制作・東洋経済広告企画制作部

立正大学経済学部 開設60周年記念シンポジウム

これからの中国・アジア・世界との関係で考える

日本を元気にする薬

人間、社会、地球の関係性を修復する「ケアロジー」を提唱している立正大学。1950年に開設された経済学部は、経済と環境との関係を考えている。今年、開設60周年を迎えて開催された記念シンポジウム「グローバリゼーションの中のアジアと日本の役割―東アジアの中において、日本の未来を考える―」(立正大学経済学部主催、東洋経済新報社後援)は、経済的相互関係を強めつつも、政治的緊張が見られる中国を軸に、白熱した議論が繰り広げられた。

資源をめぐる「新冷戦」の始まりか

 シンポジウムは、ジャーナリストの田原総一朗氏の基調講演「激動する国際情勢と今後の日本」で幕を開けた。田原氏は、日本には資源がないと思い込んでいる人は多いが、四方を海に囲まれた日本では排他的経済水域の広さは世界でもトップクラスにあると紹介し、「今、世界の国々の間では資源をめぐる新しい戦争が始まっている」と指摘した。特に、豊富な海底資源があると見られている尖閣諸島周辺の海域や南シナ海で、中国が権益拡大を図ろうとしていることに触れ、「動向は非常に緊迫している。『新冷戦時代』を迎えたと見ている」と述べた。

 1991年のソビエト連邦崩壊で終わった旧冷戦の時代、日本は、東西の対立に深く巻き込まれることもなく、経済発展に専念してきた。しかし、田原氏は「新冷戦では日本の役割が出てくる」と言う。今年8月の日韓併合100年に合わせた菅首相の談話も、日米韓の連携を強め、中国への牽制とする狙いがあるとの見方を示した。

 日本の経済については官僚機構と経営者の二つの問題に言及。官僚機構も、企業の経営者も、失敗をしないことが重要とみなされ、チャレンジしてこなかった結果、「国際社会が大きく変わる中で、日本はついに変われずにきてしまった」と述べた。

 特に、グローバル化が進む国際社会の中で、日本の国際化は遅れており、国外の大学を卒業して自国で働く人が、オーストラリアや米国、英国などでは10〜20%台なのに対し、日本は1%未満。国外の大学への留学者も減少している現状に触れ、「日本は国際社会の中で遅れてきた。”日本を元気にする薬”をどうするか」と述べ、続くパネルディスカッションへの課題とした。

中国経済の現状と今後をどう見るか

 パネルディスカッションには、立正大学から経済学部長の五味久壽氏と大学院経済学研究科長の元木靖氏の2教授が参加。さらに、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の川本裕子氏、大和総研専務理事・チーフエコノミストの原田泰氏、田原氏を加えた計5人のパネリストが、コーディネーター役の田北浩章・東洋経済新報社企業情報部長の進行で議論を深めた。

 始めに、今年、ついにGDPで日本を追い抜いた中国経済の現状について、五味氏が「中国経済がつまずき、日本経済が再び中国を追い越すことはあり得ない。13億もの人口を抱える規模と発展速度の速い中国市場は重要だ」と口火を切った。元木氏も「中国では都市化が進み、道路や高速鉄道などのインフラ整備が進んだ」と、初めて中国に行った1985年に比べ、変化の早さに注目した。

 原田氏も「中国は歴史的にも経済大国で、トータルのGDPで日本が中国を上回ったのは、中国が文化大革命などをやって経済が停滞する一方で、日本は高度経済成長を果たした時だけ。だが、中国が経済面での市場経済化を進め、再逆転された」と、中国が持つ本来の経済力の高さについて話した。田原氏は「中国には、食うや食わずの生活をしている人もおり、彼らの生活レベルが上がってくるまで、成長は続くだろう」と予測した。

 川本氏は、中国の高い経済成長が続く蓋然性は高いとした上で、「歴史を振り返れば、みんなが同じ事を言い出した時には注意が必要。中国がアメリカを含めた周辺諸国と平和的関係を築いていけるか。政治的開放性を否定した共産党一党独裁のまま進むのは、大きなチャレンジ」と政治的リスクについても触れた。

今、世界の国々の間では資源をめぐる新しい戦争が始まっている。新冷戦では日本の役割が出てくる

田原 総一朗

日本にはまだ世界と競争し、成長していく力が十分にあるはずだ

大和総研 専務理事・チーフエコノミスト
原田 泰

若い方には、世界に出て、国際的に友人を作るような人になって欲しい

早稲田大学大学院
ファイナンス研究科教授
川本 裕子