制作・東洋経済広告企画制作部

日本を元気にする薬

立正大学経済学部 開設60周年記念シンポジウム

これからの中国・アジア・世界との関係で考える

日本企業の対応は環境問題の視点も重要

 田北氏は、日本企業が中国市場に対して深く関与している実態を指摘し、「尖閣諸島の問題であらわになった政治リスクを抱えた中国でどう行動すべきか」尋ねた。

 五味氏は、「世界でもっとも急速に発展している中国市場の中に日本企業が入り、中国企業として生きなければならないのではないか」と、語った。

 川本氏は、1990年には、日本の8分の1のGDPだった中国の成長スピードに遅れないことの重要性を指摘しつつも「中国一国への依存度が高くなりすぎることのリスクには気をつけ過ぎることはない」と強調。

 原田氏も、中国市場の規模の大きさから、「ビジネスとしては、中国でやらない選択肢はない」としながらも、依存度を下げるため、他のアジア諸国とのFTA(自由貿易協定)を積極的に進めるべきと訴えた。

 FTAは、安い農産物が海外から入ってくるため、農業への影響も心配される。

 このため、「民主党の農家の戸別所得補償政策とFTAを組み合わせる」ことを考える原田氏に対し、田原氏は「バラマキをしても、平均年齢65歳で後継者のいない農業問題は解決しない」と反対した。

 元木氏は、環境保全に果たす農業の役割を強調し、開発の陰で河川などの汚染が進んでいる中国の環境問題に言及。中国で生まれた稲作が縄文期に日本に入り、日本の寒冷地稲作技術が中国東北部での稲作の定着に貢献していることに触れ、「歴史的には日中間には良い関係もある」と述べた。さらに、近代化の限界も踏まえて、「コンクリートから森林資源へという視点も必要」と、アジアの森林資源の活用を訴えた。

田原氏の基調講演を受けて始まったパネルディスカッションは、日中関係を軸に国内の農業問題から中国の環境問題まで、話題が広がった

平成鎖国から脱し若者を世界へ

 最後に、中国との今後の関係について、田原氏は「中国との"資源戦争"に日本がどう対応するか」と投げかけると、川本氏は「日中の二国間問題に持ち込まず、多国間の枠組みで考えるべき」と、ASEAN、インド、オーストラリア、そしてアメリカとの連携の重要性を指摘。五味氏は「中国で社会主義教育を受けたのは29歳までの人で、それ以降の世代(約6億人)が中堅になる時期が、10〜20年後に訪れる」と中国の政治的変化の可能性に期待した。元木氏は「日中の共通の課題にもっと目を向けるべきだ」と環境問題の重要性を再び訴えた。

 原田氏は「皆さんは、日本はすでに豊かで、このままやっていけると思っているかもしれないが、経済成長がなければ、今のレベルの年金を払うこともできなくなる。経済成長して若者に金持ちになって年金保険料を払ってもらうには競争が必要。日本には世界と競争し、成長していく力が十分にあるはずだ」と説いた。

 川本氏は「今は"平成鎖国"とも言われる状況で、内向きに分配の話ばかりをしている。今日は大学のシンポジウム。若い方には、世界に出て、国際感覚を養い、国際的に友人を作るような人になって欲しい。そのために、大人は若者たちを励まして欲しい。それが長い目で日本の安定につながる」と訴えると、田北氏も「若者を励ますことがキーワード。世界に向かうには英語だけでなく、コミュニケーション能力を養うことが大事」と、日本を元気にする処方箋を示して、締めくくった。

中国市場の中に日本企業が入り、中国企業として生きなければならない

立正大学 経済学部長
五味 久壽

環境問題という、日中の共通の課題にもっと目を向けるべきだ

立正大学 大学院経済学研究科長
元木 靖