人気が高い銘柄、信頼度が高い銘柄も含まれているということです。

PERの低い割安会社の中から、マーケットが気づいていないキラリと光る会社を発掘すること、またPERの高い注目会社の中から、本当に人気に見合った実力を備えた会社を見分けること、これが企業評価の醍醐味といえます。そのため、会社四季報の該当ページの記事や数字を読み込むことなど、ファンダメンタルズの調査・分析を踏まえたうえで総合的な評価を行うことが、PERを上手に使うポイントといえるでしょう。

またPERについては、「何倍だから割高、割安」といった絶対的な基準がないことにも注意してください。そのため、PERの値を評価する場合は、同じような経営環境や事業リスクに接している同業他社のPERと比較したり、また当該企業の過去のPERと比較したりといった、相対評価の視点が求められます。

PERの計算で用いる当期利益については、一時的、臨時的な特別損益や税金の影響を受けて、実力とかけ離れた水準に上振れたり、下振れたりすることがあります。こういったケースでは、過去の実績を参考にして、本来の実力ベースの当期利益がいくらかを割り出す調整も必要となります。

会社四季報では、該当ページの欄外【 】内に証券コード評議会による33分類の業種名を示しているほか、【東経業種時価総額順位】欄において東洋経済が独自に定めた60分類の業種名も併せて掲載しており、同業他社の比較に便利です。また各ページの上部、株式チャートの横の「株価指標」欄では、過去3決算期について、各決算期間の最高株価、最低株価と業績の実績から算出した最高株価、最低株価の3期平均のPERを載せており、過去のPERの傾向を知ることができます。これらの情報も併せて活用ください。

PBR(株価純資産倍率)の使い方のポイント

PBR(株価純資産倍率=Price Book-Value Ratio)はピービーアールと呼ばれます。「株価÷1株当たり純資産」で計算し、単位は倍です。

PBRは1株当たり純資産に対して、株価がどの程度の水準にあるかを示す指標であり、PERと並び株価の割安、割高を示す代表的な尺度です。PERが会社の一定期間の経営成績、つまり1株当たり利益というフロー数値を用いて株価の高低を表すのに対して、PBRはある時点の1株当たり純資産というストック数値を用いて株価の水準を示す指標です。ここで純資産とは、総資産から負債を引いたもので、株主に帰属する資産のことです。

PERと同様に、PBRも値が低いほど、資産に対して株価が割安であることを示しています。ここでは、四季報300社の中から直近の1株当たり純資産を基準としたPBRの低い順に上位200社のランキングを掲載しています。

PERでは、「何倍だから割安」といった絶対的な水準の目安はありませんでした。これに対して、PBRでは「1倍より高いか、低いか」が割安度合いを判断するひとつのメドとなります。PBRの計算式では、分母が1株当たり純資産となりますが、これは会社が解散した場合に株主の手元に残るおカネ、1株当たりの解散価値と考えられます。PBRが1倍を割れている会社は、理屈のうえでは、その企業を買収して解散して負債を返済すれば、投資額以上のおカネが残ることになります。しばしば、PBRの1倍が株価の下値のメドとして意識されるのは、このためです。

ただ、PBRが1倍を割り込んでいる銘柄が、株式投資の観点から迷わず「買いだ」と即断することは危険です。PBRが割安の会社には、それなりの理由があることが多いものです。たとえば赤字が続く会社だと、将来の株主に帰属する資産は時間の経過とともにさらに食い潰されていくのですから、今の資産からみて割安でも、単純に割安とはいえなくなります。

逆にPBRが割高な会社が、必ずしも投資評価の観点からダメだとはならないことにも、注意が必要です。会社の「経営資源」や「強み」、たとえばブランド力やノウハウ、人材などは普通、帳簿には載っていないものです。こういった目に見えない資産、経営資源を持っている会社のPBRは高くなる傾向があります。言い替えれば、PBRの値はその会社の総合力、経営力に対する株式市場の評価とも言い替えられます。

会社四季報の該当ページの記事や数字を読み込むことを足掛かりとして、同業他社との比較や定性的な分析も踏まえたうえで、PBRの高低を判断するよう努めることが、より深い視点からの会社選びといえるでしょう。

ROE(株主持分利益率)の使い方のポイント

ROE(株主持分利益率=Return on Equity)はアールオーイーと呼ばれます。「当期利益÷株主持分」で計算し、単位はパーセントです。

株主は会社に株主持分という形で資本を提供しています。株主としては、自分の提供している資金、自分の持分がどれだけ効率よく運用されているかが最大の関心事です。株主持分に対する1年間で稼いだ利益の比率を示すROEは、株主にとってもっとも注目の高い指標といえるでしょう。

従って、ROEは高いほど望ましいといえます。日本の会社は従来、海外、特に米国の会社に比較してROEが低いと言われてきました。ただ、株主から預かったおカネはタダではないという株主価値に対する意識が高まるにつれ、日本の中にも、高いROEを示す会社が増えてきています。ここでは、四季報300社の中から今期予想利益を基準としたROEの高い順に上位200社のランキングを掲載しています。

会社にとってROEを高める方策は、計算式からもわかるとおり、式の分子である当期利益を大きくする、また分母である株主持分を必要以上に増やさない、場合によっては減らす、ということになります。

当期利益を増やすには、付加価値のある製品やサービスを顧客に提供して、売上高に対する当期利益の比率を高めるか、また資産を効率的に活用して、資産に対する売上高の比率、回転率を高めるかということになります。

分母である株主持分を小さくする、大きくしないためには、株式市場で自分の株式を買う、つまり自己株を取得して消却するといったことが考えられます。有望な投資先が見あたらない場合は、いったん配当で株主に資金を返却し、株主持分が必要以上に積み上がらないようにする策もあります。株主市場で自己株買いや増配が好感されることが多いのは、このためです。また、社債やローンといった株主以外の負債を活用することも有力な手段です。

ただ事業を行ううえで、必要な株主持分が保たれていなかったり、負債が必要以上に大きかったりする会社は、逆に財務面のリスクを抱えているといえます。ROEを用いて企業を評価するにあたっては、ROEの水準の高さと同時に、過去、安定して高いROEが保たれているか、また将来にわたって高いROEが持続できそうかどうかを、チェックすることが必要となってきます。

会社四季報の該当ページの記事や数字を読み込むことを手始めに、なぜ気になる会社のROEがこの水準にあるのか、同業他社との比較はどうか、ROEが高い場合には、株主持分が小さすぎないか、有利子負債が大きすぎることはないかといった財務基盤の強さも併せてチェックするようにしましょう。