少人数教育、「複合知」を兼ね備えた人材育成など、同学部を形容する言葉は多い。
文科系学部と同一のキャンパスで共に学ぶことができる「文理融合型」の環境も大きな特色だろう。
名実ともに、国際社会で活躍できる「理工ソフィアン」を育成しようとしている。
学長 | 滝澤 正 |
設立 | 1913年 |
所在地 | 〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1 |
TEL | 03-3238-3111(代表) |
URL | http://www.st.sophia.ac.jp/ |
学部・学科 入学定員 | 理工学部:物質生命理工学科(125名)、機能創造理工学科(125名)、情報理工学科(130名) |
大学院 入学定員 | 理工学研究科:博士前期課程(210名)、博士後期課程(20名) |
学部学生数 | 10,886名(女子6,086名):理工学部学生数 1,693名(女子403名) |
大学院 学生数 | 1,189名(女子473名):理工学研究科学生数 460名(女子55名) |
主な施設 | 中央図書館・総合研究棟、クルップ・ホール、マシン・ホール、テクノセンター、数学図書室 |
初年度納付金 (2012年度) | 1,662,550円 (入学金270,000円含む) |
2008年には大幅に学科を再編 「複合知」の修得に注力
理工学部長・研究科委員長
理工学部 物質生命理工学科教授
早下 隆士
上智大学は、2013年に創立100周年を迎える。創立以来の願いであった、さまざまな学部を持つ総合大学を築き上げるために、理工学部が創設されたのが1962年のことである。今年、同学部も創設50周年を迎える。
「キリスト教ヒューマニズムに基づき、健全な価値観と判断力を持った人材を数多く輩出してきたと自負しています」と、早下隆士理工学部長は力強く語る。
産業界ほか、社会のニーズに応える取り組みも積極的に進めてきた。 08年には、それまでの「機械工学科」、「電気・電子工学科」、「数学科」、「物理学科」、「化学科」、「生命科学研究所」の5学科1研究所を、「物質生命理工学科」、「機能創造理工学科」、「情報理工学科」の3学科に再編、大学院も1専攻とした。
早下学部長は、その狙いとして、科学技術を取り巻く状況が多様化する中、さまざまな問題の解決に貢献できる人材の育成が急務になっているとする。そのためにも、同学部では、変化のスピードに対応しながら、さまざまな分野と連携できる感性と知恵、知識を備えた「複合知」を修得できるカリキュラムに力を入れているという。
理工学部の新3学科では、それぞれの垣根を低くし、複数の分野を柔軟に行き来できるようになっている。と言うと、専門性も低くなるのではないかと考える人がいるかもしれないが、それは早計である。
曄道佳明学務担当副学長は「高校を卒業したばかりの学生に対し、幅広い選択肢を用意していますが、一人ひとりの興味・関心に応え、専門性を磨くことができるような仕組みになっています」と説明する。
充実した基礎教育と、少人数教育体制によるきめ細かな指導に特色
学務担当副学長
理工学部 機能創造理工学科教授
曄道 佳明
曄道副学長の説明によれば、新学科においても、物理学、化学、生物学、数学、情報学、電気・電子工学、機械工学といった基盤学問分野を、4年間にわたり専門的に学ぶこともできるという。むろん、大学院の各研究領域とも連携している。
一方で同学部においては、それぞれの学科ごとに専門選択に結び付く学習の範囲を示す「キーテーマ」が用意されている。1、2年次の必修科目は3学科共通だが、3年次に専門分野に進む際、学生は自らの「キーテーマ」を決定し、自分の関心のある分野をより深く研究することになる。
方向性の決定にあたっては、学生も悩むところだろうが、「本学ならではの親身かつきめ細かな指導にも自信を持っています」と早下学部長は話す。
同学部では学生3〜4人に1人の教員が付くというから、私立大学ではトップクラスの少人数教育体制であり、教員と学生の距離も極めて近い。
「グローバルに活躍できる人材の育成」を掲げる大学は多い。英語研修を用意している大学も珍しくはないが、上智大学理工学部の場合、そのプログラムも際立っている。1年次から系統的に科学英語教育を行うカリキュラムが用意されている。このほか、米国サンタクララ大学および同ノースカロライナ大学シャーロット校と提携した「理工系学生のための英語研修プログラム」もある。このプログラムは理工系の学部学生のために特別にデザインされたもので、理工系のさまざまな領域にわたる調査研究、ディスカッションなどを英語で行うため、総合コミュニケーション力の向上が期待できる。
グローバル・コンピテンシーを持つ「理工ソフィアン」を育成
曄道副学長は、「異なる宗教や文化など多彩なバックグラウンドを持つ学生や教員と接することで、グローバル社会の多様性を理解することができるのも、本学部の特長」と話す。
12年9月には、国内の理工系学部では例が少ない、すべての授業・実験・研究指導を英語で行い、英語だけで学位が取得できる秋入学の英語コースが同学部に開講する。募集分野は「物質生命理工学科グリーンサイエンスコース」、「機能創造理工学科グリーンエンジニアリングコース」の2コースで、いずれも海外からの留学生を対象の中心とするが、授業の多くは一般学生も受講できる。留学生と机を並べ、共に学ぶことは、貴重な経験になるに違いない。
多様性の尊重という点では、09年に採択された文部科学省の「グローバル社会に対応する女性研究者支援」プロジェクトも進んでいる。同学部を中心に、女性研究者や女子学生たちが力を発揮することになりそうだ。
同学部ではこのほか、「上智大学理工学部リエゾンオフィス(SLO)」が窓口となった産学連携も進めている。委託研究や共同研究にとどまらず、広く社会との連携を深めることを目指している。
早下学部長は、「上智大学は、創立の経緯からグローバルだったとも言える。このキャンパスの環境そのものが人生の大きな糧になったという卒業生も少なくありません。引き続き、国際社会で活躍できる能力(グローバル・コンピテンシー)を持った、『理工ソフィアン』としての研究者や技術者を育成していきます」と意欲を見せる。